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邪神の戯れと死霊使いマグリノ



~~~~~~~~~~~~~~~浮遊大陸のとある島~~~~~~~~~~~~



総司たちが初めての遺跡を満喫していた時、浮遊大陸では邪神の復活とそれに伴う軍勢が編成されつつあった。

その昔、堕ちた女神の名と共に地上界から結界によって浮遊大陸の今の場所に討伐された後、封印され、数千年の時を経て、人間の女性に乗り移った邪神は、その女性の意識を残しながら乗っ取ることに成功し、総司と同じ世界の知識を得ることになった。

 そして、その邪神が目覚めた序に余興を始めたのだった。

 「うーむ。地上を制圧するにしても、イキナリ殺したのでは面白くない。啓子、何かいいアイデアとやらはあるか?」

 「うーん。徐々に苦しめて、恐怖を煽るんなら、殺しても死なないゾンビを使える悪魔を近場の町に差し向ければ?アンタの知識に由れば火属性の攻撃か回復魔法で倒せるらしいから、最初にしては面白いんじゃない?」

 「なるほど、苦しめるのに段階を踏んで、徐々に精神的に弱らせるのか。良い案だ。なら・・・マグリノ!」


邪神(啓子)に呼ばれて出てきたのは黒いマントを羽織った骨で、眼だけが異様に光っている、何とも不気味な悪魔だった。

 「お呼びで?」

 「ああ、ちょっくら地上の虫けらと遊んできてくれ、先ずは近場の村に行って、素材になるニンゲンを殺して、町4つ分位の死体を作ってお前の特異な死霊術を破れる奴が出るか、村2つ分の死体を如何にか出来る奴が現れるまで貪り尽くせ。地上の魔物を含めれば町3つ位襲えば数万位のゾンビは出来るだろ。それ位の量なら、一人くらい勇者が出張れば如何とでもなる。俺が期待するのはイレギュラーなニンゲンだ。この憑代の啓子の様なナ?」

 「・・・では、早速行きますが、私はどの辺りで引きましょうか?」

 「・・・この遠見の魔道具を渡すから、ゾンビを作ったら部下に任せて離れた場所で待機しとけ。部下に何体か魔法のネクロース(ゾンビを遠隔操作する魔法)を使えた奴が居たろ。お前の魔法陣なしの体質の死霊術は結構貴重だからな。量産が出来るまでは大事にしたい。・・・っと、序にそこに転がってるニンゲンもゾンビにして地上に向かわせろ。ニンゲンにしては面白かったから、地上に這い回る屑どもにはいい刺激になるだろ。」

そういって、邪神はマグリノの足元に転がる人間を指し示す。

 「解かりました。・・・では・・・。」

そういって、マグリノと呼ばれた悪魔は地上界に降りて行った。

 「さー、どうなるか楽しみだ。」

 「ホントに楽しそうだね。あーあ、私は総君が居ないのから面白くないけど。」

そういいながら、悪魔に渡したのとは別の種類の遠見の魔道具で地上界を覗き見る二人?だった。








邪神たちの戯れの最初の被害にあったのは、皮肉と言うべきか(場所的な要因もあるが)情報戦を得意とする青天のアズル家の領地で、長閑な平和な村だった。

 しかし、平和なだけに、情報伝達が間に合わず、近隣と合わせ5つの村、計1千体。家畜のゾンビと合わせると、約5千体のゾンビが僅か1日で出来てしまった。

 そして、その情報が村人から近くの町に伝達されるまでに更に半日を要した為、一挙に1万の大軍勢となってアズル家の守りの要所の一つともいえる、次男バラク・アズルが管理する要塞都市バライヤーに押し寄せてきたのである。

