表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

明日の幕開け

読んで下さるとうれしいです。

 「大きく息を吸ってください。」そんな言葉を聞くと佐伯さいき 柚希ゆずきはゆっくりと息を吸い、はいた。病院の外はいつもと変わりはない。白色の車を止めたその横で、柚希の父の博一ひろかずが煙草を吸いながら柚希を待っていた。

 「はい、今週は異常なし。今月分の薬の量は減らしておきますねー」

「ありがとうございます。」柚希は少しはにかむと、父のいる駐車場までゆっくりと戻っていった。途中、歩いてくる柚希に気づいた博一は急いで吸っていた煙草を踏みけしてエチケットポケットにしまうと、車に乗り込んだ。

 車を走らせると、博一はゆっくりと口を開いた。

「どうだったんだ。」

「なにが。」

「なにがじゃないだろう、高校はしっかり通えそうなのか。」

柚希のそっけない返事に腹を立てた博一は、早口で会話を進めた。

「今週は平気だって。あの苦い薬も減らしてくれたし、高校は春からしっかり出れそう。」

「そうか、よかったな。」

「うん。」

それ以上の会話はなかった。その後柚希は目を閉じ、眠りについた。

 柚希は中学の時、いじめにあっていた。人より少し良い容姿のせいでもあるのだろうか、初めは小言のような陰口であったがその後エスカレートし、中2の夏に発作を起こして病院に搬送された。軽い心臓病で命には別状はないが、ストレスや過労で起こってしまう不整脈であった。すぐに退院した柚希であったが、それが何度も続き生活に異常をきたすために、中学を卒業し進路を決めた今でも病院に通うことになった。高校は少し離れた私立にし、柚希に新しい一歩をきってほしいと両親も意気込んでいたのだった。

「着いたぞ。」

目を覚ますとそこは家で、柚希は目をこすりながら車を降りた。

柚希が家に入り母の侑子ゆうこに診療結果を報告すると、侑子も嬉しそうに笑いながら夕食の支度に戻っていった。

「さっき莉奈りなちゃんが心配してお家まで来てくれたのよ、電話してみたら?」

侑子は思い出したように言った。

黒崎莉奈は柚希が小学校の頃一番仲良しだった女の子で、元気でムードメーカーのような女の子。卒業し莉奈の中学受験で別々の中学に行かねばならなくなった時は、二人で大泣きするほどだった。柚希がいじめを受けていると知った時も、病院に運ばれた時も一番に心配してくれたのも彼女で、高校は同じところに行くと約束もして、春からまた一緒にいられることになった。

「じゃあ、電話してくるね。部屋行ってくる。」

莉奈の名前を聞くと途端に元気になり、足早に自室へと向かっていた。そして、もはや覚えてしまったその番号に電話をかけた。

「あ!柚希、平気だった?」

元気すぎる声に、柚希はさらに笑顔になる。

「当たり前じゃん、ありがと。明日の学校はこの間話したところで待ち合わせ?」

「そうそう、よろしくね。楽しみにしてる!」

そのあとも何十分か話し、それから電話を切った。柚希には明日からの未来がキラキラとしていて、まぶしいくらい素敵に思えた。中学でできなかったことをたくさんしようと意気込んで、いつもより早く就寝した。柚希の思いもよらぬ高校生活が、刻々と近づいていた。

一話、まだ高校生活の寸前ってところでしたね(笑)

これから書いていくのが楽しみです。感想や意見等ありましたら、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