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彼と彼女のデザイア。  作者: さんまぐ
シェルガイ-雲平の家族。

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52/151

第52話 アグリのせいじゃないよ。

雲平が目を覚ますと小屋の中にいた。

横にはアチャンメとキャメラル。

疲れていたのだろう。2人はうたた寝していた。


雲平は「あれ?ここ…」と言ったところで、自分に何があったかを思い出す。

雲平が飛び起きると、アチャンメとキャメラルが起きて雲平に飛びつく。


「アチャンメ?キャメラル?」

「待て、姫様は打ち合わせ中だ!」

「だからクモヒラはアチャンメを撫でろ!」


雲平が何を言ってもアチャンメとキャメラルは、いいから落ち着けと言うばかりで、キャメラルは「軽食を貰ってくるから、アチャンメで癒さレロ!」しか言わない。


諦めて雲平はアチャンメを見ながら「んー…」と言うと、アチャンメを抱き抱えて胸や尻と言ったよくない場所以外を触っていくと、「あった」と言い、アチャンメを向かい合わせに膝の上に座らせて背中をコレでもかと撫で回す。


アチャンメもキャメラル同様に、初めは「お?私で癒されるノカ?嬉しいぞ」なんて言っていたが、次第に体が跳ねて「ひゃっ!?」と言う声が出てくると、体を震わせてしまう。

逃げようとしても雲平はアチャンメを逃さずに、一心不乱になって「いいねアチャンメの背中」と言いながら撫で回す。

どれだけ身体が跳ねようが雲平はお構いなしに撫で回していき、アチャンメは「バカになる!」、「おかしくなる!」、「クモヒラ!ダメだ!」と言っても雲平は止まらずに撫で回していくと、アチャンメも身体を震わせてふーふーと耐えるように息をしていた。


