No.18 Burial ~犯人は~
「悪くないんじゃないですかね」
そう言った自分の顔は思った以上に緩んでいた。
目の前にいる砂々森荒木がアホみたいにポカンとした表情をしていたので自分の顔を触ってみたところそれに気づいた。
無意識だろうか、久しぶりにこんな表情をした気がする。
自分の失態に気づいてすぐさま顔を背けた。
見られてないことを願うがあの様子じゃおそらく見られただろう。
砂々森荒木と別れてからもさっきの自分のことで頭が一杯だった。
なぜあんな表情をしたのか。
あの先輩のことは前までは特に興味を抱かなかった。
助けたのも仕事だからやっただけだし魔法を教えたのも仕事だからだった。
いつも通りに新参の魔法少女に対する接し方をしていただけ。
少し興味を持ったのは今回の事件が起こってからだった。
他人に親身になって協力をしていた。
自分にはなにも得がないのに仕事だと割り切ってやればいいのにそうしなかった。
与えられた役割を必要以上に行おうとしている。
そんな風に見えた。
「結局、羨ましいんですかねぇ」
なんとなしに呟く。
あんな風に一生懸命になれるのが羨ましい。
努力できるのが羨ましい。
ただそれだけ。
ふとポケットの中で携帯が鳴っていることに気づいた。
画面を見ると月岡円からの着信のようだ。
「はい、千藤ですけど」
『千藤。悪いが戻ってきてくれ、報告がある』
ーーーーーーーーーー
「連絡の取れていなかった堀峰咲の両親が見つかった」
執行部室に着くなり月岡円がそう言った。
「遺体で、だ。他の被害者と同じように埋められていたよ」
「はあ、そうですか」
そうですか、としか言いようがない。
特に興味もないし関わりもないから悲しみようもない。
いや、でも何か引っ掛かる。
もし、堀峰咲が犯人だったならなぜ両親を殺す必要があるのか。
いくら人を殺した殺人犯といえど身内を手にかけるのは気が引けると思うが。
そもそも殺す利点がない。
両親が殺されたのなら必然的に娘である堀峰咲自身にも警察が色々と取り調べをするだろう。
そんな自分の首を絞めるようなことをするのか。
「円ちゃん。荒木ちゃんが電話にでないんだけれど、どこにいるか知らないかしら?」
未来子結子が少し心配そうな顔で尋ねてくる。
「あ、先輩ならちょっと前にーー」
また何か引っ掛かった。
「どうした、千藤?」
「あの、堀峰さんが失踪したのっていつくらいでしたっけ?」
「いきなり何だ?」
「すみません、ちょっと気になって」
「お前が気になるなんて珍しいな。確か、三週間程前だな」
「事件が始まったのもそのくらい前からですよね」
「ああ。短い間にこんなに犠牲者が出てしまうとは……」
まだ何かが引っ掛かる。
「話を戻すが、お前は砂々森が今何をしているのか知っているのか?」
「いや、今何してるのかは知らないですけど。ちょっと前までは一緒にいましたね」
「困ったな。彼女にも伝えなければならないのだが……」
「何をです?」
「堀峰咲のご両親のことや進捗状況についてだ。砂々森は今回堀峰咲の捜索を一番やっていたからな」
どうやら自分で言わないと気がすまないようだ。
律儀な月岡円らしい。
他の人には資料があるらしいのでその資料を貰って目を通してみる。
資料には堀峰夫妻のことについて、そしてその後の捜査での結果が書いてあった。
「これあったんですか?」
資料の中に気になることがあったから聞いてみた。
「ああ、堀峰咲の携帯電話は見つかったな。手懸かりを探そうとしたが何もなかった」
「確か砂々森先輩の報告だと堀峰咲は土間舞花にメールを送ってるはずですよね?それは有りましたか?」
「確かにあったな」
「いつ送られていましたか?」
そう言われ机に置いてある違う資料に目を通し出した。
その情報もあったようですぐに顔を上げた。
「13日前の午後8時ーー」
「それって堀峰咲はもう失踪してますよね。堀峰咲本人が送ったなら携帯電話があるのはおかしいと思うんですがーー」
自分の中で疑問となっていたことが線で繋がる。
「本当に堀峰咲が犯人なんですかね?」
ーーーーーーーーーー
とりあえず学園から出て砂々森荒木を探すことにした。
未来子結子の予知ではないが、今回は堀峰咲が犯人ではないと確信していた。
直感でなんとなくそう思っていた。
堀峰咲が不自然に怪しい。
魔力痕を消せるような技量、余裕がありながら疑われるような証拠が残りすぎている。
まるで堀峰咲を犯人に仕立てあげようとしているような、そんな風に思った。
それが引っ掛かってることだった。
学園から商店街へ向かう途中、福祉原陽亮が発見された雑木林。
そこに近づいた時、微かに魔力を感じた。
これは確か砂々森荒木の魔力だったはず。
そして、その魔力はある種類のものだった。
緊急事態に送る魔力信号。
所々間違っている所もあるが間違いない。
迷わず雑木林へ突っ込む。
どうやらあの先輩は何か危険な目にあっているらしい。
人間が通らないような獣道を走る。
「ーーーーーー!」
しばらく進むと怒鳴り声のような声が聞こえてきた。
砂々森荒木の声ではない。
でも、どこかで聞いたことがある気がする。
どんどんと声は大きくなりそして二人の人影を目に捕らえることができた。
そこには縛られ地面に倒れている人をスコップで殴っている少女の姿があった。
聞こえてきた話の内容とこの状況から彼女が本当の犯人なのだろう。
その少女は確かに見覚えがあった。
目下行方不明である堀峰咲と被害者福祉原陽亮の親友であり、砂々森荒木の依頼者である土間舞花だった。
あの先輩が疑いもせずに親身になって協力していた相手。
その彼女が物凄い形相でスコップを降り下ろしている。
自分は悪くないと、悪いのは他人だと、自分は被害者だとそう言っている。
今の自分を棚に上げて。
土間舞花がスコップを大きく振りかぶる。
流石に不味いと思い、一気に駆け寄りスコップを抑えた。
そして、言った。
悲劇のヒロインを気取っている、自己保身の塊に。
たっぷりの皮肉を込めて。
「裏切られた人が裏切るって中々傑作っすね」
グダグダですね、申し訳ない(汗)




