~溺愛~ 1997 番外編
「可愛いなぁ」
気持ちがこもっている言葉というのは絶大だ。他者にも確実に伝わる。
頭を撫で、いとおそうに見つめる大樹の瞳に偽りは微塵もない。
クリっとした目、愛嬌のある口元。可愛い。可愛すぎる。
我慢できずにキスしてしまう。ほっぺでスリスリもする。
ずっと一緒にいたい。触れていたい。きっと替えなどきかない。
幸せをかみ締めている遠くで声がした。
「ご飯できたよぉ」
そういって香織がお皿を運んできた。
「またやってるの?」
呆れた顔で溜め息をつく香織。その何度も見る光景に若干あきているようだ。
「ほら、もうご飯だから」
そういわれて大樹は渋々とピングーのヌイグルミをテーブルに載せる。
「そこじゃ邪魔になるでしょ?汚れても知らないよ?」
子供をたしなめるように香織がさとす。
「だって一緒に食べるから」
駄々っ子以外の何者でもない大樹は数cmだけピングーの位置を動かす。
「ほんとに…… 大樹君いくつですかぁ?」
そんな言葉には反応しない。可愛いものは可愛いのだ。可愛いは正義!
「自分だって……」
そういって大樹は香織の隣に座っている、1mの大きさもあるイーヨを指差す。
「イーヨはいいのっ!」
ねー、と言って香織はイーヨに微笑む。どっちかと言えば大きい方が邪魔になるだろ。とは大樹は口が裂けても言えない。わざわざ怒られる事もない。
以前、ヤキモチやいてるの?と聞いたらハイハイっと返された。馬鹿だなぁ、好きだよ香織。ピングーの次に。
こうして日常は繰り返されて行く。
ピングーかわいいよピングー。
参考文献
かわいいは正義(苺ましまろ)




