第十七話 《燃える恋》3
「おっ、お兄さん!? なんで(こんなところに)」
「シー、今話してると気づかれる」
言えない、あの人がうちの人だなんて言えない、それに……明美ちゃんのお兄ちゃんに、ヤクザの娘なんてばれたくない。
そんなことを考えているといかにも入れ墨してそうな二人組が本屋の中に入ってきた。
隙を見てさらに二階のほうへと逃げようとする二人、だが足音が二手に分かれて、一つこちらへと近づいてくる。そして、もう一つは運の悪いことに階段のほうへと向かっていく。彰の心拍数がどんどん上がっていく。そんな時に
小声:「お~い、そこの二人~、こっちこっち~」
店員っぽいぽっちゃりとした優しそうなおっさんがこちらに呼びかけながら手招きしてくる。どうやらかくまってくれるらしい。それはいいのだが
小声:「なんでそこなんだよ」
その人が手招きしている場所は、18禁と書かれたのれんのすぐ近くだった。智也は気まずそうに愛のほうをみて。再び階段の下から迫ってくる影
小声:「ちっ、迷ってる暇ない、こっちに来い」
小声:「お兄さん!?」
連れ込んだのはいいものの、すさまじく気まずい、こいつもこいつでかなり顔を赤くしながらきょろきょろしてるし、なんだその手は目をふさぐらなちゃんとふさげ、指と指の間から目を出すんじゃねぇ。……やっぱり女子も少しはこう言うの興味あるのかな~?
「お二人さん、駆け落ちですかい? いいですね~! 青春ですね~!」
「ちっ、違いま……」
「まあそんなところだ。あの怖い人たちがどこかに……」
おっさんが掌をこちらに見せて
「シー」
その直後に、思いっきり扉をたたく音が
「おい! このドアを開けろ!」
「はいは~い、なんでしょうかお客さん、お宝ビデオなら棚にあるものが全部でっせ~」
「おい、ここに高校生ぐらいの男女が来なかったか」
「はい? 高校生? ここは18禁コーナーですよ? 着たらすぐに追い返しますよ」
「見ていないってことだな。おい、お前ら、ずらかるぞ」
銀城たちがてんないからでていくのを見届けると
「はあ~! 怖かった~!」
「おっちゃん、ナイス演技力!」
「へっ、へへっ、こっ、これでも若い頃はそこそこイケメンで俳優目指してたんだぜ」
「ありがとう、助かったよ」
「いいさ、今度本でも買ってくれ」
「あぁ、ラノベを本棚に並べてくれたら買いに来るよ」
「ラノベか~、そうだな~、さすがにただの小説を買う若者はいまどき少ないか。参考にしとこう」
「そう言えば、君は家どこだ? 送っていくよ」
「いえ、家はここからは遠いのでそこまでご迷惑をかけるわけには、もしよろしければ駅まで送っていただけると嬉しいです」
「そのくらい安い御用だ。あっ、傘が」
二人で、周り注意しながら駅へ向かう逃げたときに、逃げたときに彰は傘をあいつらの車のタイヤとリアフェンダーの間に差し込んでいた。
「それではどのみち私と一緒に駅に行くことになりますね」愛はなぜか楽しそうにそう言ってきた。
「すまん、入れてくれたらうれしい」
そう言って愛の取り出し高さは、ずいぶんと大きく、そして和風な時代劇にでも出てきそうな傘だった。
愛を駅まで送り届けた後、智也は電車に乗りどこかへと向かった。
「お嬢、恋人ですかい? ついにそんな年になりやしたか」
「やはり、ばれていたのですね。銀城さん。さっきの質問ですが、恋人ではないです、ただ、好きな人、なのかもしれません」
「あの年でずいぶんと肝の据わった男だったな。だが、お嬢、恋人として選ぶときは気を付けな(あいつの目からは、血の匂いがした)」
そして、そのころ密かにmoon lightの中である大きな計画が動き始めていた。
読んでくださりありがとうございます!ぜひ引き続きお楽しみください。著者は少し教習所の期限が危ないので頻度が少し少なくなってしまい申し訳ない。