 さらに、間の悪いことに、この時既にバラクは総司と対面している最中なので、守備の手薄な都市は呆気なく陥落した。

 幸い、この時住人は殆どがルージュ家の管理するルーベルスの遺跡管理都市(町)に避難が完了した為(出て行きたくないと残った者数十人)人的被害は少ないが、ゾンビが大量発生と言う報告が町中に広がって魔戦所の戦闘専門要員が次々と次のゾンビの襲撃予測地点である、アズル家のもう一つの要塞、タイズラン要塞前に集結した。

そうして、魔戦所戦闘員約500(レベル5辺り)と死霊術使いを含む約1万の大群の決戦が要塞前で開戦を迎えた。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~戦場~~~~~~~~~~~


「うわ~見るからにヤバそうな方が混じっているのは気のせいでしょうか?シンさん。」


「気のせいじゃねえよ・・・。なんだって奴が殺された側にいるのか、こっちが聞きてえよ・・・。奴は浮遊大陸に行ってた筈なんだが・・・。」


「まさか、噂が事実で、あっちで殺されて、序とばかりに復活させられて意識の無いままゾンビになってるんでしょうか?」


「・・・・そのまさかが、一番可能性があるな。しかし、好都合なのは弱点の無かった奴に火と聖属性、回復魔法って言う弱点が出来たってとこか?生憎、俺は火魔法しか得意じゃねえが。」


「俺だってそうですよ。第一、聖属性やら回復やらが得意な人の方が珍しいですよ。」


「そう言っちゃそうだな。まー、言ってても仕方ねえ、そろそろ来たからおっぱじめるぞ。」


「はい・・。」


そういって、集まった皆に音を広範囲に広げる風魔法の応用で声を届けるシンと呼ばれた男。


「あー、皆俺は魔戦所で偶にガキどもに教えながら遺跡に入ってその日暮らしをしてるシンって者だ。今回は遺跡から戻ったらこんな事態になっちまってたが、よりにも依って高レベルの遺跡探索者、万能型の戦闘員で名高いターリスって言う知り合いがゾンビになっちまってる。知ってる奴もいるだろうが、奴は4属性全ての魔法が使える。ゾンビになった今は分からんが、そんな奴を相手に固まってやっても意味が無いんで、奴は俺達<風の牙>が刻む。だから、倒せるまでは他のゾンビを倒しておいてくれ。数が多いが頼んだぞ?俺たちはハッキリ言ってそこまで手が回らん。」


そこまで、言ったところで、何処にでもいる馬鹿が口を挟む


「おいおい、それが人に物を頼む態度かよ?もうちょっと頼み方があるだろが?」


ニヤニヤしながらいう馬鹿に、シンは冷たい視線を向けながら


「このようなバカは他にいるか?いたら今の内に言っとけ。ゾンビより先に俺が殺してやるから。言っとくがこんな風なバカが一番先にやられやすいんでな。ゾンビになったら逆に強くなっちまうから、その前に俺が刻んでやるよ。」


このシンの非情な発言に反論しようとする者もいたが


「俺の発言が気に入らん、或いは反論があるなら、魔戦所に戻ってガキの様に訴えろ。この状況で俺と違う意見の様なら魔戦所の連中も信用できんと見做し、俺がこの場から立ち去ってやる。どうする?」


そうニヤッと笑うシンを見て、それ以上言う馬鹿な輩は居なくなった。


