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彼と彼女のデザイア。  作者: さんまぐ
シェルガイ-火のシュザーク。

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第69話 私だと思って可愛ガレ。

明け方、衝撃によって目を覚ますとそれは国府台帝王で、「朝飯前に片付けにきた」と言って暴れた。


セムラとの同衾でようやく震えが止まっていた雲平だったが、国府台帝王の姿にまた震えが戻る。


「くそ…また?」

「雲平さん!」

「行かなきゃ。アグリのビャルゴゥリングを借りてウォーターソードを出さないと」


震える雲平をよそに、国府台帝王は「逃げたか?日本人出てこい!」と叫ぶ。


「クモヒラはお楽しみ中ダヨ」

「朝っぱらから邪魔スンナ」


アチャンメとキャメラルが前に出ると、「ミスティラぁぁっ!指示出しシロ!」、「パウンドぉぉっ!連携スンゾ!」と言う。


そして昨日即興で作ったフォーメーションで戦う。


アグリのウォーターガンも無くなった時間とは別物で、キチンと国府台帝王に傷が付く。

そして一度全力を出したカヌレも、屋外で遠慮することなく前に出る。


そしてアチャンメとキャメラルは、ストロングオクトパスの触手を破壊しながら一定の距離を取っていて、息継ぎの間を稼ぐようにパウンドが槍の一撃を浴びせる。


だがどうにも攻撃力不足。

カヌレがグェンドゥハンマーを持たずに、国府台帝王がファイヤーハミングやストロングオクトパスを取り込んでいなければ勝てたかも知れないが、今の攻撃力では国府台帝王を追い詰める事は出来ていなかった。


黙ってみていたミスティラは「隠し球を出す!アチャンメ!キャメラル!離れろ!」と言うと国府台帝王を火の大魔法インフェルノフレイムで包んだ。


流石の国府台帝王でも足止めされてしまうが、ファイヤーハミングの部分がどうしても致命打を無効化する。


「ちっ、焼け切らん!消滅必至の火の大魔法でこれか、アグリ!ウォーターガンの準備だ、カヌレ!ぶっつけ本番だが風魔法を放て!グェンドゥハンマーの周囲に風を纏わせて殴れ!」


アグリはすぐに魔法の形になったがカヌレはわからないと言う。


ジリ貧。

やはりここに雲平が居ればとなる。


「おい、キャメラル。ここは任せたからな」


アチャンメはそう言って走り出した。



・・・



雲平は必死に立ち上がり、セムラが雲平に肩を貸して歩く。


「行かなきゃ、皆が…」

「雲平さん。無理です」

「ビャルゴゥリングで倒さなきゃ」

「今も震えています」


話を聞こうとしない雲平は、セムラを見て「またもしもの話をしてください。また同衾をお願いします」と言うと、セムラは「いくらでも、何度でも」と返す。


そこに来たアチャンメは「姫様!シュザークウイング出してクレ!」と言った。


「アチャンメ?」

「シュザークが特別に使わせてくれるから、私が使えるんだ!カヌレが魔法を撃てないから手が足んねーンダヨ!」

「シュザーク様が?わかりました」


セムラはペンダントからシュザークウイングを取り出すとアチャンメに渡す。

だがアチャンメの顔をみた雲平は直感的に「アチャンメ!それは本当?」と聞いた。


雲平の問いにアチャンメは困った顔で、「バレバレかよ」と言う。


「てかクモヒラもまだガクブルなんだろ?仕方ねーッテ。私のカオスチタンの剣をやるから、私だと思って可愛ガレ」


そう言って剣を押し付けながら再度雲平の頬にキスをして、「悪い、剣は壊さないようにするからよ。キャメラルがボッチになったら地球に連れて行ってクレヨ」と言って走り出した。


「ダメだ!アチャンメ!戻れ!戻ってくれ!」


雲平は必死にアチャンメを止めるがアチャンメは止まらない。

セムラは今になりシュザークの言葉なんて無かったことに気付いて青くなっていた。


「ホッとしたな」


そこに聞こえてくるシュザークの声。


雲平が「シュザーク!!」と怒鳴りつけると、シュザークの「ああ、これで戦わないで済む。仮に無駄死にでも、レーゼの姫の命を犠牲に無かったことにしよう。情けないな」と言う声が聞こえてくる。


セムラも「シュザーク様!お願いします!アチャンメに一度だけ機会をお与えください!」と言うがシュザークは聞き入れない。


「君もホッとした。これで安倍川雲平が傷付かずに済むと、それどころか仮にコジナーとの戦いに負けても自身と安倍川雲平で日本に敗走してそこで幸せになる未来を夢見てしまったね」


そうシュザークが言うと、顔を真っ赤にして恥じらうセムラに、シュザークは追い打ちをかける。。


「乙女の淡い夢だ。挫けて動けなくなる少年と重責に押し潰される少女の願いか…。私の力でゲートを開けてやる。ペンダントを差し出して逃げるが良い。それこそあの小娘は無駄死にだな」


震えて泣き始めるセムラ。

心を見透かされ暴かれて、それは姫ではなく1人の少女の物で恥を感じて泣いていた。



・・・



「黙れ鳥、吊るして食うぞ?」


雲平の言葉に「なに?」と聞き返すシュザーク。


「アチャンメ達は死なない。セムラさんは俺の前では世良なんだから、それを思うのは当たり前だろ?何言ってんだ。朝から晩までお姫様なんてやれないんだよ。わからないからお前は鳥なんだ」


雲平はセムラに「この剣、アチャンメに返すまで持っててください」と渡すとセムラを抱きかかえる。


雲平は震えていなかった。


「雲平さん?震えは?」

「頭きたんで、震えるのは後にしました。今晩も一緒に寝ましょう。ね?世良」


「え?」

「世良なら日本に来られます。疲れた日は日本に来ればいいんです。俺も遊びにきます。そこから始めて答えを出しましょう」


「やる気になったが遅いな、あの小娘達は我が翼を振るっている」

「黙れ鳥頭。俺の為の慣らし運転だ。偉いなアチャンメは、後で撫でてやらなきゃ」


雲平は言うだけ言うとそのまま走り出した。

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