しばらくして「キャメラル遅いね。そう言えばミスティラは?」とようやく言い、雲平の気が済んだことがわかる。


「し…知ら…ねぇって…はぁっ…はぁっ…。キャメラルの野郎…っ……っぅ」


そこに戻ってくるキャメラルはニヤニヤと意地の悪い顔をしている。


「キャメラルぅぅっ」

「にひひ、な?ビシャビシャだろ?私はクモヒラが寝るまで空の上でやられたんだ」

「マジか」

「ひでー目にあった」


顔を合わせてゲッソリするアチャンメとキャメラル。

雲平はキャメラルを見て、「キャメラル、ご飯は?」とごく自然に話しかける。

キャメラルはヤレヤレというジェスチャーで、「クモヒラがお楽しみ過ぎて、夕飯が近いから我慢しろってさ」と言って笑った。


「じゃあなんで戻りが遅かったの?」

「アチャンメがアンアン言ってたから、大人しくなるまで待ってたんだよ」

「キャメラル!助けろよ!」


キャメラルは笑うと「入りにくかったよなアグリ」と言って、小屋にアグリを招き入れた。

アグリは顔を真っ赤にしていて「お兄ちゃんって変態なの?」と雲平に聞くと、雲平は不思議そうに「俺は何もしてないよ?」と返す。


この返しにキャメラルが「な、自覚ねーんだよ」と言って、うげぇと言う顔をする。

雲平の普段の顔を見たアグリは、雲平に「ごめんなさい」と謝る。


「変態は嫌だけど、謝られる程じゃないよ?」

「ううん。お父さんとお母さんの事」


雲平の顔が怖くなるとアチャンメは慌ててキャメラルの身体を押して、「クモヒラ!キャメラルも撫でてやれ!」と言う。

雲平はキャメラルの腕を取ると、膝の上に座らせて頭を撫でるとすぐにキャメラルは「ダメぇ!」と声を上げながら体を震わせる。


少しして雲平が落ち着くタイミングで、アチャンメが「ほらキャメラルの尊い犠牲を無駄にすんな。アグリ、クモヒラに話せ」と言いアグリが頷く。


「お兄ちゃん…って呼んでいい…かな?」

「いいよ」

「あのね……。私は…本当のお父さんとお母さんを殺したの」


アグリの両親は、シェルガイとの交流を持ってすぐに日本を離れていた。

幼子のアグリには厳しい世界だったが、身体強化と氷魔法の適性もあってなんとかなっていた。

だが安定のない世界で魔物を狩る中に、怪我で片腕を失った父親が日に日に腐っていく。

妻が日本に帰る提案をしたが、激高するだけで話にならない。


それどころか、どんどん減っていく生活費に心細くなった父親は、母親に身体を売れと言い出した。


雲平は聞いていて怖い顔になってしまいながら、キャメラルの頭を撫で続ける。

キャメラルは必死に「ダメ!バカになる!アグリの話が聞けなくなる!」と言うが、雲平は何度キャメラルが身体を震わせようがお構いなしに撫で続けた。


アグリの父が腐っているのは分かったが母も腐っていた。

アグリを変態に売り飛ばそうとした。

その金でやり直そうとする両親。

アグリもバカではない。


若干9歳で危険を察知して逃げ出した。

頼る者の居ない世界だったが逃げるしかなかった。


「逃げても追い付かれた私は、アイスナイフでお母さんを殺してからお父さんを殺したの」

「うん。良くやったね」


雲平のコメントに、アグリは「ふふ」と笑うと、「お父さんと同じ事を言うね」と言った。


今の雲平に金太郎と同じと言われても嬉しくない。むしろ腹立たしい。

その気持ちはキャメラルを撫でる手に込められるわけで、キャメラルは「まだ!?まだ強くなる?ダメだよクモヒラぁぁ」と鳴くが、雲平は止まらないしアチャンメは真っ赤な顔で「やば、私なら足腰立たなくなるぞ」と言うだけだった。


「どこを逃げたかわからない。必死に逃げたらお父さんとお母さんが保護をしてくれて、なにがあったか話したら『偉いぞ。良くやった。俺には娘がいた事がないから、娘にならないかい?』って言って連れてきて貰ったの。お父さんはそれから世界中を旅して、2年前からジヤーの兵士になって、ビャルゴゥ様の護衛隊に選ばれてここに住んでるの」


アグリはそう説明をしてきた。


「私…お父さんとお母さんに鍛えて貰ってるから、そこそこ強くなったけど、どうしても日本人と対峙すると、殺しちゃったお父さんとお母さんを思い出して動けなくなるんだ」


この言葉にアチャンメが「それで…」と国府台帝王との戦いを思い出す。

キャメラルは必死に「アチャンメ!代われ!代わって!お姉ちゃん!助けて!」と言いながら身体を震わせているが、アチャンメはしっかり無視をしている。


「だから君はシェルガイの人になりたいんだね」

「うん。日本に居たのは少しで、残りは全部シェルガイだからシェルガイがいいの。だからよもぎの名前は使わない。お兄ちゃんは名前を連れて行ってくれるんだよね?」

「うん。俺は連れていくよ」


雲平の言葉に安堵するアグリは一度頷いた。


「ならね…。今川よもぎ…これが私の名前。今川大、今川円…これが私が殺したお父さんとお母さんの名前。連れて行って?」

「うん。連れていくよ」

「ありがとう。私はお父さんがアゴールだからアグリなんだ」

「グリーンに安倍川の安を足してアグリ、父さんは金太郎だからゴールドでアゴールだね。母さんは瓜子だからメロンか…」

「うん。ごめんね。私が日本に行きたくないから、お父さん達は日本に帰らないって…」

「アグリのせいじゃないよ。アグリを理由に帰らないで良くしてるんだよ」


雲平の言葉に合わせて小屋のドアが開き、「そう言うこった」と言って金太郎と瓜子が入ってくる。


「アグリ、言ってるだろ?俺達はシェルガイが好きなんだってな」

「お父さん…」


「雲ちゃん、少しだけ3人で話さない?」

「母さん…。良いけどまた暴れるかもよ?」

「うふふ。雲ちゃんとお母さんは仲良しだから、やられるのはお父さんだけよ」

「酷えなぁ…」


「荒熊騎士団のお二人は、よかったらアグリとお風呂に入ってくださらない?」

「は?良いけどヨォ」

「でもビャルゴゥはどうすんだよ」

「あの野郎、ミスティラさん連れて行ったら出直してこいだとよ。明日だ明日。アグリ、姉ちゃんになって貰ったなら風呂入ってこい」

「…うん」


アグリはアチャンメ達を連れて風呂に行く。

キャメラルは足をガクガク言わせていて、アグリに肩を貸してもらっていた。

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