俺の魔法を使う夢が・・・・
手から火の夢が・・・
さて、森を出て一路リナたちの家族が暮らす街に、ペットに乗って空から移動中。
時間も出来たのでこの世界について、二人に聞いてみた。(一応、説明して貰うため、大きな鳥に擬態したバドに乗り移った。)
そして、次の事が判明した。
ここは異世界サイファード
自然界全てが魔素という、大気に覆われた世界
町や村は特殊な古代遺跡からの発掘品であるオーパーツと言われる神級魔道具と魔道製造師と言われる者たちによって一から作られた新たな魔道具、そして魔法陣を組み合わせた結界によって護られている。
魔法という概念があるためか、至る所に地球と違う点が見受けられる。
一つ、魔素が体内に入り込み魔物化した者や物がいる事
一つ、天使や悪魔と言った魔力を使う事に長けた種族がいる事
一つ、勇者や英雄と言った者達が国を造り大陸で覇を競っている事
一つ、浮遊大陸があること。
一つ、魔道具で作られた武器や道具、乗り物があること。
一つ、瞬間移動できる扉があること。
一つ、通貨の概念が無く、宿に泊まるにしろ物を手に入れるにしろ、基本物々交換であり主に色々な物に魔道具によって変化させられる魔石(魔物が死ぬと血と共に吐き出す核で、その大きさと輝きで使われる事の幅や量が広がる)を渡してその品の良し悪しを見極める鑑定水晶により泊まれる部屋や手に入る物が違う。更に、各町村に置かれた神への貢物入れと呼ばれる水晶に魔石を触れさせれば、魔石の代わりに野菜や果物、その他今自分の欲しいと思う物(人や奴隷は論外)とその魔石の大きさと質に応じた物を交換してくれる。そして、その交換された魔石が再び魔素となり、大気に戻ることで世界のバランスを保っている。
一つ、基本皆魔力があり、住んでいる場所の近くの魔法戦闘員養成所<魔戦所>に通い、日々の生活をする為に必要な魔物や盗賊などから身を護るための戦闘力を上げる努力をしている。(盗賊は金を奪うのではなく、純粋に殺しや追剥、凌辱目的で人や亜人を襲う。稀に盗賊を襲う盗賊ー義賊ーもいるらしい。)
など等・・・挙げ出したら限がない。
さて、ココまで聞いた限りでは魔力が無いと生活も苦しそうだな。(普通なら)
「なあ、魔力があるかどうかはどうやって調べればいい?」
その俺の発言はどうやら爆弾だったようで。
「あのー?今までの戦闘では当たり前の様に私たちとは何処か違う力を使っていたので、驚く気にもなれませんでしたが、ここまでの説明に感心している事で改めて疑問に感じました。総司様は本当にこの世界の人ですか?桁違いの能力もそうですし。別の大陸に行った事のあるという商人の話では金属に囲まれた街もあるそうですが・・・。もしや、そこの出身とか?・・・いや、それでもこの世界全体が魔素に覆われているのに、その影響を今まで受けて無いという事はおかしいですね。」
とそれからも、レナは何やらブツブツと考え始めた。その隙に、リナに聞く。
「なあ、どうやって調べるんだ?」
「え?・・・ああ、それは簡単ですよ。魔道具は基本、魔力を通して、その刻まれている魔法陣の効力を引き出す物です。なので、魔道具を使えるかどうかを確かめればいいです。魔力自体を調べたいなら鑑定水晶が各町村の教会に有りますから、簡単にわかります。・・・あ、一応言っておきますが、あまりに低すぎると馬鹿にされるかもしれないですが、一々そんなことを聞いてくる人もいませんから、言いふらさない限り分からないから、安心してください。特に私たちは、貴方様に助けられて、貴方様の従者になったのですから、言って置いてくれればフォローもしますし、いう事も聞きますから。・・・はい。」
そう言って、森で作った鑑定用魔道具(外見はルーペ)を俺に渡してきた。
そして、試にポチを見ようとしたが・・・。
「・・・使えない・・・。」
「「・・・・」」
・・・この沈黙が痛い。 ここで一句
ま・ほ・う・りょ・く
い・せ・か・い・しゅっ・し・ん
ぜ・ろ・で・し・た
何故か字数が合ってしまうのが余計に痛い(泣)
その俺の表情で、心の中を悟ったのか、レナが
「ま、まあ。魔法が使えなくてもあれだけ強くて、ポチちゃんとかもいるんですから、生活とかに困ることは有りませんよ。それに、私たちもフォローはするんですから、大丈夫ですよ。」
と、慰めの言葉を掛けてきた。
うん、やはり美少女は優しいのが基本なんだな。・・・けど、その優しさが逆に辛い。
だってそうだろう!?
