表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/28

No.6 Burial ~予感~

ザクッ


ザクッ


ザクッ


目の前の少女がひたすら穴を掘っている。

その目は虚ろで生気が感じられない。



「………………と……隠さ…………」



ふと何かをぶつぶつと呟いているのが聞こえた。


スコップを使ってひたすら掘る、掘る、掘る。

その作業を繰り返している。

掘っている間も呟きは絶えず聞こえてくる。


何を言っているのか気になって耳を澄ます。



「掘らないと……隠さないと……掘らないと……隠さないと……掘らないと……隠さないと……」



何かを恐れている様に呟き続けている。



「私は悪くない……悪くない……悪くない……」



しばらく堀り続けた後、不意に少女の動きが止まった。

そして、少女は少し離れたところに置いてあった袋を引きずって穴の近くまで運んできた。

その袋はとても大きいものだった。

日常生活では使うことがないような大きくて丈夫そうな袋だ。

人一人が入ってしまいそうな程大きい。



「そう……私は悪くないの……悪くない……だから」



そう言って少女は袋の中のものを取り出そうとする。

重いものなのか袋から出すのに時間がかかる。


ドサッ


やっとのことで袋から出したものを掘った穴に投げ入れる。


それは身体中から血を流し、目を見開いたまま息絶えている私だった。




ーーーーーーーーーー




ガバッ!



「はぁ……はぁ……はぁ……夢か」



飛び起きた私の視界に写っていたのは見慣れた自分の部屋だった。

そんな当たり前のことに安心する。


さっきまで見ていた妙にリアルな夢は起きた今でもはっきりと覚えている。

少女の息づかいや土を掘る音。

死体となった自分の姿も目に焼き付いて離れない。



「すごいリアルだったな……」



あんな夢を見たからなのか体が疲れて怠いような気がする。


自分が死ぬ夢を見てしまうとは疲れているのだろうか。

数日前に魔法少女になると決意したばかりだ、まだ心の準備ができていないのかも知れない。

ゆっくりと時間をかけて馴れていくしかないのだろう。


とりあえずはこの沈んだ気分と体の怠さを吹き飛ばすために伸びをしよう。



「んーっ!」



はぁ、やっぱり伸びをすると気分と体が軽くなる気がする。

これで今日も一日頑張れる。



「そろそろ動きだそうかなー」



ふと時計を見ると時間は9時。

学園は8時30分から始まる。

ということは。



「やっば!遅刻じゃん!」



プロのマジシャンも驚くほどの早着替えを済ませて家を飛び出す。


嗚呼、私の朝食が……。




ーーーーーーーーーー




「ーーってことがあったん……です……ょ」



学園に着いて待ち構えていたのは険しい顔をした月岡先輩だった。


休み時間にこっそりと教室に入ろうとした私だったが途中で月岡先輩に捕まってしまい、執行部室まで連行された。

道中終始無言の月岡先輩がかなり怖かった。


怒られる前に言い訳をしようと今日の朝にあったことを全て話した。

よく考えると全然言い訳になっていないことに気がつく。

これは余計に怒らせてしまったかと思ったのだが、月岡先輩の口から出た言葉は予想もしていなかったものだった。



「やはりそうか……」



そう一言呟いてさらに険しい顔になる。

怒られると思っていたから驚く。

怒られなかったこともだがそれよりも『やはり』という言葉が気になった。



「…………」

「…………」



しかし、とても聞ける雰囲気ではない。

この前の様に言葉がなくなる。


コンコン



(まどか)ちゃん、入るわよ」



その雰囲気を打ち破ったのは未来子(みくね)先輩だった。



「こんにちは、荒木(あらき)ちゃん」



その優しい笑みに救われる。

他の誰かがいるだけで雰囲気が変わるものだ。



「こんにちは、未来子先輩」



あいさつを返す。

感謝も込めて返したのを感じ取ったのか未来子先輩は優しく微笑んだ。



「未来子も来たことだし、本題に入ろうと思う」



月岡先輩がそう切り出す。

私が遅刻したこと以外の話があったのだろうか。

険しい顔でさらに続ける。



「本当はもう少しゆっくりと魔法になれてもらうつもりだったが、そうも言ってられないらしい」

「そうね」



先輩たちは同じ意見なのか異論はなかった。



「今日から魔法の訓練をしてもらう」



いきなりのことですまないが、と月岡先輩は申し訳なさそうに言う。



「あの、私は別にかまわないんですけど。何かあったんですか?」

「お前も見たんだろう?あの夢を」



夢?

朝見たあの夢だろうか。

でもあれはただの夢じゃないのか。



「……ただの夢じゃないんですか?」



恐る恐る質問する。

なんとなく嫌な予感がして汗が滲んでくる。



「私が説明するわ」



どうやら未来子先輩が説明をしてくれるらしい。



「……はい。お願いします」

「まず魔法には二種類あるの。魔法少女なら誰でも使える普通魔法とその人にしか使えない固有魔法。荒木ちゃんたちが見た夢は私の固有魔法の『予知』によるものなの」



あの夢は未来子先輩の魔法だったのか。

通りでいつもの夢よりもリアルなはずだ。



「あの夢はただの夢じゃない。起こりうる未来の映像なの」

「だからああならないように君に魔法を学んでもらう。少なくとも自分を守れるくらいには」



最後に月岡先輩がそう言った。


あの出来事が未来の出来事。

今のままだと自分は死ぬ。

物凄く怖い。

だけど今の私は昔とは違う。

怖いことから逃げていた昔とは違って今は立ち向かう力がある。


だから頑張ろう、皆に迷惑をかけないように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