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カガミの謝罪とコンビ再結成

「わ、私、レントさんに、ちゃんと、謝らないと、いけないのにっ」


 顔を上げたカガミは、ひっくひっくと息を切らしながら、まだ涙で潤んだ瞳で見上げながら訴えてきた。


「助けてもらったのに、勝手にいなくなって、まだちゃんと、借りを返せてないのにっ、ごめん、なさい……」

「ま、まあ、少し驚いたけど、手紙ももらったし……」

「手紙……?」

「受付の人に渡してただろ?」

「何の……事でしょう……か?」


 え、あの手紙をカガミは知らない?

 あの俺のエロい視線を感じるのが嫌で別れたいっていう……側に助けたい彼氏がいるみたいな手紙。

 あの手紙である意味、カガミを探すのも中途半端に真意を正すこともないと逃げたわけだが、それはカガミが書いたものではない……のか?


「じゃ、じゃあ、どうして……」

「その、忠告してくれる人が居て、これ以上レントさんの側にいると迷惑を掛けるよって」

「な、なんだそれ!?」


 カガミに詳しく話を聞いてみると、シャリルのお気に入りである(と周りからはみえるらしい)俺の側に、女子の姿があれば要らぬ誤解を与えかねない。最低魔力しか持たない俺が、シャリルに見放されたらどうなるか。

 俺の事を思うなら、速やかに身を引いたほうがいい。

 そんな風に諭されたらしい。


「そして俺にはカガミに会わないように手紙を出したのか……」

「手紙には何と書かれていたんですか?」

「え、あ、いや、クラスの子とダンジョンに行くからとか……」


 俺の脳裏に刻まれているやらしい視線やら、彼氏を助けたいからとかいった理由は説明を避けた。


「私がそんな感じでレントさんの側を離れると思ったんですか……」

「いやまあ、俺もカガミのカマイタチに頼りすぎるのもよくないなと思ったしね」


 悲しげに視線を伏せるカガミにわたわたと理由を付け足すと、余計に言い訳じみた感じになってしまう。

 じっと瞳を見つめられると、ついっと俺の方が視線を逸してしまい、より嫌疑は深まる。


「ま、まあ、何にせよ、俺とカガミを別れさせようとした誰かがいたって事だよな」

「そう……なりますね」


 一体誰が。一瞬、俺に負けた魔術師の腹いせかとも考えたが、彼らにとってみれば俺がシャリルに捨てられる方がいいはず。

 カガミの存在を知ったら、別れさせるより、それを密告して愛想をつかさせる方に動いた方が賢明だ……いや、そんな事を考えもせず、俺に嫌がらせしたかったとかもありえなくはないけど。

 などと考えていると、カガミは沈んだ声で告げた。


「で、でも、レントさんはメンドーサ子爵様のものなんですよね」

「まあ、そういう事になってるな」

「ですよね……」

「早くその支配から脱するために、10階を目指してるんだが」

「え?」


 カガミに自分の立場を伝える。借金があって首輪を付けられ、必死にダンジョンに潜るしかないこと。借金の一部は、10階のミノタウロスの肉を手に入れれば返せること。

 流石に異世界やエトランゼ様の事を教える訳にはいかなかったが、金銭の他にも借りがあって返済途上だという感じに。


「なるほど。少なくともミノタウロスの肉は必要なんですね」

「ああ。余分があれば、シャリルのとこのコックが絶品料理を作ってくれるだろうしな」


 牛肉があれば、すき焼きなんかもレパートリーに加わってくるだろうか。


「わかりました。すぐに倒しに行きましょう」

「え……カガミも来るつもりなのか?」

「だって、レントさん一人だと心配ですし」

「いや、確かにムカデにはやられかけたが、本気を出しきれてなかったし、今度から気をつけるから大丈夫だよ」


 身体強化で接近戦を繰り広げたが、基本的に魔法を使うのが帝魔生の戦い方だ。その本分を忘れていた俺は、下手に魔力を使い惜しまず戦っていこうと心に決めていた。9階からは、そんな余裕はないのだ。


「私がいると、迷惑……ですか。やっぱり、シャリルさんに気兼ねがあって……」

「いやいや、それは無いって。シャリルなんて俺のこと、単なる所有物程度にしか思ってないし、気にくわなかったら殺すつもりで甲撃してくるし」

「だったら、一緒に居させてください。オーガにやられたと聞かされた時は、どうして側を離れたのかと、ずっと後悔してたんですからっ」


 必死に訴えてくるカガミの様子に気圧されながら、その背後にいる帝魔生に目をやる。


「そ、それに、カガミには仲間もいるだろ。彼らを俺の借金に巻き込む訳にはいかないよ」

「僕達の事は心配しないでください。カガミさんがいないとこれ以上は進めませんから、ここらで帰りますので」

「今日の分は稼げたしな」


 そういって魔石の入って小袋を掲げる。


「すいません、皆さん……」


 カガミは申し訳なさそうに謝りつつも、俺から離れる素振りをみせない。心配をかけたのは悪かったが、そこまで頑なにならなくてもとは思う。

 その困惑を察したのか、カガミの仲間の一人がそっと近づいて耳打ちしてくる。


「カガミさん、レントさんが死んだと聞かされてから、すっと切羽詰まった顔で少しでもダンジョンに籠もって、助けられる人を探して回ってたんです。それが罪滅ぼしだって。笑顔なんて全くなくて、ずっと張り詰めてて……それからようやく解放されたんですよ。そこまで思ってくれた彼女に、少しだけでも応えてあげてください。レントさん、彼女のこと、頼みます」


 そう言って不器用にウインクすると、すすすっと距離を取る。そんなやりとりがあったことに、カガミは気づいた様子はなく、クラスメイト達一人ひとりに、気をつけるようにと、アドバイスを送っていた。


「ま、仕方ないか」


 俺も男だ。こんだけ思ってくれる少女の気持ちを無碍にすることはできない。


「それじゃ、10階まで行って、サクッとミノタウロスを狩って帰ろうか。カガミ」

「は、はいっ」


 嬉しそうに顔を輝かせるカガミに、俺は苦笑しつつも悪い気はしていなかった。

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