表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼と彼女のデザイア。  作者: さんまぐ
シェルガイ-水と氷のビャルゴゥ。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/155

第61話 言いたくない。面白くない。

雲平達は大勝利を収めた。

初日の戦いでは大怪我を負った者も居たが、2日目の戦いでは怪我はカヌレの為にかすり傷を負ったパウンドが居たくらいで済んだ。


ミスティラの要望でもう一度ビャルゴゥに会いに行く事になった雲平達は、道すがらアグリがビャルゴゥリングを外せないと言い始めた。

ミスティラが「それが正しい」と言ったのだが、雲平は「大丈夫だよアグリ、それを外すのにはコツが居るんだよ」と言うと、少し力任せにビャルゴゥリングを外して「ほらね」と微笑んだ。


金太郎の「無敵かよ」というツッコミを無視した雲平は、「これでアグリも婆ちゃんに会えるよ」と言った。



・・・



神殿で待つビャルゴゥは不満一色の不機嫌だった。


「なぜ外せる?」

「別に少し硬いけど力を入れればなんとかなりますよ」


これにはキャメラル達が、後ろで「ならねー奴だな」とツッコむ。


「…それに安倍川よもぎが装備をしているのに、なぜ安倍川雲平が私の力を使う?なぜお前の魔法の肩代わりに浄化力の上乗せまでする事になる?」

「知りませんよ。出来たんだからいいですよね?」


鯉なのに表情があるビャルゴゥに、ミスティラが「それはさておきだ。オシコはどうやって壁を越えている?」と聞くと、「言いたくない。面白くない」と言ってビャルゴゥはヘソを曲げた。


「んな!?言え!」


ミスティラが怒鳴っても無視をするビャルゴゥを見て、雲平が思ったことを口にする。


「ミスティラ、本当にビャルゴゥは見えるの?無理なんじゃない?」


雲平の言葉にムキになったビャルゴゥは、「見えておる!キョジュの奴は人々を攫ってゴブリン等と合わせて半魔半人を作り出し、その者達の命を用いて壁に一時的な穴を開けている!」と言った。


「オシコ…。人の心も無くしたか…」


そう言って落ち込むミスティラを放置して、雲平は「一個聞かせてください」と言う。


ビャルゴゥは雲平を見て「…お見それしましたとは言わぬのか?」と絡んでくるが、雲平は意に介さずに「なんでですか?見えるのに見えていなさそうな素振りをするからいけないんですよ?」と返した。


「…安倍川雲平、いい性格をしているな」

「そうですか?質問させてくださいよ」


ビャルゴゥは諦めて「言ってみろ」と言う。


「あの、ビャルゴゥリングだけじゃなくて神獣武器ですけど、担い手以外が使うと死ぬ場合と武器が壊れる場合があるんですよね?」

「ああ、その通りだ」

「壊れるってのは直せないんですか?」

「直せるぞ」


この言葉にアチャンメ達が「んだよ!直せんのかよ!」と言ったが、雲平は「直るまで何日ですか?」と聞くとビャルゴゥは「1000日くらいだな」と言った。


「…戦争終わっちゃいますよ」

「まあ担い手以外が使おうなどと思わない事だな」


雲平も聞きたい事は聞けたので次の話になる。


「次はどうすれば良いんですか?」

「地理的にグェンドゥの所に行けばいい。奴もお前達を待っている」


「何日かかります?」

「…歩きたければ歩けば良い」


「は?」

「なぜレーゼの姫が居て歩く?麓にゲートがあるのだから使えば良い。お前達はビャルゴゥリングを身につけなければ移動出来る。まあ本来ならレーゼの姫が担い手になっていない者を連れて神殿付近まで行く。安倍川雲平や安倍川よもぎのような担い手は中心であるジヤー城を目指す。そして今回で言えばグェンドゥの神獣武器を手に入れた者が単騎で城を目指す間にシュザークやスェイリィの所にゲート移動をすれば解決だ」


ゲートの話に納得をした所で金太郎が「まあそう言うこった。アグリを頼んだぞ雲平」と言った。


雲平が「父さん?」と聞くと、金太郎ではなく瓜子が「雲ちゃん。お母さん達はここで待つから、戦争が終わったら、一度皆で日本にいきましょうね」と言った。

雲平は不思議そうに「母さん?一緒に行かないの?」と聞くと、ビャルゴゥが「行かれては困るな」と言った。


「ビャルゴゥ?」

「ビャルゴゥリングは私が存命だから使えるもの。私抜きで発動なんかしない」

「…じゃあオシコが攻めてくる可能性がある?」

「キョジュは来ないよ」

「なんでです?」


ここでミスティラが忌々しそうに説明する。


「簡単だ。1対1で神であるコイツらに勝てる奴はいない。簡単に言えばオシコ1人には絶対に負けないが、ゴブリン2千匹には負ける。一度に使える力に限界があり、この山を汚されれば力は更に失われる。断続的に攻め込まれてしまえばラピッドウェイブで滅ぼす事もままならん」


気になるところもあるが、なんとなく納得ができた雲平。


「それって負けるとビャルゴゥは死ぬんですか?」

「まあ人の死とはまた別だな。この世界との繋がりが肉体の再生まで途絶えて、肉体の再生に時間がかかるから近付けないのだ」


「だから俺達護衛隊が居る訳よ」

「うふふ。お母さん達は中々できるのよ」


「シェイクさんに父さん達は役立たずって教えなきゃ」

「酷え!!頑張ってるよ!」

「あらあら、冗談でもやめてね」


日は傾き始めていたのでこのままもう一泊する事になる。


下山をすると金太郎は父の顔で雲平に「お前の強さは良くわかった。だが一言だけ言わせてくれ。それは敗北を知らない者の戦い方だ。いずれ命を落とす。俺達も辛く悲しいし、婆さんも仲間達も悲しむから無理はするな」と言った。


「…うん。わかってるよ」

「ならいい。とりあえず無理はするな。皆で力を合わせれば良いんだからな。後はとりあえず予備の剣を渡しておく。上物の明石剣でも良かったが多分すぐに壊すからやめた。ヘブンチタニウムは無いから我慢してくれ。代わりにハイチタニウムのショートソードだ。かなり重いがお前なら使える」


雲平は剣を受け取って重いとボヤいた後で「ありがとう父さん」と言った。


夜ご飯は祝いの宴になっていた。

皆笑顔でご馳走を食べる。

パウンドは新たに友達ができて肩を組んで歌い、アチャンメとキャメラルはカヌレとアグリを呼んで親睦に注力する。


ミスティラは金太郎と瓜子と話をして、雲平はセムラと時間を共に過ごし、途中で真っ赤になりながら2人は消えるとセムラは盛大に鳴いた。


翌朝、見送られながらセムラの力で移動をした雲平達は海に居た。

雲平が「海?」と聞くと、ミスティラが「ああ、グェンドゥは風や雷を得意とする神獣だ」と言った。


「海関係ないですね」

「ああ、本人が海好きなんだな」

「…こっちにビャルゴゥが…、ああ、淡水魚だから海水じゃ死ぬのか…」


雲平は慣れた感じで悪態をついていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