「納得して貰えたようで何よりだ。それでは、これからゾンビの有効な倒し方を知らない奴に説明する。先ずはてめえらも聞いたことが有るかも知れねえ回復魔法だが。ゾンビってのは知っての通り死んだ奴がそのまんまの状態で蘇った奴の事だ。唯、普通の蘇り方とは違うのが、心の臓って言う体の中の人であるための一部が動いてないって事だ。心の臓ってのは体の機能のいわば生命線だ。血を色んな場所に送る機能がある。そして、人間には細胞って言って、分裂する回数が決まってると言われる物が流れてる。そして、その細胞は自然回復によって分裂する。その為、普通の奴に回復魔法を掛けたら傷が治るところが、逆に回復過多で細胞って奴の分裂が多くなりすぎてそのまま寿命を削り肉体が衰え、朽ち果てる。てめえらの中に禿げ頭の奴が居るが、それは髪が邪魔で剃ってるよな?普通の場合は髪の毛なんかもさっき言った細胞分裂って奴で髪が抜けると生えて来ようとする働きがあるらしい。・・・ま、今は回復しすぎると体が付いて行かねえって解ればいい。これが回復魔法がゾンビに効く理由だ。

次に聖属性魔法だが、これは簡単だ。単にゾンビが死霊術って奴で操られて、それを元に戻せるのが聖属性の魔法ってだけだ。最後は火魔法だ。これも簡単で、火で溶かしてやりゃー形が無くなる。幾らなんでも形の無い死体は操れねーからな。・・・ここまでで質問は?」


「聖属性の魔法で元に戻せたら、そいつはもういいのか?」


「馬鹿か、手前は。元に戻しても、また操られたら意味ねえだろうが。動かなくなった所で粉々にするか火魔法で溶かすんだよ。」


「なら、氷の魔法でも良いのか?氷なら固めて粉々に出来る。」


「お、いいこと言うじゃねえか。そのやり方なら上等だ。で?手前は氷魔法は出来るんだろうな?」


「おお!任せろ!」


「よっしゃ!頼むぜ。他の奴は聞きたいことあるか?俺も聖人アラン様に縁が有って聞いただけでこれ以上は知らねえが。知ってることは教えるぜ?」


 その言葉で、今まで感心して聞いていた殆どの者が、「何だそりゃー!」とがっかりした様にズッコケた。

「今までの、人に聞いた知識かよ。それを良く堂々と初めから知ってたみたいに言えたもんだ。逆に感心するぜ。」


「うるせー!人に聞いてようが調べていようが、試すときに止めさんかったら意味ねーだろが!・・・他には?!」


「あ、序に聞くが、お前らが相手するターリスって奴もゾンビ何だろ?更に4属性使えるってのに勝てる可能性あんのか?」


「そこはお前らの頑張り次第だ。言うなれば俺らはターリスの足止め、お前らがゾンビを操っている奴を見つけて倒してくれるまでのな?お前らは殆どが魔力感知の指輪を貰ってる筈だから、魔力の流れでゾンビ共に魔力を流してる奴を探せばいい。恐らく、雑魚のゾンビには術者が流してる筈だ。・・・多分、ターリスには、魔力吸収の魔道具とか便利な魔道具を渡してる筈だから、魔力切れの期待は出来ねえから早めに倒してくれ。ヤバい場合は撤退も有り得るからな。・・・さ、ついに来たから早速やるぜ?対処法は教えたから、応援が来るまで粘るぜ?」


「「「おっしゃー」」」



そうして、遂に衝突した。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~魔戦所内~~~~~~~~~~~~~



その頃総司は・・・。


「たっだいまー!」


「結構長いこと潜りましたねー。・・・って、あれ?人が全然いませんね。もう夜ですか?」


「まー、なんだかんだで、中で食事もしたからその位になってるかも?」


と、三人それぞれの意見を言っていたのだが・・・。


「あ!リナ様にレナ様!もしかして、今まで潜っていたんですか?」


と、受付の方からリーゼがビックリしたように話しかけてきた。

・・・どうしたんだ?この人が居ない状況と関係があるのか?


