第一話 運命の始まり
前に書いていた小説の第一章が終わり、少し続きに迷っているので気分転換にこちらを書いてみました。
ハイファンタジーとは一変もっと近未来な内容となっております。
ぜひこちらもお楽しみください。
ボッチ:
独りぼっちの略。
現代においては友達をろくに作れず、集団行動が苦手なのが多いだろう。
そんな高校生が一人、東京都内のとある高校に。
「お兄ちゃん~! もう起きる時間だよ~! 早く起きて~! もうご飯できてるよ~」
そんなボッチにはもったいないほどにできた妹だ。
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両親は共働きで、父親に関しては海外出張が多く、母親とはあまり仲が良くない。
父親は
「成績さえよければ何をしていようが構わん、ただし問題は起こすな」
仕事ばかりで家のことはほぼ母親にまかせっきり。
そんな家庭で唯一の癒しと言えるのが優しくいつも明るくふるまっている妹の存在だ。
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「明美~、今日日曜日だろ~?兄はまだ眠いのだ……もっと寝させてくれ……」
「何言ってるの! 今日はもう月曜日だよ! 今日始業式でしょ! 早く起きて! お兄ちゃん!」
そう言いながら,
まだ少し肌寒い中,
兄を恋人(布団)から無理やり引き離そうとする。
恋人(布団)を奪おうとする暴挙に兄も抵抗するのであった、うつぶせになり、両手で布団の両端を引っ張り、そのまま胸も前でクロスする。
そして決め手はくるりと寝返りを打ち、恵方巻のように自分を布団で巻く。
これならどれだけ頑張ってもほどけまい、っと勝ち誇ったように口が少し笑った。
「仕方ないな~お兄ちゃんは、友達がほぼいないに等しいお兄ちゃんのために、私もそばにいておくよ」
そう聞き、妹に迷惑をかけてしまうと思い、嫌々起き上がる。
「さむっ……はあ、さて一緒にご飯食べるか」
明美が満面の笑みで
「うん!」
っと答え二人でリビングにある椅子に向かった。
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「二人とも、ご飯を食べ終わったら速くいきなさい、始業式に遅刻しないように」
「は~い!」
智也は無言で食べ続け、二人とも食べ終わりともに家から出かけた。
妹に手首をつかまれ走りながら家の近くにある高校に向かった。
正直、同じ学校の人の視線が恥ずかしい。
同性の視線からは殺意すら感じる。
智也は二年生、妹は今年から新入生で一年生になった。
学校が見えてきた。
十分間に合うとわかった途端、妹は速度を落とした。
「ハァ、ハァ、ハァ、ふ~、ハァ、ハァ、ツっ、疲れた~。妹よ、帰宅部の兄を朝早くから走らせるのはよくない、非常に良くない」
「お兄ちゃんも陸上部に入ろうよ~」
「部活とか、上下関係うざいし、俺はやめとく」
「まあ、お兄ちゃんが嫌なら仕方ないけど」
しょんぼりとした顔で少しうつむく妹を見て少し罪悪感がこみあがる。
「さっ! 速く学校に行こ! 」
そういって腕を組んできて、再び歩き出す
「おっ、おい、みんな見てるぞ、離れろよ~」
「嫌だ~、お兄ちゃんの近くにいるの暖かいし、落ち着く、こうしてるだけで安心感がするもん」
「だから近いって」
当たってる、腕に何か柔らかいものが当たってるって! 決して大きいわけではない、かといって小さいわけでもなく、クラスの中ではむしろ少し大きいほうだ、そんな登校時に当てられていると社会的に死にそうな凶器。
「チッ、なんだアイツ朝からイチャイチャしやがって」
「もっと周りの目も気をつけろっての」
「ほんとあの兄妹仲いいよね~」
「え! あれ兄妹だったの!? てっきり付き合ってるカップルのかと思ってた! 」
そんな外野の話している内容を気にしているのは兄だけのようだ。
「アッ、おっはよ~! 明美~! 相変わらず仲いいね~! 一緒に行こ~!」
「あ! ああちゃん! おっは~! いこ~!」
やっと腕を離し、友達二人と合流し校門に入っていく。
「じゃあね! お兄ちゃん! また帰ったら一緒に晩御飯食べよ~! 今日はちゃんと友達作りなよ~!」
「余計なお世話じゃ!」
そんな風に校門前で二人とも笑顔で別れた。
「よっ、智也! 今日も妹と仲良く登校かよ! そろそろ紹介してくれよ~、お兄さん~」
「なんだ、秀吉か。久しぶり、我が自慢の妹だお前には渡さん! あと、お兄さんと呼ぶな絶対認めないからな!」
「そんなこと言わないでくださいよ~お兄様~」
そんな言い合いを続けながら、校門をくぐる。
