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彼と彼女のデザイア。  作者: さんまぐ
シェルガイ-盟約。

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第80話 今が正念場だ。耐えろ。

ホイップは、鍛えてくれと言った事を心底後悔した。

結局、魔法に関してはそこそこ褒められたが、大魔法が放てない事をダメ出しされて、明日以降も訓練になり、そもそもの体力の無さにカヌレとパウンドが名乗り出ての走り込み。

ヘトヘトのボロボロになったところで、戻ってきたアチャンメとキャメラルから「回避しねえと…」、「死ぬぞぉぉぉっ!!」と言われて練習用の剣でコレでもかと攻め立てられる。


刃の嵐と呼べる中に平然と入ってきた雲平は、剣を回避しながら、「魔法の適性は氷なんだからアイスウォールとか作れば良いんだよ。直撃しちゃう時は防ぎなよ」と言う。

そもそもアイスウォールなんてものは、一般化されていない雲平の創作魔法なのに、「見てて、アイスウォール」と唱えて分厚い氷の壁を作るとキャメラルの剣を防ぐ。


雲平はそのままアチャンメ達に「硬い敵だと思って頑張って切ってね」と声をかけると、セムラの元に戻っていって「疲れました。手を繋ぎましょう」と言って手を繋ぐと、木陰に2人で座り目を閉じて鼻歌を歌う。


雲平とセムラのイチャラブ具合を見て、バカにしていると思うホイップだが、アチャンメとキャメラルは「あぶねー、姫様マジ感謝」、「本当だよな。あのままキレられたら殺される」と喜び、更に剣を放ってくる。ホイップは一度直撃をして死ぬ程痛い思いをしてからは、アイスウォールを出せるようになった。


遠くで見ていたアグリは「うわぁ、お兄ちゃんの言う通りだ。ホイップは追い込めばやれる子なんだね」と言っている。


そんな事はないから助けてくれとホイップは思ったが、無惨にも訓練は続いた。


そして夜は自室に帰して貰えると思ったのが甘かった。

前もって雲平発信、ミスティラ経由で宰相のフレジェの許可は得ていて、ホイップは帰れない。


「アグリの用意した小屋で君も生活だよ。嫌なら早く一人前になるんだよ」


雲平の言葉と共に小屋に連れて行かれたが、王子としては最低の…、人としての尊厳が無いとホイップは言いたくなるような扱いを受ける。


まずは座っても夕飯が出てこない。

それなのに雲平達は食事を始める。


ホイップが「おい!」と言ったところで、躾当番…折檻担当…教育係に任命されたアチャンメとキャメラルが立ち上がり、ホイップの横に行く。


「あぁ?お前なんか手伝ったか?」

「働いたか?」

「それどころか訓練ありがとうございましたとか言えたか?」

「何様だゴルァ?」


そう言われながら蹴られる。

バカみたいに蹴られる。


涙目になりながら「今日は訓練…ありがとうございました」と言うホイップに、「うんうん」、「言えんじゃねーかよ」とご満悦なアチャンメとキャメラルを見て、ここだと思い「だから食事を用意し…」と続けたところで、ホイップは顔面を殴られた。


「キャメラル!顔はダメだ!バレるとウゼェから腹にシロ!」


アチャンメが頬を抑えてうずくまるホイップを立たせると、腹を殴りながら「アァン!?わかってねぇなぁ?お手伝いしないですみません。役立たずの僕にも夕飯を食べさせてくださいダロ?」と耳元で優しく囁く。


ホイップは涙を流しながらアチャンメとキャメラルを見ると、ニタニタと嬉しそうに笑うアチャンメとキャメラル。


「やだな」

「ああ、心苦しい仕事ダナ」

「愛の鞭ダナ」

「でも優しいよな、殴る度にご指導ありがとうございますって言わせてねーもんな」


そう言ってホイップを見ると、ホイップは震えながら「お手伝いしないですみません。役立たずの僕にもご飯を食べさせてください」と言い、ようやく食事にありつける。


「お前のダメなところは、王子様だから待ち癖がついてて、なんでもやって貰えると勘違いぶっこいてる所ナ」

「それを徹底的に躾け直してヤル!」


そう言われながら食べた食事は質素で、イジメの一環かと思ったがこれが普通と知り驚きを口にする。


「え…知らなかった、皆ジヤーの為に働いたり戦ってくれているのに…、どうしたら良いんだろう?」


そう言い、アグリは「今の言葉はホイップの言葉に聞こえたし、王子様って感じで良かったよ」と褒めて、カヌレは「ふむ。世界が狭いから広げるべきだな」と言った。



・・・



ホイップの地獄はこんなもんでは終わらない。


「おい!風呂行くぞ!」

「アチャンメの背中を洗わせてやる!」


真っ赤になって首を横に振るホイップに、「姫様はダメだがミスティラならツルペタンだから良いだろ!行くぞ!」とアチャンメが言うが、ミスティラに後頭部を叩かれて「良いわけがない。ホイップは雲平とパウンドと入れ」と言われて、風呂に入らされると、お世話人がいないわけで右も左も分からない。だがそこはパウンドが優しく教えてくれてなんとかなった。


雲平はセムラの事もあり、なんだかんだジヤーの王族にいい印象はないので、シュザークの力を借りて風呂をこれでもかと熱くして、「ホイップ君、まさか下っ端の君が俺やパウンドより先に出ないよね?」と言って釜茹でのような目に遭わせる。


ここでタチが悪いのは、シュザーク達もだんだん楽しくなってきていて「楽しい。いいぞもっと鍛えてやれ」と言っている事だったりする。


雲平はホイップが泣きながら「熱いです。出たいです」と言うまで我慢くらべをするし、パウンドは「皆で入る風呂は楽しいなぁ!」と喜んでいてノーダメージだった。


夜は「おい、寝るぞ」とアチャンメとキャメラルにベッドへ連れて行かれるホイップ。


「何!?僕と寝所を共にして何をするつもりだ!まさか玉の輿!!?」


そんな事を騒いで、「バカが、誰がお前なんかに私の純潔をくれてやるものか、私はクモヒラしか認めていない」「私もだクルクルパーめ」と言われながら連れて行かれてしまう。


「おうコラ、私より先に寝たら許さないからな」

「まあまだ眠くねーな」


ホイップはアチャンメとキャメラルから、そう言われてしまい、訓練でヘトヘトで早く寝たいのに寝かして貰えない。

涙目で「寝かせてください」と言って、「ようやく言ったな。キチンと言葉にしろヨナ」、「私達は察してやらねーからな。さっさと寝ろ。オヤスミ」と言われて気絶するように眠りについた。



・・・



よほど怖い目に遭ったのだろう。

ホイップはたった一晩で老け込み、痩せていた。


いくらヒールで痣を隠しても目の光は戻らない。


死んだ魚のような目をしているのに、アチャンメとキャメラルに挟まれて姿勢を正して「おはようございます兄上」と挨拶をする愛弟に、シェイクは怒りを覚えるが、フレジェとミスティラから「弟離れをしてください」、「今が正念場だ。耐えろ」と言われていた。

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