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4属性使い対風の牙

戦いの口火を切ったのは先ず、<風の牙>リーダーのシンだった。

「<大気に蠢く風の精よ、汝と契約せし我に力を<<ウインド・ブレット>>>」

風の精霊に自らの魔力を渡し、その魔力分の威力をもたらす精霊術師の基本戦術。

その中でも先ずは小手調べとばかりの下位魔術。


「幾らなんでも効かないんじゃないですかー?相手はあのターリスですから。」


そう否定的に今放ったばかりの精霊術に文句を付けるのは、<風の牙>の頭脳と言われる魔法士ロイド。


「・・・・」


案の定ゾンビ化したターリスは、目の前に土の壁を出し、下位魔術である風の弾丸をいとも簡単に無効化した。


「ほらー、全然堪えてませんよ?ゾンビだから分かんないですけど。」


と、さも当然の様に結果を説明した(言われなくても見えているのだが)


 このロイドは精霊術は使え無い物の、風に関しての魔法、魔法陣は団員の中では一番と言われる魔法士だ。


「じゃー、どうしろってんだよ。俺達の中で火の魔法が使えるのは俺とお前とエリスだが、幾ら三人で同時にやってもターリス相手には効かねえぞ?」


「そーだよー。ロイドの先手必勝で先ずはデカいのってのも良いけど、相手がゾンビの今はどう防ぐか分かんないんだから取りあえずはそこそこ早く出せる魔術で様子見しない?」


そういって、シンの行動に賛同して、火の下位魔法<ファイア・ブレッド>の準備をしているのは<風の牙>の紅一点。風魔法と火魔法を左右の手から同時に出せるのが売りの魔法士エリス。


「ほら、同時に行くよ?カイン」


「分かった、姉さん」


「フレイム・ブレッド」

「アイス・ブレッド」


今度は火炎と氷の魔法で同時に攻める魔法士姉弟。


・・・しかし・・・。


「・・・・」


この攻撃はそれぞれ火炎には水、氷には火を以て相殺される。


「あー、やっぱダメかー」


「うーん、どうしよう・・・やば!何かしてくる。<アイス・ウォール>」


今度はターリスから仕掛けてきた水と土の合成魔法<マッディー・ストリーム>をカインが氷の壁を出して、何とか防ぐ。


「くそ!やっぱり一人で四つも扱えると応用が効いて便利だな。・・俺も練習するべきか?」


「もう、今はんな事考えてないで手を緩めるな!どんどん来てるよ!?」


その通り。


今度は火と土の合成魔法<マグマ流星群マグシュースター>を放ってきた。


「うわっ!今度のはヤベーぞ。おーい、周りの奴も一時後退だ!ゾンビ共を放り込んで逃げろー!」


放たれたマグマの雨に、シンはたまらず後退を指示したのだが・・・。


「えっ!・・・ぐあああああ!」


「あちーー!」


「きゃーー!服がーー・・って、足も溶けてるー!」


そこには阿鼻叫喚の地獄が広がっていた。


「やべーな。今ので向こうのゾンビも減ったが、それ以上にこっちの実力者が死んでゾンビになりやがってる。このままじゃ、犠牲者が増える一方だ。」


「ねー。一か八か、アイツと同じ魔法で対抗しない?もしかしたら突破口が開けるかも?」


「アホなこと言うな!相手は疲れを知らんゾンビだぞ?無謀にも程があるだろ!」


「んなこと言ったって、この状況で他にどうしろってのよ?・・・って、ヤバ!あいつ、この状況で、撚りにも依って水の魔法使おうとしてるわ!」


そのエリスの言葉を聞いても何のことか分からないシンだが、ロイドは分かったようでシンに説明する。


「分からないんですか!?下にグツグツ煮え滾ったマグマ、上から大量の水、そして周囲には既に死んでいるゾンビと生きている俺達。アイツは周囲を巻き込んだ水蒸気爆発を起こそうとしてるんですよ!・・・早く風の加速で逃げますよ?今ならまだ間に合います。・・・皆!<風の牙>のロイドと言う者です。死にたくなければ早急にこの場から離れなさい!この周囲は間もなく熱と冷気のぶつかり合いによる爆発が起こり、離れなければ巻き込まれます!・・・以上!」


その説明を聞いた戦闘員は、その切羽詰まった声に状況のヤバさを察したのか、皆お互いが邪魔にならない位の間隔で四方に散った。

・・・そして、それは起きた


ドーーーーーーーーーーン!!!  ジュワーーーー!!


