初の遺跡のチンピラども
「遅くなりました、総司様。レナ共々親からの許可を貰って来ました。これからは心身共に尽くしますから、よろしくお願いします。」
「パパー、ただいまー。」
「おう、おかえり。リナも、家も見つかったから、今から手続して、遺跡だ。」
「はい、了解です」
「おー!」
「では、中で手続きをしましょう。」
「応!」
それから、血の契約書や、魔石の譲渡やら色々あったが、契約書を渡され、晴れて俺たちの家になった。(因みに最初に手続きしたのは最初の屋敷だ。)
「じゃ、向かいだし、早速行くか。」
「あ、鍵はどうされますか?一応契約書の血のパターンでロックが成されているので、誰も入れませんが。」
「ならいいです。荷物も今は無いですから。」
「解かりました。お気を付けて。」
「どうも、ありがとう。」
こうして、住居を手に入れ、一路遺跡へと向かう為、再び魔戦所へ繰り出すのだった。
「いらっしゃー・・・、って早いわね。もう行って来たの?」
「ええ、案外良い物件があったので、直ぐ決まりました。」
「そう。なら・・・行くのね?気を付けて。・・・そこのハイドル遺跡って書かれたプレートがそうよ?」
「解かりました。行ってきます。」
「「「「いってきまーす」」」」
「いってらっしゃーい」
そうして、扉を潜った。
潜った先は、ハッキリ言って景色が一変している。
言うなればギリシャのコロッセオだ。
その入り口らしき場所に、何やら武装をした男やゴツイ女の集団がキャンプを張っている。(何故、魔戦所に戻って休憩しないのか不思議だ。)
俺たちが近づくと一斉にこちらを見て、ニヤニヤとリナたちを厭らしい目で見てきた。
(なるほどね。ここでなら殺しも女性を甚振るのも黙認されるって事か。魔物相手は怖いが、初心者の女なら少し脅せばチョロイと言う判断だろう。)
そして、中のゴツイ男が話しかけてきた。
「おい、餓鬼。そんなへなちょこ魔力で遺跡潜るんなら他の女は俺らに渡しな?手前よりよっぽどいい様に使ってやるからよ。ぎゃははははー」
「おいおい、イキナリ下品ないい方は止めろや。そんなんじゃー、ビビッて漏らすだろ。・・・小僧、悪いことは言わねえから、さっさと帰ってママのおっぱいでもしゃぶってな。ここはお前見てえな弱い奴が生き残れるほど簡単なとこじゃねえからよ。嬢ちゃんたちは俺らが手取り足取り腰取り教えてやって、いい具合にしといてやるから置いていけ。」
「てめー。俺と言ってること変わんねえじゃねえか!」
・・・何か聞いてると馬鹿らしくなってくるな。
「要するに、アンタらここで弱そうな奴を馬鹿にして、そいつが良い女連れてたら奪ってやろうって奴なだけだろ?しかも、中にも潜れない様な腰抜けの集まりって事だ。」
俺のその言葉に、たむろしていた集団がイキナリ吠えてきた。
「なんだとてめー!?大人しく、女をおいて、逃げかえりゃー済ませてやるって言ってんのに、よくもほざきやがったな?覚悟は出来てんのか?手前を半殺しにして、後ろの嬢ちゃんたちを皆で輪姦すぞコラ!」
「あー、煩いな。面倒だ、纏めて掛かってこい。一瞬で終わらせてやる。」
「このやろー!よし、手前ら。全員で世の中の厳しさ教えるぞ!」
「よっしゃー!」
こうして、1対数十人の一方的な虐殺(瞬殺)が始まった。
数秒後・・・・
「・・・ぐ・・な・・ん・・・だ・・」(くそ、何もんだ、てめえ)
「・・て・・・し・・・・・た」(てめえ、なにしやがった)
「あーあ、もう終わりかー。あっけないなー。それに装備も魔石もしょっぼいのしかないぞ?」
「仕方ないでしょう。こんな入口で止まっている輩が、そんないい物を持っている訳が有りませんよ。私でも、父と来ていた時は2階で頑張ってましたからね。・・・あ、1個良い物見つけました。これ、如何いう原理かは分かりませんが、大気中の魔素を魔力に変換できる魔法陣を用いている、最近の研究者の開発した指輪型魔力ペンですよ。これなら総司様の魔法開発にも役に立つんじゃないですか?」
「どれどれ?」
そう言いながら、俺はさっき思いついた、空間転換用の魔法陣を作ってみる。
範囲は自分の周囲5メートル。
人数は入るだけ。
効果は刻んだ魔法陣からAから別の魔法陣Bへの瞬間移動。
魔法陣の模様は日本の国旗(簡単すぎて誰もしようとしなかったらしい。)
「お、どうやら認められたらしいな。これを要所要所に刻んで行こう。俺の考えた効果どうりなら、魔力の質を限りなくゼロにしないと発動できない魔法陣にしてるから、この後、皆に魔力隠蔽用の魔道具を開発してやるよ。それとセットにしたら、俺達だけの移動手段出来る。こんな馬鹿どもの顔を見るのも最低あと一回だ。あ、転移する場所は頭に思い浮かべるだけでいい様にしたから、俺たちが通った場所なら誰でも行ける筈だ。」
俺の説明を聞いて、またしても唖然とする二人 (リナとレナ)。
「よくもまー、そんなにポンポン魔法陣の新しいアイデアが出てくるものです。感心しすぎて、なんといえばいいか解りませんよ。」
とレナ。
「そのうち、大型の召喚獣の召喚魔法を開発しそうですね。」
とリナ。
ん?そんなこと出来るのか?
