部屋にいる何か
今から5年前のこと、
当時は大学3年生、
9月になり夏休みも終わって、静岡の実家から東京郊外にある下宿先のアパートに戻ったときの話です。
今思い出しても、、、
恐怖で、、、、
休みも終わり、明日からまた大学生活が始まる。
俺は静岡の実家から、東京の郊外にあるアパートに戻ってきた。
9月のはじめなのに真夏日だった。
大きなボストンバックを抱え、1ヵ月半ぶりに部屋に戻った。
かなり蒸し暑くなっていると思った部屋は意外に涼しい、、
むしろ涼しいというよりは寒気さえする。
まるで今まで誰かか生活していたかのように、、
もちろんそんなはずはない。
合鍵は管理人しかもってないはず、、
まさか、管理人が換気でもしてくれたのだろうか?
不思議に思いながらボストンバックから荷物を出し、明日の準備を始めた。
そして慌ただしく後期の大学生活が始まった。
一月がたち、ようやく生活ペースも落ち着いた10月のはじめのある日
いつものように授業も終わり帰ってきて部屋の前で鍵を探していると
部屋の中から、ガタガタと音がする。
びっくりして聞き耳を立てる
誰かが部屋を歩いているようなどんどんという音がする。
あわてて鍵を開けドアを開ける、、、、、、
一瞬静まりかえった部屋
誰もいない。
おかしいな
確かに聞こえていた音は?
部屋に入って様子を見るが何も変わったことはない。
ただ、2階ということもあって換気のため窓を10センチほど開けておいた。
猫でも入ってきたのだろうか。
そういえばこの辺は野良猫が多いらしく夜中によく猫の鳴き声がする。
俺は恐怖を抑えるためもあり そう思い込むようにした。
それからもおかしなことが何回かあった。
夜 寝る前に閉めたはずの窓が朝起きてみると 開いてたり
隣の人の物音と違う音が聞こえたり
だんだん気のせいとは思えなくなってきた。
そしてある晩、、、思い出しても鳥肌が立つ出来事が起こった。
その夜はいつになく湿気が多く 寝苦しい夜だった。
窓を開け換気したがじめじめ感はおさまらなかった。
寝苦しさと戦いながらいつの間にか意識は遠のいていった。
突如、がりっ がりっと畳を爪で引っかくような音がして、意識が戻った。
何かがいる。
体は金縛りあったように動かない。
ただ、何かが部屋の中を這いずり回っているような
気配がする。
恐ろしい、、恐怖で汗が額から後頭部のほうに流れる。
猫か、窓から入ってきたのか?
体は動かすことは出来ない。
なんだ、これはいったいなんだ、、、
その俺の部屋の中を這っている何かは だんだん窓のほうに近づいていった。
早くここから出て行ってくれ、
俺は祈るようにそうつぶやいた。
バサっと窓のカーテンが落ちた、
いや、見えないがきっとそういう音だ。
ありえない、猫が引っかかったくらいでカーテンが落ちるなんて。
しかし次の瞬間
俺は恐ろしさの余り、うわーーーーっと叫び声をあげてしまった。
すごい速さで俺の目の前に現れたのは
猫ではなく、子供だった。
しかも顔が半分腐りかけて、目の玉はえぐられて落ちたように黒く窪んでいる。
そしてその生き物はずるずると音を立て俺に近づいてくる。
動けない俺の顔を覗き込むように、そして生ゴミが腐ったような強烈な悪臭がする。
うわーーーー、声にならない悲鳴を上げる。その時何かが俺の胸に触れた。グニャっとするような感触
必死に身体を動かそうとして、何とか胸に触れる何かを振り払うと起き上がり、
俺はジャージのままはだしで部屋を逃げ出し階段を駆け下りた。
とっさに置いてあったチャリンコにまたがり、わけもわからずま、ひたすらこぎ続けた。
どっちに向かっていったのかわからないが、しばらくこぎ続け、疲れて力を弱めた時
急にハンドルが重くなったような気がした。
それは 自転車の前の籠にしがみついている
あの腐った子供だった。
手を離し自転車から転げ落ちたような気はしたが、、
それっきり意識はなくなった。
意識が戻ったのは、、、3日後のことだった
。
気が付いたのは病院のベッドの上だった。30代半ばの二兎のよさそうな看護婦さんに聞いた話だと、
俺は自分の部屋から2キロほど離れた急な下り坂で、
ガードレールにぶつかって頭を5センチほど切って倒れていたということだった。
検査の結果 命には別状はなく、1週間くらいで退院できるということだった。
でも退院して、どこに帰ればいいのだろう、、、あの部屋に帰れというのか、、
あくる日、クラスメートの藤本 宮坂が見舞いに来てくれた。
俺は今までのことをすべて話して、しばらく休学して、実家に帰ることを伝えた。
幸い後始末は二人が何とかしてくれるということで、悪いとは思ったが、ここは2人に甘えることにした。
そして退院後そのまま実家に帰った。
あの部屋には、二度と近づきたくなかった。
実家に帰り1ヶ月が過ぎ、ようやく夜も眠れるようになってきた頃、1通の現金書留が送られてきた。
その手紙は不動産屋からのもので、
支払ったお金の返金と、お詫びの文章だった
その手紙によると、あの部屋には以前、若い夫婦と3歳になる男の子の3人が住んでいた。
ある夏の暑い日に、両親は子供を置いて、二人で近所にパチンコをしにいってしまった。
その日はめずらしく二人とも儲けてしまいついつい帰りが遅くなってしまった。
残された子供は余りの暑さに耐えきれなり、自分で窓を明け
あやまって落ちて死んでしまった。
黙っていて本当に申し訳ない という内容だった。
そうか、厚くて苦しかったんだな、、、
俺は恐怖より、可愛そうなその子に涙が出た。
親の身勝手さで命を落としたその子のために、
僕はもう一度あの部屋に行こうと思った。
花と、お線香を持って