「……では皆様新学期もしっかり勉学に励み、毎日を有意義に過ごしてください」
「校長先生ありがとうございました、それではこれより始業式を終わります」
「ハァ、立ちつかれた」
そう言って談笑している周りを見もせずにただ一人、教室へ向かう、黒板に書かれている座席表に従い自分の席につきうつぶせになる。
大きな声を出しながら談笑している女子の集団が教室に近づいてくる、座席表の名前は見たが新しいクラスのメンバーが誰なのかは全く分かっていない。少し頭を上げ腕と髪の毛の隙間から一応顔を確認し、また伏せた。
「何あれ? きもくない?」
「あ~、あれだよ、去年隣のクラスにいた津田くんだよ」
「あ~、なんかいつも一人でいて、それで表紙がイラストで描かれてる本を読んでたまにニヤニヤしてるやつでしょ? 」
「あ~、ああいうのオタクっていうんでしょ? キモ~」
「あはは、かわいそうじゃん~そんなに言わないでおこうよ~」
「何よし子、気があるの?Ww」
「えっ、ないない、あるわけないじゃん~」
「逆にひどくねw」
咳ばらいをし、小声で
「うぜ、これだから三次元は」
「なに? 何か言った?」
逆方向に顔を向ける。
「いいよ、あんなのほっとこ、そういえば昨日のドラマ見た? 俳優超イケメンだったよね~! 」
いつの間にか少し寝てしまっていたようだ。
周りはすでにクラスメートが席についており、先生に頼まれた隣の机の女子が智也の肩をペンの逆でつつき起こした。
「おはよう~、先生が“起こして”って~」
智也が起きたのを確認してすぐに、新学期についての説明が始まった。
「……では最後に、わが校では特別な理由がない限りアルバイトは禁止です、皆さんもくれぐれも隠れてしないように~」
その日はお昼にはすでに学校が終わった。
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夕日がホテルの噴水をオレンジに照らすころ
高級ホテル《Posh》
「いらっしゃいませ、お客様」
スーツ姿の智也が出迎えていた、父親の知り合いが開いているホテル、ここなら働かせてもらい、しかも学校の教師にばれる心配もない。
小さいころから海外に行くこともあり、英語は日常会話と多少のビジネス英語くらいなら問題ない。
「明日のプランは、株式会社二社との会談が控えております。そのあと20時の飛行機でロサンゼルスへ、それまでの二日間日本での滞在中すべてのことを私がサポートいたします。」
「ずいぶん若いな、しっかりと教育されておるようじゃしな、近頃ではもう珍しい、あのばか息子にも見習わせたいものだ」
突然いかにも高級なシャンデリアが落下し、ビル全体の電気を消された。
その後聞こえたのは、シュッっと何かが目の前を通ったような音、そして何かが地面に。
数秒が経ち、サブ電源が入り、再びライトがついた。
目の前には、死体が倒れていた。
先ほどの社長だ……
すぐにあたりを見回し、長い髪の黒い服を着た女が見えた。
命が惜しくないわけではない、だが目の前の”人殺し”を逃す気もない。
さっき殺された社長は孤児院も営んでいるという慈善活動もしているいい人だと聞いている。
「ハァ、ハァ」
屋上のドアの近くに隠れて、スマホを使いこっそりと写真を撮ろうとする。
「おや、さっきのよく追いついたわね、ほめてあげるわ、でも、まだ若い、私が今もしさっきの豚を殺したように銃を取り出したら終わりよ」
「あんたの写真さえ手に入ればいいと思ってただけなんだけど、ばれてしまったか」
両手を上げ近づいていく、あと二メートルといったところだろうか、妹のために独学で身に着けた格闘術を使い、万が一の可能性に賭けて倒しにかかる。
だが、運動不足ですでに体力がなく、上げたこぶしはすでに力を失っていた。
腕をつかまれ、長い方足を首に絡み、そのまま全身の体重を智也に乗せ、女が思いっきり体をひねったと思うと、智也の足が地面から離れ、空を一周し背中から地面にたたきつけられた。
そしてすぐに、女が太ももに隠し持っていた注射針を取り出し智也の肩に差し込み薬を注入した。
まもなく、智也は意識を失った。
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再び、目が覚めた、暗い部屋、かすかに月光が窓から差し込み
窓際に杖を持った爺さんのような影が見えた。
その影がゆっくりとこっちへと振り向きこういった。
ようこそ《moon light》へ。
大学生の時に趣味で書いた小説です。まさか数年たった今までまだここまで読んでくれる方がいるとは思わず。久しぶりに添削してみました。今後気が向いたらちょくちょく書き直したりしてるかもです。2022/05/31