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彼と彼女のデザイア。  作者: さんまぐ
シェルガイ-土と雷のスェイリィ。

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第81話 戻ってきたら殺してやる。

スェイリィの神殿は敗色濃厚になっていた。


神殿と護衛隊の住居を取り囲む半魔半人のレーゼ兵と魔物達。

ゲートを出てすぐ、周囲はお祭り騒ぎのようになっているが、それはお祭りなんかではなく全て敵で途方に暮れてしまう。

なぜ敵は攻めてこないのかわからないが、護衛隊は死屍累々の怪我人だらけで、まだ生きていてくれれば助けようはあるだけに雲平はホッとする。


だが数日前はまだ耐えていた。

なぜたった数日でひっくり返されたのかシェイクにはわからなかった。


そこに陣に顔を出して「待っていますから、スェイリィと話してきてください」と言った男を見て、シェイクは顔色を変えて「マフィン!?」と声をかける。


マフィンと呼ばれた男は親衛隊の1人で、オシコが国府台帝王に連れてきてもらっていた男だった。そのマフィンが生きていて「お久しぶりです。シェイク様」と言って挨拶をする。


「何をしている!?皆はどうした!!?」

「私を抜かした7人全員がコジナーの壁を破るのに使われて皆死にました。そもそもは私を攫うための襲撃でした。コジナーのオシコは私を知らず、親衛隊にいる事だけを突き止めていたそうです。ジヤーにも金を積まれて情報を話す輩はいるんですよ」


マフィンの丁寧な言葉にシェイクはどんどん冷静では無くなっていく。


「マフィン!君はなんでそちら側にいる!」

「シェイク様、私は賢者ミスティラ…元々の名はクレマの子孫。オシコはミスティラを苦しめる為に、私を見つけ出して、洗脳虫と言う虫を私に植え付けました」


この言葉にシェイク以上に冷静でいられないのはミスティラで、「お前が私の子孫!?」と言う。


マフィンはミスティラをジッと見て、「ええ、家族の自慢です。今の私は自分の意思なのか、頭に入った虫によってなのか分かりませんが行動をしています。スェイリィはそれを見越していて、私の交渉に乗ってくれました」と説明をする。


「交渉?」

「ええ、本来なら陣を落としてスェイリィの神殿を大群で破壊する事も出来ましたが、一つの条件で、こうして陥落寸前で止めているのです」


「何を話した?」

「スェイリィスピア…スェイリィウィップにもなるあの槍を、ひとまず私に預ける事を条件に交渉をしました」


「神獣武器は魔物や半魔半人には触れることも叶わないからか…。それで洗脳された人間が必要でオシコはお前を…」

「ええ、私の目的はあなた達の撃破。賢者ミスティラを苦しめる、そして神獣武器の破壊です。時間はあります。私は1番奥であなた達を待ちます。先にスェイリィと話してきてください」


ミスティラは冷静を装ってはいたが無理な話だった。

見れば見るほどかつての夫の面影があった。

必死に律しようとしても、目は面影を探す。

酷い話は口元で、散々似た口からは愛の言葉を貰い、飽きる事なく口付けを交わしていた。


「わかった。孤高に挨拶をしてくる。待っていてくれ」


そう言ったミスティラが「お前はドゥケッサに似ているよ」と言うと、マフィンは頷く。


「はい。家族からもそう言われました。人には明かせない自慢として、お婆様の事は家族の誇りでした」

「やめてくれ。私はドゥケッサより先に死に、赤子に戻り世話までしてもらった最低な妻だよ」

「…生き残られましたらお祖父様が隠していた手紙を読みに行ってください。お婆様が赤子の姿の時に書かれていました。そこにはお婆様への愛と、共に生きられないことへの謝罪が書かれていましたよ」

