表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

~形成~ since1976

 1976年、人口5万人の田舎町に生まれた。物心が付いた頃のある日、母から姉がいる事を告げられた。1度も見た事が無い姉、しばらくして母が再婚である事を認識する。


 欲しい物は何でも買ってもらえた。きっと置いてきた姉に出来なかった事を大樹にしてあげたかったのだろう。1人っ子である事もあり、甘やかされている。

それと同時に母は熱心な<教育ママ>でもあった。幼稚園の時には、すでに小学2年生くらいの問題集をやらされていた。その頃、姉はちょうど北海道の有名大学に合格していたのである。幼稚園の子供が強制的に勉強をさせられていた訳だ、やりたくないと思う時もあるだろう。その時、母はこう言うのだ。


「あんたは男でしかも何でも買ってもらってて。それなのに、母親に捨てられた女のお姉ちゃんに負けるのかい?」


 今考えるとひどい話だと思う、が、当時は母に謝って勉強に戻っていた。


 

 また、大樹の家庭では、夫婦喧嘩は毎日のように行われていた。それが嫌で嫌でしょうがなかった。怒鳴り声は当たり前、食器はよく割れる。ひどい時は窓ガラスも割れる。母は酒を飲むと人が変わるのだ。喧嘩はお金の事でしている。父は市役所務めであり当事は安月給だったに違いない。本当に毎晩のように喧嘩は続いて行く。


 基本、母は優しい人ではあった。専業主婦だったのだが、家の掃除など隅々まで行う。窓ガラス掃除もこまめにしているし、A型のせいなのだろうか。自分にも他人にも厳しい人なようである。その厳格に近い母は、毎晩、父と一緒に晩酌をするのだ。そうすると人が変わる。


 小学3年生の頃だろうか。酔った母に言われた。


「お前の父親はSEXの事しか頭に無い。SEXアニマルだ」


よくもまぁ子供に向かって言えるものだと思う。


 そのうち母は内職をするようになった。何でも買い与えて、教育にもお金をかけ、さらに一軒家を建てる事になったのである。それはお金も必要になるだろう。さらに喧嘩はひどくなって行く。


夕食の食卓で喧嘩が始まる。嫌になって自分の部屋に戻るのだが、怒鳴り声は聞こえてくる。勉強を始める。学校のテストで95点を取ると、正座で説教をされていた。周りの子ともよく比べられていた。○○君に負けるな。100点を取れ。1番になれ。


勉強は嫌になった事もあるのだが、逆らっても効果は無いし、いい点を取るとファミコンのカセットが増えていく。何より母の機嫌がいい。怒鳴り声の中、勉強する毎日は続いて行く。



 100%強制的に勉強をさせれたていたかというとそうでもなかったかもしれない。3年生の頃、クラスに転校生がやってきた。香織ちゃんという女の子だったのだが、大樹達の住む町よりも都会な所からやってきた。当事5年生くらいの問題集をやっていた大樹は、もちろんクラスで1番勉強ができていた。本人も多少の自信を持っていた事は言うまでも無い。


 ある日、掛け算九九の100問テストが行われた。先生は、終わったら手を挙げなさいと言って時間を計る。タイムアタックだ。もちろん九九などケアレスミス以外で間違うはずがない。大樹がスラスラ85問目くらいを解いていた時である。ハイっと聞きなれない声が教室に響き渡った。

テスト中にも関わらず声のする方を振り返った。すでに100問解き終えた女の子が涼しげな顔で手を挙げていた。転校生である。

一瞬唖然として手が止まる。数秒後テスト中なのを思い出し我に返る。しばらくして大樹は2番目で手を挙げた。他のクラスの子はまだ問題に向かっている。

大樹はそろばんが好きじゃなく通う事は無かったのだが、近所のそろばんに通っている子供達はまだ問題に向かっている。

手を抜いたつもりもない。油断は多少していたかもしれないが圧倒的な差をつけられた事など今まで1度もなかった。眉間に皺を寄せた少年はもう1度転校生に目をやった。


「なんだ、こいつ……」


 次の日もタイムアタックは行われた。一切の油断などせず大樹は取り組んだ。差をつけられた2番だった。


 教育熱心な母がこの事態を放っておくはずもない。どこから調べたのか知らないが数日後、その転校生が公文式をやっているんだと聞かされた。小さい頃から姉と比較され、女に負けるなと洗脳されてきた大樹に悩む理由は無かった。自分から初めて勉強の事で親に頼んだ。


「公文行きたい」


 それからは以前に輪をかけて必死に勉強していた。5年生になった頃には2次方程式を解けるようになった。公文の県BEST30にも選ばれて表彰を受けたりもしている。


 6年生になると大樹の小学校では年4回の4教科テストが行われた。中学でいう中間や期末みたいなものだろうか。そのうち2回でTOPを取れた。全総合点数でもTOPだった。やっと転校生に勝てた。


 勉強を中心に意識をしていたせいだろうか。3年生の頃からずっと転校生を意識していた事もあり、気になる存在・・・好意を持っていた。が、転校生は大樹の友達を好きだった。気持ちを伝える事も無く、その女の子は小学校卒業と同時にまた転校して行った。割と遠くに引越して行ったので、もう会う事は無いのだろう。初恋は終わりを告げた。


 中学にあがると同時に家が建った。両親の喧嘩は激しさを増す。それが原因で父が数ヶ月家を出ていった。この頃反抗期を迎えたのだろうか。勉強をしなくなった。やる気も起こるはずがない。


