第三十四話 心の歌
「よかったよ、お前が話の分かるやつで」
智也は、マネージャーのジェイムズを殺さずに、両手を縛ってアリーナの外まで連れ出した。
「なっ、なあ、どこに行くんだ?」
「う~ん、病院、かな」
「なんだ、大丈夫だ、お前に蹴られたケガくらい病院に行かなくても」
「いや、行ってもらうよ。今度は、お前が(自分の臓器で)人を助ける番だ」
「? 俺は医師免許なんて持ってねーぞ?」
アリーナのさっきの裏口は来た時とは違い人はほぼいなかった。倒した後に端末でKにメールを送った。
「なあ、そろそろそれを返してくれよ」
「黙って歩け」
「向けるのは好きなんだけど、向けられるのは嫌いなんだよ、下げてくれないかな~」
智也はさっきまでジェイムズの持っていたナイフをジェイムズの腰にずっと当てていた。
そして、
「お! いい男になったじゃね~か」
「お久しぶりです、Kさん、相変わらずすぐにそういう事を言う。女性もそうやって車に乗せてきたんでしょうね、ハハ。残念ながら今回乗せるのは男ですが。肺以外は多分ちゃんとしてますよ」
「お~、ずいぶんと有名な悪人捕まえてきたな~」
「おっ、おい、こいつ誰だよ、どこに連れていくつもりだよ、肺? 何のとこだよ、お前ら一体何する気だ」
「「ダダの、人助けさ」」
ポンポンとジェイムズの肩をたたくと、それだけでジェイムズの全身から力が抜けたように倒れこむ。すると、警備員が駆け寄ってきた。
それを見た智也はすぐさま手に持っていたナイフを隠そうとする。だが、ズボンの中に隠すようなところもない。
「そこの人は大丈夫なのか」
「えっ、あっ」
「あ~、どうやら近頃忙しすぎて、過労で倒れてしまったようなんです」
小声:「ちが」
後ろに隠していたはずのナイフが気づかないうちになくなっていた。
「これからこちらの車で病院に送りに行きますので、ご心配をおかけしました」
警備員たちが去っていくのを見届けると
「あれ? さっきまで持ってたのに」
「ここだよ」
Kの指さしたところを見ると運転席の下にさっきまで持っていたナイフがあった。
「いつの間に」
「おいおい、俺がもしお前を殺そうとしてたら、死んでたよ? 仲間も疑え、それがこの世界を生きる人のほとんどに足りてない者だ。覚えておくといいよ」
「ご指導ありがとう。それで、今回はどうするんですか?」
「? あ~、そうだね~、かけよう、君が当てたら今度ドライブに連れてってやろう」
「Kさんが当たったら?」
「君をあっちこっち連れまわして一日中こき使う」
「なんか同じような気がするけど、じゃ~、(目的地は病院だからな)医療ミスで」
「じゃ~おじさんは交通事故で決定」
「あれ? Kさん? よく考えたらKさんは結果わかってるんじゃ」
智也がまだ考えていた時に、パタッと車の扉が閉まる音がした。
「あ」
「じゃ決まりな」
「ずるいぞ~!」
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「もう、そろそろ時期かな」
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アリーナの中に戻った智也はさっきの戦っていた場所に戻り、工具を少し拝借して、ネジを固く締めなおし。ある意味特等席で、ライブの様子を堪能した。
「そういえば」
かなり前の席にいるはずの明美を探す
「さすがに、この人数だと見つけにくい」
そんな中一際はしゃいでいるJKがいた。周りの男が若干引いてる? 楽しんでそうで何よりだ。
「next song is the last song in this concert」
家族に向けた最後の歌が、東京の夜空に響いた。
次回は5日に投稿する予定です!
急に用事ができたり、してまる一日かけなくなる日があったりしたら6か7日になります。