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No.8 Burial ~訪問者~

トーストにベーコンエッグ、そしてサラダ。

それが今日の朝食だった。


いつもと比べてとても優雅な朝を過ごしている。

頭はすっきりとしていて全く眠くない。

寝坊してトーストをくわえて登校なんてことは今日に限っては無さそうだ。


食後のコーヒーを飲みつつ、テレビに視線を向ける。

朝から大物政治家の贈賄事件や失踪事件、外国の紛争のニュースが流れている。

こんなニュースばかりでは朝から気が滅入ってしまう。

コーヒーも苦いし。


コーヒーを飲み終えた私は流し台に片付け、学校へ行くの支度をするために部屋へと向かった。


夜実(よみ)ちゃんとの魔法の訓練は順調に進んでいて、簡単な魔法なら使えるようにまで成長していた。

まあ、本当に簡単な魔法だけど。


それでも魔法を使えることには変わりはない。

慣れてきた実感もあるしこのままいけば一人前の魔法少女になる日も近い。


最近は魔法の訓練ばかりで部活に行っていなかったから今日あたり顔を出してみようか。

一応小さい部活のとはいえ部長だし。

昼休みにでも月岡先輩に聞いてみよう。


私はいつもより余裕のある時間に家を出た。

早起きは三文の得って言葉もあるくらいだし早く家を出たら何かあるかもしれない。

まあ、何もないだろうけど。



私の一日がほんの少し早く始まった。




ーーーーーーーーーー




「で?何で自称早起きの荒木(あらき)さんが遅刻してるのよ」



椅子に座った氷柱(つらら)が足を組んで床に這いつくばった私を冷やかな目で見下している。



「あ……ありのままさっき起こったことを話すぜ」

「別にいいわ、興味ないし」

「いや、ちょっと!」



自分で聞いておいてなんて奴だ。

そんな性格だから友達できないし影で氷の女とか言われるんだよ。



「なに?」

「べ、別になんでもないけど……」



べ、別に人を殺せそうな眼光にびびった訳じゃないんだからね、勘違いしないでよね。



「はぁ、どうせ早起きしたのはいいけど調子にのっていつもと違う道を通ったら迷子になったとかでしょ」



氷柱はため息をついてそう言った。

その顔は呆れを通り越して無表情だった。

てか、なんでわかるんだよ、お前はエスパーか。



「イエス!」

「イエス!じゃないわよ。あんたほんとにバカね」



氷柱の罵倒はもう慣れた。

その罵倒には愛がある…………と信じている。


ともかく先生に絞られたあとに氷柱にも説教された。

これはもう癒しの女神を頼るしかない。

そう思い、周りを見渡す。

しかし、お目当ての(ゆい)ちゃんの姿が見当たらない。



「あれ?唯ちゃんは?」

「唯は休み。家の事情だって」

「へー、そうなんだ」



そうか今日は唯ちゃんは休みなのか。

あんまり休んだことがないから少し心配だ。



「人の心配より自分の心配したら」



私の心を読んだように氷柱が口を挟む。



「へ?」



チャイムが鳴り教師が教室に入ってくる。



「課題やってないでしょ」

「あ」



そういえば数学の課題が出ていた。

当然やっていない。

私は満面の笑みで手を擦りながら氷柱に懇願する。



「あの~、氷柱様。ノートを見せて頂けないでしょうか」

「ヤダ」



やっぱり氷の女は無慈悲だった。




ーーーーーーーーーー




放課後、私は部室に来ていた。

久しぶりの部活は楽しみだった。


別に魔法の訓練が嫌だった訳ではない。

むしろ楽しみながらやっていた。

なにせ魔法なのだ、ファンタジーなものがつまらないはずがない。


ただ純粋に部活の時間が好きなだけだ。

自分が自然体でいられる気楽な空間。

それが部活だった。



「さて、依頼は来てるかなー」



部室の前に置いてある依頼ボックスを開けてみる。


何かあるかと期待していたが残念ながら依頼はなかった。

これも慣れている。

中等部の中でもマイナーな部活なため、仕事の依頼が来るのは精々週に一、二回程度だ。

慣れているのだが、やる気がある分少し歯痒い。


今日中に依頼が来るかもしれないので部室で待つようにしよう。

私はいつも通りに部室に隠してあるお茶とお菓子を取りだしのんびりする。


仕事をするのもいいけどこのダラダラするのもやはりいい。

依頼が来るまでは満喫していよう。



「……遅れました」



ダラダラし始めて数分。

部室のドアを開いて入ってきたのは依頼者ではなく夜実ちゃんだった。



「あ、夜実ちゃん。お疲れー」



ソファーに寝そべりながら手を降る。

すると夜実ちゃんもそれにお辞儀で返した。



「あれ?今日は訓練休みじゃなかったっけ?」



昼休みに月岡先輩に直談判したのだから間違いない。

怒られると思ったが意外なことに快く了承してくれた。

月岡先輩曰く、頑張り過ぎても集中力が続かない、程よい休息も大事、なのだそうだ。



「あの、(れん)が部活を休むことを伝えようと……。今日は各務(かがみ)先輩も休みだと聞いたので……」

「手伝いに来てくれたんだ?」



はい、と夜実ちゃんが頷く。

いい後輩に恵まれたものだ。



「ありがとう。でも今日も依頼ないから気にしないでね」

「……いえ、私も部員ですから」



その言葉を聞いて嬉しくなる。

夜実ちゃんも部活を大事にしてくれていることが伝わってきた。



「じゃあ、今日も頑張ろうね」

「はい」



とりあえず私だけがお茶を飲んでるのはなんだか忍びなかったのでお茶を出すことにしよう。

そう思い、夜実ちゃんの分のお茶を出そうとしていた時、部室のドアが勢いよく開かれた。

さっきの控えめな開き方とは正反対だ。



「あの!ここがボランティア部ですか?」



茶色がかった短髪のジャージ姿の少女が息を切らせながら立っていた。

ジャージの色を見る限り下級生、どうやら夜実ちゃんと同学年らしい。



「そうだけど。どうしたの?」

「友達がーー」



少女は乱れた息を整えて言った。



「友達が行方不明なんです!」

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