 ある夜、自分の部屋で寝ていると階段を上って来る音がして目が覚めた。眠りが浅かったのだろうか。ノックもせずにドアが開く。反抗期だったせいもあり、寝ていたのを邪魔されたのもあり、大樹が不機嫌そうに、なに?と言ってドアの方に目を向けた瞬間、凍りついた。

包丁を手にして、手ぬぐいで落ちないようにグルグル巻きにしている母の姿があった。電気を付けて慌てて飛び起き、こたつの向こうへ、部屋の奥へと逃げた。なんて言ったかなんてよく覚えていない。何やってるんだよ?とか母に向かって言ったような気がする。手を震わせて、切っ先をこちらに向けた母はこういった。


「ぶっころしてやる」


 その後どう行動したかもよく覚えていない。逃げながら手を取り押さえて、包丁を奪ったのは確かだ。包丁を奪われた母は階段を降りて部屋に向かった。

パニックになっていて、他の会話は一切していない。無言がさらに恐怖を煽った。それを見ながら大樹は台所へ向かい包丁を全て2Fの自室に持ってきた。

部屋に戻っても、まだ自分が震えているのがわかる。眠れるはずも無く、朝を迎えた。7時くらいに下に様子を見に行く。

母は包丁の必要無い朝食を用意していた。挨拶もお互いもちろんしない。無言のまま大樹は学校へ向かう。この状況でなぜ学校に行ったのだろう?安全だと思ったのだろうか。どこから見てもシュールだ。

学校へ着くと、まぁ昨日の夜からなのだがいろいろと考えた。昨日の母は酒を飲んでいた。が、冗談や酒のせいにする内容でもない。わからないまま数日を過ごした。そのうち少しずつ会話もするようになっていった。


 しばらく経って父は戻って来たのだが、そこからは酷いものだった。家を出て行っている間に外国人売春婦に手を出していた。それがバレた。母は発狂した。喧嘩も増えた。それだけなら良かった。睡眠薬に頼るようになった。元々精神は病んでいた母に追い討ちがかかったのだ。自殺未遂は数度あった。カミソリ、薬の大量摂取。

そして大樹が中学3年の1月3日。夕方17時くらいだろうか。家の内線電話が鳴った。正月で父は親戚の集まりに1人で行っていた。内線は母からだ。


「大樹……」」


 数年振りに聞いた非常に穏やかで優しい声だった。


「なに?」


とだけ言うと数秒後に電話は切れた。母との会話は殺されかけた件以来、はっきりいって少なくなっていた。しかも薬を飲みだしてからはあまり関わってなかった気がする。勉強しかしてこなかった15歳は、どうしていいのかわからなかった。

グレたりする事は無かったのだが、家の中はそんな状況で学校では普通に装う。大樹も疲れきっていた。何も考えたくない。逃げ出したい。ストレスもあっただろう。家族になるべく関わりたくなかった。


名前だけ呼ばれた不可解な内線の理由を考え無かった。


 夕食はいつも18時である。必ずお腹は空く。1Fに降りていく。電気は付いているが母はいなく、夕食の準備もしていない。

風呂場の明かりがついているようだ。脱衣所の戸だけ開けて母を呼ぶ。返事が来ない。水の音がする。聞こえないのだろうか。やや大きい声でもう1度呼ぶ。水の流れる音だけが残る。


嫌な予感がした。浴室の戸を開けた。



 母は浴室で死んでいた。



 浴槽から起こし上げ、119番をし、何人かに連絡を入れた。父には連絡がつかない。慌ててはいたと思うのだが、呆然としている為か意外と静かな心だった気もする。

まだ間に合うのか?そう考えて救急車を待つ。1秒がとても長く感じる。中々来ない。大樹の同級生の親(母同士も親しくしていた)にも連絡を入れたのだが、お母さんが自殺した、と電話をしたらしい。


何分たったのだろう体感では30分くらいたってから救急車が到着した。素早く乗り込む。近くでサイレンが止まったせいか、近所の人が人だかりを作っていたような気がしないでもない。


 病院について、しばらくした後、父が到着した。母はすでに手遅れであった。



 ああそうか…… 最後に声を聞きたかったのか。


病院で少し落ち着いた大樹は、内線電話を思い出していた。




 高校受験が近づく。中学では勉強から離れていた大樹が成績を維持できるはずは無く、とうに県で一番の進学校はあきらめていた。それでも県北1の進学校を受ける力が残っていたのは小学校までの<貯金>のおかげである。

家から近い高校にしても良かったのだが、親戚や周りの保護者達がお母さんの為に、と少し遠い進学校を薦めたせいで、世間体もあり受ける事にした。安全圏ではあったので、なんなく合格はした。


 高校生活が始まった。勉強はもちろんしたくない。毎晩親戚と父と麻雀を打っていた。みるみるひどい成績になっていく。3年になると学校をさぼってパチンコに行くようになった。

単位が足りなくなり卒業の為に補習を受ける。中学高校と一切勉強をせず学校にも行かないような生徒だったのだが、なんとなく家から出たいと思ってしまい大学受験をする事になった。周りから受かるはずはないと思われたのだが、まだ<貯金>が残っていたのであろうか、試験がマークシートだったからであろうか。4流私大に合格してしまった。


 こんな生活をしていたのだ。恋愛しようとは思わなかった。男子校だったのも影響したのだろうか。


2話目を終えて、テーマの恋愛はほぼ出てきませんw

アニメ魔法少女まどか☆マギカで主人公が中々契約しない事と同じと思って下さい。

起承転結は難しい。承 の部分になるのですが、起とは雰囲気を変えたかったのと1個目のサプライズというか爆弾というかw

気になってしまった方がいれば作戦成功なのかなぁ。


でも完全な粗筋説明文ですよね、これ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