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帝都から帝魔へ

 帝都へは乗合馬車でガタゴト揺られながらに到着した。

 魔法を習った地方領主の爵位は伯爵で、その領都は俺達の村がある東部地方の中心地だ。2重の城壁に守られた堅牢な造りは、防衛拠点としても、商業拠点としても立派なものだった。


 しかしやはり帝都は別格。城壁で言うなら5重の構造。内側2層が皇族に、3層目が貴族、4層目は大手の商人で、5層目が庶民に解放されている。更にその外側にもあまり整理されてない家屋が建っていて、多くの人々が生活していた。

 俺が目指す『帝立魔法技術継承学園』、通称帝魔は厳密に言うと帝都の中には無い。

 帝都から一部飛び出した出城のように、独立した城壁で囲まれて存在する。

 これは帝国からの自立の表れであり、逆に帝都が危機となった時には軍事拠点として敵を食い止める勢力であるともされた。

 それだけ魔術師を育てる機関というの重要視されているのだ。



 お上りさんの俺は帝魔へと向かう前に、帝都の下町。5層内を散策していた。

 下町とはいえ城門では身分の確認が行われる。国が認めた冒険者や旅商人など、一定の身分を認められていないと、場内には入れない。

 俺の場合は領主の館で貰った名札が、魔力の有無を証明してくれるので5層内は自由に歩けるらしい。

 貴族ではない俺が4層以内に入っていくには、帝魔で一定の成績をおさめないといけなかった。そもそもが大手の商人向けの街で、扱う品も上物なので、多少稼ぎが増えたとはいえ地方の農民が出せる金額で買えるような物は無いとのことだが。


 実際の所、活気があるのは5層内の方だ。人の出入りが激しい分、物の流通も盛んで街を歩いているだけで色々な方向から呼び込みの声が聞こえる。

 通りの酒場からは楽しそうな笑い声も聞こえてくる。帝都はかなり景気が良いようだ。

 通り沿いには店やゴザを敷いて物を売るバザーなどが所狭しと並んでいる。そこに並ぶ品々も見たことの無いものが多い。

 多少物価は高いようだが、それでもずば抜けて高いということもなく、里で持たされた小遣いで必要な物は買うことができた。


(里に帰る時にはお土産に苦労することはなさそうだな。その前に稼がないといけないけど)


 帝魔に入学したら、アルバイトする事もできるらしい。魔法を使える戦力は、魔物の退治などで引っ張りだこ。冒険者のような事をして、お金を稼ぐことができるらしい。

 俺の魔力は底辺だが、それでも普通の人よりは強い。司書の爺様と研究した魔法学によって、魔力以上の働きもできるつもりだ。

 帝魔での生活が安定したら、すぐにでも働きにでるつもりだった。




 帝都で買い足した日用品を持って、いよいよ帝魔へと向かう。5層内にも帝魔行きの乗合馬車が走っていて、それに乗るとワクワクが高まっていく。

 帝都内の主要道路は馬車がすれ違える広さの車道と歩行者用の道路が、石畳で舗装されていた。

 馬車の方も簡素なサスペンションが入っているらしく、帝都に向かう時の馬車に比べると格段に揺れない。

 整備された道路と発達した馬車のおかげで思った以上の速さで、帝魔への入口へと辿り着く事ができた。



「ん? 新入生か。身分証を拝見しよう」


 帝魔への門は閉じられ、衞士が検閲を行っていた。


「カニエ村のレントか。ようこそ、帝立魔法技術継承学園へ。貴殿の入園を許可する。詳しいことは中の案内人に聞いてくれ」


 そう言って衛士は俺を門の前に立たせる。そこには高さ5mはあるかという重厚な門。俺1人の為にこの門を開いてくれるのか。

 かたずを飲んでその時を待つ。


「安心しろ。この学園で魔力が2倍、3倍に伸びた生徒も多い。希望は捨てるな」


 そんなセリフと共に俺の身体は不思議な浮遊感に包まれた。




「こ、ここは……?」


 てっきり門が開くと思って見上げていたら、気づくと違う場所に立っていた。

 もう一人の記憶にあるエレベーターで上昇する時の浮遊感の後、視界が一変していた。


 さっきまでいた帝都も里の村や地方の領都に比べると、格段に整備されて高い建物が立ち並ぶ都会だったが、目の前に広がる世界は次元が違った。

 石畳ではない滑らかにならされた歩道。レンガ造りではない町並み。窓には透明な何か……もう一人の記憶にあるガラスが嵌っている。

 街行く人々は、皆年が若く変わった服に身を包んでいた。


「いらっしゃい、新入生ね」


 振り返るとそこにはブレザー姿の女の子が立っていた。明るい茶色の髪をした優しそうな女子。俺よりも少し上だろうか。


「ふふふ、ここに初めて来た時は皆戸惑うから、落ち着いたら声を掛けてね」

「は、はい……」


 帝魔、思ったよりも凄い所に来たようだ。

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