第十八話 《燃える恋》4
智也はいつも通りに下校中駅前まで歩き駅内に入ろうと信号の変わった直後の横断歩道を渡ろうとした時に、黒くて長いリムジンが横断歩道の向こうで止まった。
「やっぱり、東京は金持ちが多いな~」
そう言いながら横断歩道を渡り駅に向かおうとしたら、「ぷーーーーー」っと後ろであの高級車がクラクションを鳴らした。
「うるさいな~、金持ちは金持ちでもマナーがなってないから成金か……」
再び駅に向かおうとすると、またクラクションを鳴らしてきた。智也は、少し苛ついて、振り向く。すると、車の扉が開き“乗れ”っといわんばかりに信号が変わっても止まっている。周囲を見回すと、後ろに車が少し待っているから、迷惑をかけないように駆け寄り、中を覗き込むとBOSSが乗っていた。運転席を見るとそこにいたのは案の定K。ではなく、ショートヘアでシュッとした体つき、赤いフレームの眼鏡をかけた清楚感あふれる女性だった。
「突然ですまんのう、今から行くところに一緒についてきてもらいたい。時間はあるかね?」
「えっ、えぇ、わかりました」
そう言って、人生で初めての高級車に乗り込む。
「今からどこに行くのでしょうか?」
「六本木でみんなで会議をすることになった。詳しいことは皆の衆に会ってからじゃよ。そうじゃな、飲み物はいるか?」
そう言うと、ボスの座っているところにあるボタンを押すと[の形をした座席の向かいに大量のジュースと高そうなワインが姿を現した。
「ジャー、お言葉に甘えて」
そう言ってぶどうジュースを一つ手に取り、ガラス容器に入れて少し飲んだ。
程よく酸っぱく、甘みが少し強い、後味がなんだか少し渋い。
ついたころにはすっかり夕日になり、六本木にある高層ビルの地下駐車場で車が止まった。
「ここの十三階で会議をする。君も出席者の一人じゃよ」
そう言って、建物の中に入って行く。
「どこへ向かうのですか? エレベーターはこっちに……」
「何を言うておる、若いんじゃから13階くらい階段を使いなさい」
……13階を階段でか、疲れそうだな~。案の定ついたときにはすでに息が荒くなっており、そして背中の汗で服がべたついてきて気持ちが悪い。そんな智也の様子を見て
「会議までまだ時間がある、風呂でも入ってくるといい」
そう言って134号室のカギを渡してきた。
「時間になるまでゆっくりするといい、何か頼みたかったらルームサービスと使うといい」
「それでは、時間になれば呼びに来ます」
「あ、ありがとうございます。え~と」
「メアリー・デオンといいます。呼ぶときはメアリーで構いません」
「え~と、ジャー、メアリーさん」
「はい、なんでしょう?」
「すみません、今のはただよんだだけです」
「それでは後程」
「はい」
部屋に入ってすぐに目に映ったのは、キングサイズのベット。
「うわっ、フッカフカ」
手で押すと、まるでマシュマロのようにベットが沈んでいく。
「こっ、これが金持ちの生活……」
智也も別に貧乏というわけではない、むしろ一般家庭よりも経済的には裕福な生活を送っている。精神的には貧乏なほうがもしれない。シャワーを浴びて。ベットに倒れこむと、ふかふかなベットで全身が包み込まれるように沈んでいく、最近は疲れていたせいか突然睡魔に襲われ、ほどなくして眠ってしまった。
「もしもし、おはようございます。どうやらお疲れのようですね。起きてください、そろそろ会議の時間です」
「あ、ありがとうございます」
少しだけふらついて、すぐに立ち直りメアリーさんについていく。今度はエレベーターに乗り17階へそこで目の前の最初の部屋が会議室のようだ。
部屋に入るとそこには二十人ほどの組織のメンバーがいた。FとK以外知らない顔がほとんど。
中でも特徴的なのが。狐の仮面をかぶり、腰と背中に合わせて三本の日本刀を持っている男の人ともう一人……、黒……見えている顔と、服の隙間からのぞかせる白い肌以外、すべてが黒、それはまるで周囲に存在している空間までもが黒く染められるような。
「勘も鋭いようじゃのう、君が今さっき見た二人はこの組織で5本指に入る実力者」
「5人か、一位は多分、あなたですよね。ボス。あとの一人は……髑髏ですかね」
「正解。最後の一人はもう3年くらい姿を見ていない」
「? 姿を見ていない? それじゃただ端末通して連絡しているだけなんですか?」
「あぁ、ここ三年間、おそらく敵、味方、誰一人そいつを見た人がいない」
「さあみな席に、これより会議を始める」
会議の内容は、こうだった。諸外国麻薬密売ルートの破壊と、一か月後日本のヤクザの会合、そこでColorに応じて行動をすること。
テスト期間故、週一の投稿となりました。次回も多分一週間後になります。