地球出身者なら、誰だって一度は魔法を使ってみたい筈だ。
風を操って女の子のスカートを捲ったり(透視でそれ以上が見れた)、夏に自前の氷でかき氷を作って出店で売ったり。雨の日は傘要らず(俺の場合は普通に要らんかったけど)、暑い日はクーラー要らず(これも同じ)。・・・夢が広がるシチュエーションだ。
それが不可能になった、この脱力感はどうすれば・・・。
・・・・!そうだ、この世界の魔法陣を勉強して、ポチとバドに魔力を使って実験させ、クーラーやヒーター、冷蔵庫や車。そんな物の代りを作ったら、地球と同じような生活が出来るじゃないか。
そうと決まれば話は簡単。
「レナ、リナ。この世界に魔法陣を研究する学校ってある?研究所でも何処でもいいけど。出来れば誰でも歓迎って所でお願い。」
そう言って見たのだが・・・。
「残念ながら、ガッコウと言うのは有りませんね。それに近いのが魔戦所ですが。第一、この世界では情報というのは魔石さえあれば入手出来る物と言う認識なのです。ですから、魔方陣の事を知りたいなら、その資料を魔石と引き換えに水晶から取り出すのが普通です。例えば、火を起こす魔法の魔法陣を知りたいなら、・・・恐らくですが、この位の大きさと輝きの魔石が必要でしょう。」
といって、森で集めた中でも結構大きめの白い魔石を取り出すと、水晶に触れさせる。
すると、魔石が粉々になり、代わりに水晶から魔法陣が描かれた本が出てきた。
・・・何度見てもこのメカニズムは分からんな。神の扱う技術を理解しようとしても無駄なのか?
取りあえず、本を受け取って、見てみるのだが・・・。
「読めないんですけど?言葉を聞き取るときの丸い薬みたいなのは、読むときはまた違うやつが要るのか?」
俺の質問に
「あ、はい。えっと・・・これでいいですね。」
とレナが答えて、再び魔石(今度は同じ色の小さい魔石だ、基準が分からんな。)を触れさせて、聞き取りと同じような丸薬を取り出した。
「はい、これで読める筈です。」
と、渡された丸薬を手に取り、口に填めて飲む。・・・これでいいのか?
「あと、魔法陣を刻む為の説明書みたいな物も出せるか?
