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惹く

作者: ゆっこ

ねえ


ねえ、どうしたら


どうしたら私を好きになってくれるの




「…っふ」

我慢できなかった嗚咽が口から漏れる。涙が顔を滑り落ちる。

もう限界なのだ。あの人を見るたびに、蓋をしていた自分の想いが顔をだす。



あの人はあの子を想っているのに



入学してから数ヶ月たったある時、放課後、グラウンドでいつも走っていたあの人を見た。カモシカみたいと思ったのは、我ながら的を射た言葉だ。

あの人が走っている姿は自分のクラスからよく見えた。いつからか放課後、教室からあの人の走る姿を見るのが習慣となった。友達曰く、となりのクラスのちょっとした人気者だそうだ。割と整った顔であり、運動もできるから女の子にモテるらしい。友達から、そんなに気になるなら今度話しかけなよと言われたが、人見知りな自分には無理だ。別にそこまで気になるわけじゃないし。


二年になると、運よくあの人と同じクラス、隣の席になった。その時は、驚くと同時にとても緊張した。あの人と初めて話をしたのは、文化委員で一緒になったときだ。あの時はあの人からよろしくねといわれただけ嬉しかった。一気に気分が舞い上がった。それから委員で度々一緒になる機会が多くなり、自然と仲良くなっていった。あの人はよく笑うし、話上手だ。話していてとても楽しかった。


しかしある時、教室であの人が知らない女の子とキスしているところを見てしまった。ちょうど忘れ物を取りに教室に戻ろうとしたところだった。偶然見てしまった私は、とてもショックをうけた。そして胸が痛かった。


そのとき自分の想いに気づいた。

ああ、私はあの人に恋をしていたのだと。


自分の心に気づいた私は心に蓋をした。なぜならあの人には想う女の子がいるからだ。勝ち目はない。家に帰るとベッドに直行した。


次の日、クラスにいくとあの人の姿があった。前日のこともあり、なんとなく気まずく、顔を見れなかった。それからあの人を避けるようになった。自分の心から逃げた。しかし教室であの人を見る度にひどく落ち着かなくなり、話し掛けたい気持ちが高まった。でも度々廊下であの日の女の子と一緒にいるのを見た。見る度にその女の子を羨ましいと思う自分がいた。


ある日文化委員で一緒の作業をすることがあった。暫くしてあの人が、なんだか久しぶりだねと言った。私はそうだね、と無難な返事しかできなかった。しかし、あの人への想いは胸でまだ燻っていたので、思い切ってあの日の女の子ついて聞いてみた。そしたらあの人はどこか遠いところ見据えてこう言った。


俺の彼女だよ、と。


その時、あの人の目尻が少しだけ下がった。その顔を私は一度も見た事がなかった。予想はしていたが、ショックであった。ズキズキと痛む胸は抑えながら、その日は他愛ない話をして終わった。


彼の口か聞くとここまでショックを受けるものなのか。ひどく胸が痛く、目から涙が零れ落ちるのが止まらなかった

恋というのは、こんなにも苦しく、胸を締めつけられるものなのか。


どうやったらあの人は私を見てくれるだろうか。どうやったら私を好きになってくれるのだろうか。なにをしたら、あの人に好きと言ったら、

そんなことが頭の中で駆け巡る。


初めて恋をし、初めて恋の苦さを知った高校二年生の時だった。






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