第二十七話 《燃える恋》13
「いよいよこの時が来たようやな、この吾を倒しさんと合格できひんで」
「魔王っぽいせりふを関西弁で言われても」
「冗談はさておき、始めようか。本当の君への第一歩を」
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銀さんの家の道場の中で、お互いに木刀を構えている。今度の条件は制限時間15分の内に銀さんに一撃与えること。
「やっぱり、強いですね」
最初から全力で攻撃を仕掛けに行き、すでに五分が経過しているにもかかわらず、すべての攻撃を避けるないしは受け流されている。智也はすでに息が荒くなっている、それに対し銀はまだまだ全然余裕を持っている。正面から戦っても全く歯が立たない。何とか、後ろをとらなくては。
(待てよ、ルールはなんだったっけ? 時間内に銀さんに一撃を与えればいいっという事だったな。そう言う事か)
「おや? 少し、動きが変わりましたね?」
(やることは決まった。だが、銀さんには一瞬のすきも見当たらない。必ず、どこかにこの迷路からの出口があるはずだ。どこだ? どうすれば銀さんに一撃を与えられる)
そう考えながら、銀さんの体全体を攻撃しながら見る。そして、ついに見つけ出す。暗く、壁だらけのこの迷路で出口への光が見えた。智也は立ち止まり、息を整える。そして、刀の持ち方を少しだけ変えた。
「残り時間はあとわずか三分、もう次で決めないと、体力が持たない」
今まで通りに突っ込んで横から払うと思いこませて。智也は銀さんに向けて全速で接近していく。それに対して、銀はすぐに後ろへ一歩下がり避ける準備と受け流す準備に入った。突進した智也は木刀を振るうには十分な距離に入ったにもかかわらずまだ突進を続ける。下がる速度は追う速度には負ける。ついに智也は銀さんの懐までに入った。そして、持ち方を払いから、銀さんから教わった抜刀術に切り替え、そして、体をしゃがませる。そして、一瞬で木刀を下から上へと銀さんの胴体と頭へと振るう。もちろんこの程度すぐに見破られ、銀さんは一瞬で判断し、後ろへと半歩下がり、手に持っている木刀で智也の一撃を受け流す。そして、智也が片手しか使っていないことに気づき、そのあとに流れるように銀さんの顎をめがけて打ち出される闇直伝の左手の掌底、それをギリギリのところで頭をかすかに右へと動かし、智也の左手はわずかに銀さんの頬をかすった。そして、次の瞬間、決着がついた。
銀さんに向けた抜刀術と掌底の勢い、その二つの勢いを十分に利用し、これまでに最速で最も威力のある裏回し蹴りを銀さんの横腹に向けて繰り出す。それに気づいたときにはすでに銀さんの頭の近くに智也の踵が避けられないほど近くまで接近していた。
「これはっ」
銀すぐにしゃがみながら右手を力こぶを作るように曲げて、自分の胴体を守るようにし、さらに左手で蹴りを受け止めるように入る。だが、それでもその勢いは止められず銀さんは二メートルほど蹴り飛ばされた。
銀さんもこの道のプロ、着地後すぐに受け身をとり、両足で床をつかみ、片手を床につける。
「いや~、合格どころか大合格だよ。まさかこの僕が蹴り飛ばされるとは思わへんかったわ~」
「……まあ、この試験が反撃ありだったらとっくに試験終了でした。これが実戦だったら、俺、もう死んでいるのか」
「そんなこと気にせんで、今晩はみんなでぱーと! 遊ぼうや! なあ闇さんや」
そう言って、さっきまでそこにいたはずの闇に話しかけるが、いつの間にかいなかった。その日の夜、《エイリアンハンター》を銀さんと一緒に遊び、出前のすしを銀さんがお祝いと言って頼んでいて。二人は寝るまで戦いを続けた。ゲームの中で。
智也が遊び疲れ、ソファーで、寝落ちしてすぐに、智也の端末に一件のメッセージが
“お疲れ様”
「ほんま不器用な人やな~」
次からラストスパートです!!
次回の投稿予定は22日です