「リナ?召喚魔法って、魔法陣に血を垂らすって言う魔法でしょ?その魔法の問題点は、魔法陣を手に入れる事が困難だって言ってたけど。開発する事も出来るの?」
「ええ。説明不足でしたが、魔法陣自体は殆どの召喚魔獣の契約用魔法陣は既にあるんです。なので、私が言ったのは、新たに制約するという事です。やり方自体は簡単なんですよ。ただ、未契約の魔物を屈服させ、自分の開発した魔法陣の上に乗せ、その魔物と自分の血を同じだけ魔法陣に吸わせる。これで契約完了です。後はその魔物が魔法陣に消えた後、その魔法陣を魔力ペンで描いて、血を垂らすだけです。この場合の魔力は言うなれば血の契約による魔法なので、魔力は無くても構いません。」
ほー、なら俺にも出来そうだが・・・。使役獣を増やす方が良いんじゃないか?何時でもいるし。
「まー、いいか。取りあえず、中に入ろうか、・・・と。その前に、見えない所に魔法陣を描いてくるから、ちょっと待っててくれ。」
そういって、少し離れた所の木に魔法陣を刻んで帰ってきたのだが・・・。
「どういう状況?」
何故かリナたちが取り囲まれていた。
「へっ!確かに手前は強いも知れねえが、この嬢ちゃんたちはどうかな?動くなよー、動いた・・・ら・・?」
取り囲んだ中の一人の男の腕が急に無くなった。・・・いや、一瞬で狼に戻ったポチが噛み千切ったようだ。
「・・・うぎゃーー!!お、おれの腕がーーー!!」
やっと、事態を把握して叫びだす、片腕になった男。
「あーあ、折角殺さずに置いたのに、余計なことするからだ。もう容赦しないから、地獄で後悔しろ。・・・ポチ、不味いだろうけど、後腐れなく、残さず食べなさい。」
「はーい」
そう元気よく返事をし、数十人からなる集団(幸いにも男ばかり)を全て胃袋に納めたポチだった。
それから、そろそろ遺跡に潜ろうかと思った時、背後から声がかかる。
「アンタ、こんなことして、唯で済むと思ってるのかい?皆がアンタらを恐れて、討伐隊が組まれるよ?」
・・・なんか、的外れこと言ってンなこの人。
「アンタは一体どこから見たのか知らないが、最初に絡んできたのもこいつ等、襲って来たのもこいつ等。俺がいない時に連れに手を出そうとしたのもこいつ等。んで、俺は防御しただけ。ペットに喰わせただけ。少し風で遊んでやっただけ。・・・ここまで言って、何か反論は?」
「・・・・」
「ちゃんと分かってるじゃん。そういう事だから、そいつらの為に俺を討伐しようってんなら、そいつらの恥だし、俺は降りかかる火の粉は全力で払うから。向かってくる奴は死ぬ覚悟で向かわせてくれよ?中途半端な実力の奴を相手すんのも鬱陶しいから。それ以外で、友好的な奴は大歓迎だけどな?・・・じゃーな。多分、今日中には三階層に行く予定だから。付いてくるなら着たらいいぞ?助けはしないけどな。」
そういうと、今度こそ、俺たちは遺跡に潜って行った。