「読んだのか?悪趣味だな」

「家族は皆読んで自慢にしています。きっと私はもう行けませんがお婆様なら行ける事でしょう」


ミスティラが共に過ごした土地の方を一瞬見てからマフィンに視線を戻して、「まあいい。すぐ戻る。戻ってきたら殺してやる」と言うと、マフィンは「ありがとうございます」と返して魔物の奥に消えていってしまった。



・・・



誰も何も言えないままスェイリィの元に行くと、スェイリィは巨大な青蛇だった。


「久しいな孤高」

「よく来てくれた。こうなってすまないな」


「別に、だがよくスェイリィスピアを渡す気になったな」

「彼は死の決まった人質だからな。キョジュの奴は洗脳虫を使っていて、仮に断られたら自害をし、魔物達をここに送り込むつもりだった。ビャルゴゥの奴がお前には会わせるべきだと言ってきたから交渉に乗った」


「ふむ。時間はあまり無いな」

「ああ、重度の怪我人は、いくらヒールを送っても、キチンと薬を使わなければ保たないからな」


「敵の数は?」

「1,500だ」


「ほう、オシコめ。大盤振る舞いだな」

「あの半魔半人が殺されて怒り狂っていたからな」


スェイリィはそのまま雲平を見て、「安倍川雲平、お前は気付いたか?あの日、あの半魔半人の触手が7本しかなかった。8本目は株分けでキョジュが持っている」と言った。


「株分け?土に植えるとまた生えてくるんですか?」


冗談じみた言い方だが、スェイリィは満足そうに「話が早くて助かるな」と返し、「キョジュの奴はコジナーの結界の効率的な解放より、安倍川雲平への復讐を最優先している。奴らが崇める魔物の神ニョトーは、暴れたいだけの輩だからキョジュの行為を許しておる」と続ける。


「復讐?俺にですか?」

「あの半魔半人を殺したからだ。キョジュはコジナーのゲートを無理やり開いて地球に魔物を送り込もうとしている」


「地球に?」

「前例はあろう?お前は単身ワイバーンを殺した。あのワイバーンもキョジュが無理矢理ゲートをこじ開けて送り込んだものだ」


雲平は機内から魔法を放ったワイバーンを思い出して、「ちっ、婆ちゃんとあんこ達が…」と言うと、スェイリィは言った。


「今日を無事に生き延びたら、地球に魔物の襲来を知らせると良い。シェルガイに触れてシェルガイ適性のある者は、力を放つゲートがある限り力を使えるが、シェルガイを知らぬ者には不可能な事だ。そしてレーゼを目指し、クラフティからサモナブレイドを受け継いだら、セムラ姫と共にコジナーのゲートを閉じてしまえばひとまず終わる。その後は最終決戦だ、人達と魔物達の戦いになる。コジナーに向かいキョジュを倒せ」


話が終わりこれから戦いになる。

ミスティラは前に出ると皆の方を振り向き頭を下げて「済まない。私の子孫を殺す手伝いを頼みたい」と言った。


ミスティラは泣いていた。

パウンドが心配そうに「ミスティラ様」と声をかけると、パウンドを見ずに「ふふふ、おかしいのだ。300年近く生きているのに泣けてくる。今も夫だったドゥケッサのことを思い出し、目端や口元が似ているあのマフィンの事を思うと泣けてくる」と言う。


ミスティラの涙を見てアグリが「やろうよ!お兄ちゃん!」と声をかけると、雲平は頷いて「うん。よろしくアグリ。ビャルゴゥリングはアグリが使ってね」と言った。


「お兄ちゃんは?」

「もうビャルゴゥとは繋がってるから、リング無しでコキ使うから平気。グェンドゥも繋がってくれた」


アグリはそのままホイップにも「ホイップ!ミスティラ様の為にも本気だよ!アイスウェイブもアイスナイフも使うんだからね!」と声をかける。


ホイップはこの期に及んでも、まだどこか他人事の顔をしていて、アグリはそのことに気付いて話しかける。


ホイップは困った顔をして周りを見て最後にセムラを見てからシェイクを見た。

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