第二十四話 《燃える恋》10
「今日から、よろしくお願いします」
「ええって、ええって、そんなにかしこまらんでも」
「……その、立派な屋敷ですね」
「まあ、初めてこんな古風な屋敷に入ってかしこまってまうのもわからんでもないけど。まあ自分の家やと思ってゆっくりし~」
「はっ、はぁ」
「あ、一つだけ注意な。はやめにこの家の間取りを覚えな。ほな案内するわ。まずここが君のこの二週間で使う寝室」
ひろ! ここひとりで使うか!? テレビと布団、それぐらいしかないのに何畳だこれ和室四つ分はありそうな気がする。
「まあ、何んか欲しいものがあったら自分で買い足しな。ほんでここが道場、明日からここでお前を訓練したる。ここが地下室や、ここにおいてある武器は好きなものを使ってええで、一番手になじむものを使いな、ただし! 一番奥にある日本刀には触れへんように。ここがキッチン、冷蔵庫の中に入っているものは勝手に食べてええ、キッチンも好きに使いただし! ちゃんと片付ける、あと冷蔵庫の一番上の段のプリンは俺のもんや」
「ありがとう、迷子にならないように頑張って覚えるよ」
「あ、まだ教えてないところが二つ。一つはこの部屋、この部屋は、見ないでほしい。もう一つは風呂や、案内するわ」
そう言って、長い縁側を通り、月の光が誰もいない部屋に差し込む、まるでその部屋だけ、時間が止まったように静かで、何だか寂しく感じる。
「こんなに大きな屋敷なのに、一人で住んでるのですか?」
「いいや、妹との二人暮らしや、体が弱くてな、部屋からもめったに出てこうへん。さっきの部屋が妹の部屋や、ほら着いたで。ここで服を脱いで、ほら、脱ぐ、ちょうどいい、裸の付き合いでもしようか、ほらほら脱いだ脱いだ」
「大丈夫です! 自分で脱げますから!」
「ほれほれ、よいではないか、よいではないか」
「それ男に使うセリフじゃない!」
「ハハハ」
「ほな、お休み」
「はい、お休みです」
電気を消した後、別に不慣れな敷き布団や枕が合わないわけではない、ただ、この半端なく広い部屋をただ一人で寝ることに少し落ち着かない。だが、暖かい羽毛布団に包まれ、いつの間にか寝ていた。
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朝、太陽が差し込む前に呼び起され、着替えをし道場に、授業で竹刀なら持ったことあったが、木刀はなかった。
「ここからは真剣だと思ってかかってきな」
昨日の悪ふざけをしているときの優しい顔とは違いまるで別人のように真面目な顔でそう伝えてくる。
「人を斬る覚悟でかかってこうへんと、ワイには当たらへんで」
「この組織の人をなめてかかると痛い目に遭うっていうのは嫌なほどわかりました」
「闇はちゃんと教えていたようやな、慎重なのはええけど、敵は待ってくれへんで」
そう言い終わった一瞬、目の前に立っていたはずの銀さんが斜め下に現れ、抜刀をする姿勢から一瞬で木刀を智也のおなかあたりへと打ち込もうとする。それを見た智也は間一髪でそれをよけた……はずだった。
身に着けていた道着のおなかの部分が少しだけ白い煙を出し、その表面は少しだけ破けていた。木刀でこれほどの威力を出せるようになるなら、これが本物だったらどうなっていたかと思うと智也は少しヒヤッとした。
「ホー! 今のをよけよったか! 闇はんほんまにええ教官になりそうやな~。どんどんいくで~」
突きと払いの連続が智也を襲い、避けることがまだ可能だったが、銀さんの本気はそんなものではなく木刀がまるで複数本あるようにも見えてくる。突きの速度はどんどん加速し、よけきれず脇腹や首をかすめるようになった。よけきれないとわかった智也は何とか手に持っている木刀で受け流そうとするも
「重っ!」
銀さんの一突き一突きは力がこもってかなり重かった。
「守るだけじゃ何の役にも立たないで」
反撃しようにも、避けられない、一発でも当たれば骨折しかねない。智也は受け流すので精一杯で、反撃なんてできそうにない。握力にも限界が来てついに木刀が手から離れてしまう。
それを見て銀さんは智也の顔にあたる寸前の木刀を止め
「今日はもうこれまでやな」
「俺は、まだやれる」
「そう焦ってもしゃーない、少しずつ強くなり、とりあえず二時間くらい休憩したらあとであっちの鉄棒をもって一緒に素振りな」
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これが日本刀の重さや、そう言って金属の棒を渡してくる。
「とりあえず20回」
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やっと終わり、その日の訓練は終わった。そんな日が三日間続いたある日。智也は夜中にたまたま開かずも間の前を通ると扉に少しだけ隙間が空いていて、中から冷たい空気が流れ出ていて、銀さんの話声が聞こえてくる。そこには目を疑う光景があった。
やっと免許が終わり、これからはもう少し投稿のペースを上げられそうです、早ければ明後日にでも投稿します。