「ええ、それなら唯の紙ですから小さいもので行けます。」
今度は豆粒サイズの紫の魔石を出した。・・・あんな小さい魔石を吐く奴もいるのか、ゴッキーみたいな奴かな。
などと下らん事を考えている内に、再度魔石から本に変えられた説明書を見る。
すると・・・。
「おー、原理は分からんが、読めるぞ。なになに?・・・」
結果
魔道具の魔法陣にもたらされる魔法の効果は新しい物に限っては刻む時の刻む者の創造と意志が反映される。
魔法陣に刻む新しい模様の効果は早い者勝ちである。
また、違う効果の物でも模様が既存の物ならばどんなに強く刻もうが模様として現れない。
魔力の籠った字なら誰が作っても認められる。(魔力の宿ったペンを用いれば、魔力の極わずかな者にでも可能)
原則として、模様は重ねられない。
物体に刻む場合は、外気に触れたり、戦闘で傷が付かないように内側に刻むのが望ましい。
例外として、召喚魔法の様な血の契約を介する場合の物は召喚者と召喚される者の同意があれば既存の物でも可能。
奴隷の首輪の場合は魔法陣と奴隷の心臓(魔物の場合は核の)がリンクしているので、専用のカギか魔法陣、主の血でしか無効化されない。(新たに作れば別)
ここまで見る限り、もう粗方の模様は試されていそうだな。・・・新たに作るにはよっぽど複雑にするか、奇をてらってかなりの簡単な模様にするか、もしくは・・・。
「レナ、先ずは魔力ペンを出してくれる?無かったら水晶で出して。」
「?はい・・。・・・これです。」
そういって、バックからゴツイペンを出してきた。
「・・・まさか、この中に魔法陣が刻まれてるの?」
その質問に、レナが苦笑しながら
「ええ、普通の人なら指先から魔力を出しながら魔法陣を書くのですが、魔力を外に出せるほど魔力の無い人はどうしてもそういう感じの大きな物になんです。それでも、色々と頭の良い方たちが研究した結果なんですよ。私が生まれた当初はまだ水晶からの物に頼っていたので、その倍くらいの物でしたから。」
・・・この倍って・・・これでもジュースの缶位あるぞ・・・。
・・・・あ、なるほど。何となく作り方は分かったな。
「で、この中はどういう魔法の魔法陣が刻まれてんだ?」
「大気中の魔素を取り込んで、発動する物です。持ち手の処の出っ張りを押さえながら書くことで魔法陣が完成し、魔素を魔力に変換し、大気や物に刻まれます。」
ふーん・・・。
そんなレナの説明を聞きながら、俺は自分の影の心臓部に心臓の絵に似た模様を描いていた。そして、効果は分身体、魔法の種類はもちろん影。俺の影だから、当然魔力も要らないし、能力もある。少し血を垂らしたら魔法陣が発動するだろう。現に今描けているのだから。
「これでよし、これで後は・・・。」
と少し風の力で薄皮一枚の切れ目を親指に入れ、血を滲ませると影の魔法陣の部分に垂らす。
すると・・・。
「・・・よし、思った通りだ。影分身体完成!」
そう、出来上がったのは影が等身大に実体化した物。
当然黒いので人には見えないが、能力は使えるし、此方(影の)の攻撃は通用する。
一見無敵の様にも思えるが、実は実体が無いだけに軽いし、斬られると魔法陣が効力を失うので消えてしまう。ただ、奇襲と囮には効果は絶大だ。犠牲は血だけなのだから。
その光景を見ていた二人は唖然とした表情で
「・・・そんな発想今までしたこともありませんでした。」
とリナ
「・・けど、実際、代償に比較して、効果が大きい物ですね。これは召喚系の、それも個人タイプの魔法陣になるでしょう。あとは、個々人の魔力でどうなるかですね。魔力の大きすぎる人が使えばどれだけの消耗で、どれだけの人数を作れるかのよって変わります。他の・・・」
とレナが何かを言いかけた所でバドが速度を緩めた。
?着いたのか?えらい早いな。まだ半日経ってないぞ。
そう思って聞いてみると。
「えーとね。リナ姉ちゃん達より魔力の小さい女の人が数人、変な生き物に乗ってにげてて、後ろから少し大きな魔力の人たちが倍くらいの人数で追いかけてる。どうしようか?パパ。」
うーん、状況的に盗賊と被害者だな。・・・お、いい実験台になるな。
「よし、実戦で具合を確かめよう。バド、影が出来る位に高度を落としてくれ。」
「はーい」
そして、後の従者三号との運命的(笑)な出会いをした。