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帝魔での宿舎

 帝魔の入口で俺を待っていたのは、案内役の上級生で名前はサリナさんと言うらしい。


「それじゃ、宿舎へと案内するわね」

「お願いします」


 どちらかというともう一人の記憶に近い町並みを、サリナさんに案内してもらう。

 10mを越す高い城壁に囲まれた帝魔は、外の世界に比べると格段に技術が進んでいるらしい。あらゆる魔法技術が進む中、それらが街の様相へと反映されているのだ。

 例えばガラスを生み出すにはかなりの熱量が必要だが、薪を燃やしてフイゴで加熱しても、それを生み出すのはほぼ不可能。しかし魔法ならばそれを実現する事もできるのだ。

 ただし使える者は限られ、外へ流通するほどは作れないらしい。

 また進みすぎた技術は、外に持ち出すと混乱を生じる物も多いため、基本的に帝魔の外へと高技術の品々が持ち出される事はない。

 その検閲をするためにも、帝魔への出入りは専用の転移ゲートが使われているのだという。


「入る時より、出る時の方が大変なんだよ」

「なるほど……」


 そうやって蓄積される技術は、理事長と皇帝の間で審議が持たれ、徐々に外へと提供されていくらしい。




「ここがレント君達の宿舎になります」


 外に比べると洗練された商店街を抜けて、住宅街に入り、少し進んだ所にその宿舎はあった。

 雰囲気で言うと一人暮らし用のアパートか。三階建でワンフロアに4部屋、個々の部屋には居間に寝室、勉強部屋に区切られ、台所やトイレも完備されていた。


「ごめんなさいね。農村出身者を差別する訳じゃないんだけど、最初はこういう小さい部屋からスタートしてもらうことにしてるの」

「え、いえ、こんな凄い部屋を、一人で使っていいんですか?」


 サリナさんは雰囲気からして貴族出身なのだろう。もう一人の記憶と照らし合わせても、一人暮らしには広すぎる家を、『小さい』と認識しているようだ。

 確かに周辺には垣根に囲まれた一軒家が立ち並んでいて、貴族達はそちらに住むことになっているんだろう。

 貴族には使用人などが付き添うのが当たり前だし、何人かが一緒に生活するなら、このアパートでは狭いのかなとも思う。

 しかし、一人で暮らすには十分な広さで不満などなかった。


「気に入って貰えたなら何よりです。もし帝魔で収入が上がったら、転居するのは自由ですから頑張って下さい」


 帝魔内でアルバイトなどをして稼ぐ事が認められている。不満があれば転居していくのだろうが、今の俺には全く不満などない。

 かえって広い家に住むと落ち着かなかっただろう。


「今期の入居者は、10人で皆さんそれぞれの部屋に住むことになります。この寮に住むのは庶民出身の方達なので、色々と相談できることもあると思います」

「庶民出身が10人もいるんだ」

「女子の方にも12人の入居者がいるので、22人ですね。今期の入学者は437人なので、庶民出身者は肩身が狭い思いもあるかもしれませんが……」


 やはり全体で見るとほとんどは貴族なのか。それでも同じ境遇の仲間が近くに住んでいると言うのは心強い。

 地方領主の館では男女問わず、教員側も含めて俺を蔑む連中ばかりだった。

 全国から生徒が集められる帝魔ならと我慢してきたのが遂に報われるようだ。


 それから入学までの2週間、次々と地方から上京してきた庶民出身の生徒達。皆、似たような体験してから帝魔へとやってきていた。

 一人だけ貧しい食事、倉庫のような狭い部屋、魔法の練習台。どこもやる事は変わらない。

 ただ他の領主の所では他の生徒が5人ほどだったらしく、伯爵領という事で人数が多かった俺ほどには、ひどい目に遭った者は居ないようだったが。

 それでも境遇を共感できる俺達10人の庶民組はすぐ仲良くなり、貴族達に負けないぞと絆を結んで入学を迎えることになった。




 そもそも帝魔というのは、魔法を習得する場でもあり、貴族の養成機関でもある。

 15歳から20歳くらいまでの子女が全国から集められて、魔法技術を始めとした様々な教養を身につける事ができる。

 一応3年を目処に教育が行われるが、十分だと思ったら早期卒業もできるし、逆に長く研究したいとなれば、研究課程に進んで好きなことに没頭する事もできた。



 しかし帝魔の存在意義の一番は、地下迷宮ダンジョンの封印にある。帝魔の建物は、巨大な地下迷宮の上に建設されていた。

 誰が作ったのか、なぜそこにあるのかは不明だが、帝都の、帝国の繁栄は地下迷宮と密接に関わっている。

 そこに居る魔物は多種多様。弱いものから強いものまで様々な魔物が巣食っていた。

 その魔物が持つ魔石は、魔力を含み、魔法によって動作する機器を稼働させる事ができる。

 もう一人の記憶にある電気のように、街灯の光から調理する時の火、馬車の代わりとなる乗り物の動力など、様々な物が魔石によって動かすことができた。

 その魔石の供給源として、そして魔物が地上に溢れないように、帝魔の生徒はそれらを狩る事が仕事として割り当てられる。

 その働きによって、報酬を得ることこそ、帝魔で許されるアルバイトだ。


 帝魔で学んだ事を活かして、いかに稼げるか。それには貴族も庶民もない。農村では稼げない額を稼いで凱旋する事もできる。

 また活躍次第では爵位の授与を受け、貴族の仲間入りを果たすこともできた。


 ……まあ、魔力が高い貴族が有利な事は変わらないが。

 何にせよ、ここでの頑張りはそのまま評価に繋がる。そのチャンスを活かせるかは自分次第だ。

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