「なあ、職員さん。この人の少なさは一体どういうこと?」


「あ、総司さん。それがですね・・・」


それから俺たちは、ゾンビの軍勢とその討伐に魔戦所の戦闘員の殆どが駆り出されていることを知った。


「・・・じゃ、俺たちは先に不動産の方に残りの魔石を払いに行ってから合流しますか。」


俺の言葉に、レナとリナがピクッと少しだけ体を反応させたのだが、主である俺の意見と、遺跡前のあのチンピラどもの事を覚えていたのか、さして何も言うことなく頷いた。

 しかし、俺の言葉にリーゼは驚き。

「そんな!総司さん達も参加してくれないんですか?流石に1万程のゾンビの軍勢を相手に、千にも満たない戦闘員では全滅すら有りえますよ。」


そんなことを言うリーゼに俺は冷たく言い放つ。

「そんなこと言ってもな、俺たちに遺跡前で絡んで来たのはその魔戦所の戦闘員の筈だぞ?ま、あそこで直接絡んできた奴にはお灸を据えてやったが、俺のレベルと魔力を見て馬鹿にするやつが、向こうでも居ないとは限らんからな。現にアズル家の次男とか名乗った奴は絡んできて、妹の報告も信じずに俺を馬鹿にしてきたし?そんな奴らを助ける義理は俺にはないと思うんだが?」

 そして、一旦言葉を切り。

「それに、俺達全員3階層の出口の階段まで行って疲れてるから、少しは休憩したいしな。」


と言ってやった。

3階層出口まで行ったと言う事に驚いたリーゼは。

「そんな!一日にもうそこまで降りたんですか?そこまで実力があるなら、なおさら協力してくださいよ。このままではこの都市にも来る可能性があるんですよ?」


そして、リナたちに目を向け

「それに、リナ様達の家にも連絡が言っている筈ですが、皆さんお手伝いを残して遺跡に行ってるらしいんです。リナ様、何か聞いてませんか?」


「・・・・あ!そういえば、父が「よし、リナ達の嫁ぎ先が決まったのならお祝いを用意しないとな!皆でこれからブランコ家のリーガル遺跡に魔道具探しだ。目指すは子供用の便利魔道具!いざ出陣の用意だ!!」っていってた。序にエリザ様に治療用の良い魔道具を何かと交換で譲って貰いに行ったんじゃないかしら?」


「有りえますね・・・。でも、他の家の人は居なかったんですか?扉を使えばそんなに時間は掛かりませんけど。」


「それが、この前から(邪神の復活の噂)皆さん遺跡の深部へ行く頻度が高くなってまして、他の魔戦所の方でもよく領主様達を見かけるらしいです。」


「・・・都合が悪いことが重なったという事ですか。・・・総司様、どうでしょうか。あとで、父達に便利な魔道具の1個や2個用意させると言う対価で私たちも参加すると言うのは?」


うーん。それなら情に流されたやらの勘違いもなさそうだが、釘はさしとくか。


「一つだけ言っとくが、俺はさっきのでこの魔戦所の低レベルな奴らのお守は嫌だから、死ににいってる奴らに関しては止めないぞ?あくまでゾンビを討伐する依頼を受けるってだけだ。いいな。」


「はい、それで十分です。」


「じゃ、先ずは準備だが。リナとレナ?」


「はい。」


「ゾンビに効くのは火の魔法と聖属性の魔法、後回復魔法で打撃は粉々にしないと意味が無いって事で合ってる?」


「はい。」


「レナはクロムウェルを召喚するのに必要な準備と、リナは剣の代りに少し変わった物を使って貰う。えーっと、水晶でこういう感じの取っ手付きの棒出して?」


俺は、リナに少し長めの棒に先端が丸い鉄板になっている物を出して貰う。

「はい、・・・これでいいですか?」


「お、上等!これなら持つのも楽だし、リナが扱うだけなら問題ないな。」


そういい、俺はレナの本や服に使われている魔道具らしき宝石を指し。


「レナの服とかの宝石って魔道具かなにかだろ?恐らく手を触れて発動させるタイプの。それの火の魔法の奴を手元のここに埋め込んで、先のここに魔法の効果を出す様にと威力倍増の魔法陣を描く。確かその魔法陣ならあったよな?」


「ええ、割と簡単な模様でいけますから大丈夫です。」


「なら、頼む。」


「はい、お任せを」


そういって、二人とも準備をして、十分後。


「なら、行きますか」


と言いながらお気軽に戦場に向かう俺達だった。




~~~~~~~~~~~~~~~戦場~~~~~~~~~~~~~~~~





総司たちが色々と準備している間も戦闘員は効率よく数を減らしていたが、ゾンビは数が多く、増えたり減ったりの繰り返しに対し、戦闘員は確実にその数を減らしていった。

そしてその戦いの中、遂に<風の牙>とターリスが相まみえる。

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