No.15 Burial ~魔力の痕~
後で修正するかもしれません
今までのものも含め
「残念だが、現時点で堀峰咲が最も疑わしい」
堀峰さんについての報告をした私に待っていたのは最悪の展開だった。
「な、なんでですか!?魔力痕はなかったんですよ!?」
思わず声を荒げてしまった私を制しながら月岡先輩が続ける。
「ああ、確かに無かった。千藤からの報告にもそうあった」
「だったら何でーー」
コンコン
と執行部室のドアがノックされた。
すまない、と私に言って月岡がノックに答える。
「どうぞ」
「失礼しますね」
入って来たのは黒いスーツを着た男性だった。
身長が異様に高く、長い髪は腰辺りまで伸びていて端整な顔立ちと相まって女性のようにも見える。
「おや、この子は?」
私を見て何か疑問に思ったのかそう質問した。
「新しい魔法少女です。報告書を挙げたはずですが……」
「あぁ、すみませんね。私、忘れっぽいもので」
頭を掻いて笑う男性。
いったいこの男性は何者なのだろうか。
戸惑っていることを察したのか月岡先輩が説明してくれた。
「砂々森、彼は魔法協会の真地水色さんだ」
「どうも、真地です。よろしく、可愛いお嬢さん」
「ど、どうも」
魔法協会。
確か魔法少女を監視、管理する組織だったはずだ。
夜実ちゃんに魔法に関する知識を教えてもらっていた時に聞いた記憶がある。
この執行部も魔法協会の指示のもと動いているらしい。
独断で動くこともあるらしいが。
とりあえず、真地さんが手を差し出してきたので握手をした。
なんか独特な雰囲気の人だ。
周りにこういうタイプの人がいなかったからどう接していいかわからない。
「あぁ、ごめん。こういうのってセクハラになっちゃうんだっけ」
気を付けるよ、と言ってまた頭を掻く。
そして、月岡先輩の方へ向き直り咳を一つして話を切り出した。
「こっちで調べてみたけどやっぱり無かったよ」
「そうですか」
無かったとは何のことだろうか。
そういえば、何で魔力痕が無かったのに堀峰さんが容疑者なのか、真地さんが入ってきたから話は途中で途切れていたけれど、その理由をまだ話して貰っていない。
「あの、何の話ですか」
何か重要な話のようだが魔法に関する話なら私にも知る権利はあるはずだ…………たぶん。
「魔法協会にある調査を頼んでいたんだ」
「ある調査?」
「ああ、容疑者とその周囲の魔力痕についてだ。流石に私たちだけでは足りなかったからな」
私たちに指示を出しつつ、そんなこともやっていたらしい。
「それで、どうだったんですか?」
「魔力痕が見つからなかった場所があった」
「?見つからないなら関係ないんじゃ……」
「見つからなかったんだよ。現場から」
「現場から……」
そうか、被害者を埋めるのに魔法を使ったなら魔力痕が残ってないとおかしい。
「ああ。現場の魔力痕だけじゃない、その他の場所でも魔力痕を意図的に消した痕跡があったんだ」
「千藤君からの報告なので間違いはないと思ったんだけど、一応我々で調べたんだよ」
証拠隠滅を図ろうとしたのだろうか。
いや、でも犯行の内容から魔法少女が犯人だということはわかるのに意味があるのか。
「犯人が特定されるのを恐れたのだろう。魔力痕で使用者が分かるからね」
私の疑問に答えるかのように真地さんが補足をしてくれる。
でも、それこそ何で魔力痕だけを消したのだろうか。
魔法を使えば遺体を見つからなくすることだって出来るだろうに。
現に遺体は見つかって魔法少女が犯人だと疑われている。
いくら痕跡を消したところで特定されるのは時間の問題だ。
あんなことを出来るのは固有魔法しかないのだから。
「それでさっきの話と繋がるのだが。堀峰咲には過去何度か私たちが接触していたんだ。魔法少女の兆候があったのでな」
この前の容疑者リストはその魔法少女候補だった人たちらしい。
魔法少女にはならなかったけど兆候があった人たち、その人たちの誰かが魔法少女に目覚め犯行を行った、執行部としてはそう判断しているようだ。
「だが、報告では堀峰咲の周囲の魔力痕が消えていた。他の候補者の魔力痕は消えていなかったのにだ」
犯行現場の消えた魔力痕、そして候補者だった堀峰さんの消えた魔力痕。
共通点が確かにある。
しかも堀峰さんは今失踪中だ。
これは疑わない方がおかしいのだろう。
「我々も堀峰咲さんの行方を探しているのだけどまだ見つかっていないんだよ」
真地さんが肩を竦めて言う。
お手上げといった様子にも見える。
「砂々森には悪いが、堀峰咲を探し出すのに協力してくれ。今度は行方不明者ではなく、容疑者として」
月岡先輩のその言葉が重く私の中に響く。
私はしばらく何も言えずに立ち尽くしていた。




