No.17 Burial ~友情~
適切ではない表現があるかもしれませんのでご注意ください。
ザクッ
ザクッ
ザクッ
何かの音が聞こえる。
頭が痛い。
まるで何かで殴られたかのような鈍い痛みを感じていた。
痛みで思考が邪魔されている。
なんとか痛みを堪えて音に耳を向けてみるとそれが土を掘っている音だということがわかった。
「あ、もう起きちゃったんですね。思いっきりやったはずなんですけど……」
目を向けた先にいたのは土間さんだった。
土間さんは汗を拭い、髪をかき揚げてこちらを向いた。
その目は虚ろでおよそ正常なものではない。
「なに……してるの?」
何をしようとしているのかはわかっていたが聞かずにはいられなかった。
私のこの想像を否定して欲しい。
そんなことを思って。
「何をって、穴を掘っているんです。先輩を埋めるための穴です」
その言葉で私の想像が間違っていなかったことを確信した。
「本当は咲たちみたいに埋めた方が楽なんですけど、魔法を使うと痕が残るそうじゃないですか。だから穴を掘って埋めることにしたんですよ」
「!?」
『咲たちみたいに』って、まるで土間さんがやったような言い方じゃないか。
「はい、そうですよ。私がやりました」
あっさりとそう言った。
私は驚愕を隠せない。
だってあんなに悲しんでいたじゃないか。
あれは嘘だったのか。
「な、なんでそんなこと!」
「裏切られたんですよ。親友だと思っていたのに」
裏切られた?
それで殺したのか?
「親友だと思ってましたよ。少し前までは。前に私の過去の話しましたよね?あの時、咲と陽君に助けられて本当に嬉しかったんです。あれ以来、私たちは親友で仲良しでした。」
土間さんは咳がきったように話を始めた。
「あの二人は特別な存在でした。私を救い出してくれた。特に陽君は特別でした。格好よくて優しくて頼りになって安心できる。そんな彼を私は好きになったんです。そして、告白しました。断られたら死んでしまおうかと思ったくらいでした。でも、陽君は私を受け入れてくれたんです」
話している土間さんはどこか嬉しそうだ。
「順調でした。今まで辛いことがあった私に神様がくれたご褒美だって思いました」
でも、と声の調子が下がる。
「ある時から咲と陽君は私の知らない所で何かをするようになったんです。学園を同じ日に休むこともありました。私は怪しいと思って陽君に詰め寄りました。でも、陽君は何も話そうとしなかった。秘密だと言って笑っていました。
「あの日学園を休んだ陽君の後をつけていった時、何をしていたかわかりました。陽君は咲と会っていたんです。楽しそうに笑っていました」
土間さんの表情に笑顔が消える。
「あの後のことはあまり覚えていないんです。かっとなって気づいたら陽君を殺してました」
私の脳が警鐘を鳴らしている。
これは危険だ。
この子はどこかで狂ってしまったのだ。
おそらく人を殺すことに抵抗がなくなっているだろう。
逃げようと思ったが、手足を縛られていて身動きが取れない。
人気も全くなく、声を出しても誰も助けに来てくれないだろう。
私は頭を働かせる。
考える。
私にできること、助かる方法を。
頭の痛みが邪魔をするが関係ない。
考えて考えて、夜実ちゃんとの魔法の特訓のことを思い出した。
そういえばあの特訓の中に魔法による意志疎通の方法があったはずだ。
ある魔法を使ってある程度遠くにいる人に伝えられるというものだ。
あの時は全然できなかったが今ならできるはずだ。
魔法の練習は欠かさずやってきた。
私は魔法を使うために集中する。
伝えられる距離には限度がある。
もし、その距離の間に誰かがいなければ終わりだ。
だけど、やらないよりはいい。
「陽君を殺してしまって途方に暮れていた私にあの人がこの魔法を授けてくれました。君は悪くないって言って……。その後、咲を埋めました。この魔法で」
お願い!
誰か届いて!
私は必死に魔力を送る。
誰かが気づいてくれることを信じて。
「って、先輩聞いてます?自分から聞いておいてそれはなくないですか?」
穴を掘っていた手を止めて私に近づいてくる。
そしてーー。
ガンッ!!
と持っていたスコップで殴り付けてきた。
「うっ!」
私は咄嗟に手で頭を覆った。
頭は守れたが今度は体をスコップで叩かれる。
痛みで感覚がおかしくなりそうだ。
「先輩に頼んだのは!失敗、でした!ああやれば容疑者から、外れると思ったんですけど!まさか、こうなるなんて!」
スコップを振りかぶってひたすら叩く。
親友に裏切られた怒りもぶつけるようにひたすら叩いているようだった。
「私は悪くないです!悪いのは、他の人です!」
スコップで叩かれている音が断続的に続いている。
叩かれて叩かれて叩かれて叩かれて。
叩かれる度に感情が伝わってくる。
憎悪が悲しみが嫉妬が後悔が。
色んな感情がスコップを通して伝わってきた。
だけどそれに私は答えることはできない。
何も知らない私が返せる言葉はない。
視界がぼやける。
意識も薄れてきた。
瞼が落ちてきたその時、ずっと続いていた音が止まった。
「裏切られた人が裏切るって中々傑作っすね」
ぼやけた視界に映ったのは降り下ろされようとしているスコップを片手で押さえてシニカルに笑っている千藤さんの姿だった。
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