「ぐああああああああ!!」


「ぐあ!何だこの熱風は!」


「あちーーーー」


「ヤベー!風を操られて、逃げ切れね・・・・ぎゃーーーー!!」



そして、熱風と爆発が去った後にはゾンビは数を増し、戦闘員はその数200余りと、最初の半分以下という状況になっていた。


そして、吹き飛ばされた者の中に<風の牙>も含まれており・・・。


「おい・・・生きてるか?皆。」


「何とかね。途中で全員が風の障壁を張るのが見えたから、皆無事の筈よ。」


「「はい、何とか生きてます。」」


それぞれ、生きてはいるようだ。


「さて、どうするか。正直、4属性を使いこなせる奴がここまで厄介だとは思わなかった。」


「はい・・。俺も同感です。こうなったら、シンさんは炎の大精霊グランチャーマを呼んでください。俺は風の上位魔法<グランベット・ハリケーン>を使って、グランチャーマを火の通り道を作ります。エリスとカインは氷と風の合成魔法<ニーベ・テンペスト>で、どうにかして足止めをしてください。」


「・・・それしかなさそうだな・・・。」


「そうね。これが効かなかったら、ハッキリ言って打つ手なしだわ。」


「・・・だね。」


「よし、行くよ?<大気の・・・」


「分かった。<大気に・・・」


二人が同時に詠唱を始め、同時に終わると。


「「<ニーベ・テンペスト>」」


その言葉と同時に4人の目の前に、雪で無く氷の嵐が吹き荒れて瞬く間に下のマグマと地上のゾンビを飲み込んでいった。


「よし。なら最後の攻撃と行くか。<我、汝と契約せし者。名をシン・クロー。偉大なる炎の大精霊グランチャーマよ、今こそ我が呼びかけに応え、我が前に立ち塞がる愚かな子羊にその地獄の業火を纏いし姿を顕現させたまえ。<<出でよ、グランチャーマ>>>」


シンの詠唱が終わる頃、丁度ロイドも準備を整えていた。


「<・・・グランベット・ハリケーン>」


その声と共に風の竜巻が指向性持って<風の牙>とターリスの間に風の道を作る。


そして、<風の牙>の面々の前に炎で出来た髭を蓄えた初老の厳つい男と言った感じの炎の大精霊グランチャーマが顕現し、契約者であるシンに話しかける。


<久しいなシンよ。>


そういって、辺りを見回し一言。


<この状況で俺を呼び出して、どうしろと?>


その言葉に苦笑しながらシンがターリスを指し。


「奴を原型が無くなる位まで溶かせるか?」


そう言われ、不服とばかりに大精霊が鼻を「ふん!」と鳴らし


<誰に言っておる、ワシは炎を司る精霊ぞ。その様なことは片手間で出来るワイ。・・・見ておれ!>


グランチャーマはそういうや、片手を伸ばし、ターリス目掛けて炎の渦を槍の様に尖らせた物を飛ばす。


ゴォーーー!!


「・・・・」


その攻撃にターリスも一瞬遅れて反応し、土の壁に溝を作りそこに水を流した即席の滝を作ると、その上に上がる。


ジュッ・・ドーーン!


炎の槍は一瞬で滝の水を蒸発させ、高熱の壁に変えるが、ターリスはその高熱の土壁を使用して、風魔法で岩を作り、それを熱して再びマグシュースターを放つ。


「くそっ!この繰り返しはヤバいぞ!何とかならねえか!?」


<ふむ、少し荒っぽいが、逆に奴の周囲をマグマに変えればよいか?>


「お!そりゃーいいな!早速頼む、そろそろ俺の魔力も限界だ。これで終わらんとお前を送還しなきゃーなんねえ。・・・頼む!」


<分かった>


そういうと、グランチャーマはしばし瞑想し、両手を前に出し、カッ!と目を見開くと


<出でよ、我の分身!>


そう発した後が凄かった。

ターリスの頭上に数千と言う数の溶岩の雨を降らせ、辺りをマグマの海に変えたのだ。


「・・・・・」


ターリスも始めは上に水と土の合成魔法<ウォーターロックウォール>を出して防いでいたが、数の脅威は覆せず、遂にマグマに飲まれて溶けて行った。



「・・・・」


「・・終わったのよね?」


「ああ、ターリスはな?」


「・・・まだ、死霊術師が残ってるが、援軍はまだか?」


<おい、シン。ワシはそろそろ限界の様だから、後は自力で何とかせいよ?・・・死ぬなよ?>


そういって、グランチャーマは精霊界に戻って行った。


その時。


「あーあ、あのニンゲンも結構減らした様だけど、こんなにマグマばかりにしたら後が大変じゃないか。俺がマグリノさんに叱られるんだからなー?ちゃんとしとけよ。・・・ま、溶けてなくなった奴に言っても仕方ないか。・・・・おい!そこのニンゲン!今度は俺様が遊んでやるから光栄におもいな?俺様は死霊使いマグリノ様の配下。死霊術師が一人アインだ。マグリノ様は遠くで見てらっしゃるから精々頑張って抵抗して、楽しませてくれよ?」


そう言うや、アインが手を水平に薙ぎ払うと


ズシャ! ズシャズシャ!!


戦闘員に粉々にされ、土に還った筈のゾンビが復活してきた。


それを見たシン等は


「な!粉々でも駄目だってのか?!」


「せぇーかーい。正しくは火で溶かすのみが解決方法でーす。・・・ま、この復活方は死霊術師自らがやる必要があるから、本来のゾンビ退治の方法は君らが知ってるやり方でいけるよ?今回は相手が悪かっただけ。それじゃー第2ラウンド開始と行こうか?」


こうして、疲弊した戦闘員は、そのまま次の戦闘に入って行った。


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