あ、やっぱり三回勝負にしよう
僕は、必ずジャンケンに勝てる。
相手が次に何を出すだとか、どう考えているからだとかは全く関係ない。ジャンケンにおいては僕が何か思考するにしろしないにしろ、勝ちが降ってくるのだ。
その事実に気がついた僕はとにかくジャンケンをしまくって勝ちに勝ち抜いた。
今まで勝ち取ってきたものは 給食のプリン、学校での班長決め回避、飯のおごり、地元のジャンケン大会の優勝賞品の数々・・・数えているとキリがない。
でも、そんな僕にだって欲しくても手に入らないものがある。
それは、恋人だ。
小学生の頃、クラスで一番可愛い女の子、みのりちゃんが好きだった。
当時の若かりし僕はどうにかしてジャンケンで彼女と付き合えないかと真剣に考えていたが、当然そんな方法あるはずもない。ぐずぐずしている内にいつの間にかクラス分けがあって、その後は卒業。結局僕は何もすることが出来なかった。今頃彼女はどうしているだろうか。
高校の一年目、春。
まだなんとなく気まずさの残る教室の一角で、瀬戸春田は一人、机に伏せながら時間がすぎるのを待っていた。
ジャンケンに必ず勝てる僕には、欲しくても手に入らないものがある。
それは、ジャンケンで手に入れられる以外のモノ 全て だ。