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彼と彼女のデザイア。  作者: さんまぐ
シェルガイ-雲平vs国府台帝王。

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第49話 お父さんがアグリの名前をくれたの。

国府台帝王は、移動中にさまざまな事を蜥蜴騎士から教わった。

蜥蜴騎士は純粋な魔物で、コジナーには数年前にオシコが産み出した半魔半人の蜥蜴騎士も居るが、強くなった個体があの規模の穴を通り抜ける厳しさと、全ての蜥蜴騎士が壁を越えるまで、統率を欠いてしまい野生に戻る個体も出てしまうので、国府台帝王に期待しているという話だった。


そして自身が特別なのだと痛感したのは、声かけをすると次々とゴブリン達が集まってくる事で、国府台帝王からすれば学生時代を思い出して気持ちが良くなっていた。


ビャルゴゥの神殿攻略は簡単な仕事だったが、途中から流れが変わっていた。

連れてきたゴブリン達の大半は雲平の魔法で焼かれてしまった。



・・・



雲平は国府台帝王に何があったか、どうにか出来ないかを一瞬だけ考えた。

チュイールを倒した後、探す事をしなかった。

だが日本で家族に伝えてほしいとキチンと言った。


途中からオシコへの怒りに変換されていた。


「アチャンメ、俺は3番?」

「2番だ。キャメラル!対人戦闘だと思え!」

「了解だ!」


キャメラルが国府台帝王の右から斬り込んで、防がれる前に雲平が切り掛かる。


国府台帝王は反射神経のみで対処をして、雲平の剣を防ごうとすると、今度はアチャンメが逆から斬り込んで、キャメラルとアチャンメの攻撃が国府台帝王にヒットをする。


そして、雲平は容赦なく国府台帝王にサンダーフォールを撃ち込む。


「うぉう!?」

「危ねえって!」

「大丈夫。今の俺に誤射はないよ。これを続ければ勝てる?」

「ああ、パターンを変えれば…」


アチャンメは言葉を途中で止めて、忌々しそうに「クソっ、マジかよ」と言うと、キャメラルが「アイツ…人を喰ったな。魔法を使うなんて何人食ったんだ?」と続けた。


国府台帝王はヒールを唱えて傷を癒していた。


「ヒール?」

「多分魔法使いを何人も食って魔法を覚えたんだ」

「あれが人喰い鬼の厄介な所だ」


人を何人も食べた所に怒りを覚える雲平だったが、国府台帝王は「魔法使いは1人だけだ」と言うと、傷の癒えた身体で殴りかかってきた。


国府台帝王は徹底してアチャンメを狙う。

傷を恐れない戦いはやりにくかった。



・・・



旗色が悪くなり始めた所で、国府台帝王は更に行動をした。


ウォーターガンの魔法を弱めに放ち、あたり一面を濡らしてアチャンメ達も濡らしてしまうと「雷は撃てないな」と言った。


この言葉に雲平が舌打ちをしながら剣を振るうが、やはり問題なのは人喰い鬼の再生力と体力。そしてヒールの回復だった。


「ニャロ…クモヒラはアグリを抱いてるから長期戦はキチいぞ」

「でもこのままじゃ…少し下がってパウンドにやらせるか?」

「ダメだ、伏兵が居るはずだからミスティラとパウンドは使えねえ」

「マジかよクソウゼェ」


ポンポンと会話のラリーが進むアチャンメとキャメラル。

その間もコレでもかと国府台帝王を切り続けていた。


雲平は会話に参加せずに、「殺さなきゃ」と呟くばかりだった。


「殺すの?」


そう聞いたのはアグリだった。


「え?」

「あの人を殺すの?日本人だよ?」

「そうだね。殺すよ。殺して名前を日本に連れて帰るんだ。こんな世界で訳もわからず死んでも、日本の家族は帰りを待つ。だから俺が殺して、日本に連れ帰ってあげるんだ」


この言葉にアグリが「…後で名前を教えたら、その人も連れて行ってくれる?」と聞いた。


雲平はアグリの顔を見ずに「うん。君は?シェルガイで生きるの?」と聞き返すと、アグリは「うん。私はシェルガイが好き。だからよもぎの名前じゃなくて、好きな色でグリーンって名乗ったら、お父さんがアグリの名前をくれたの」と返ってきた。


「君はシェルガイ人になりたいから、日本人を殺したくないの?」

「うん。日本人が死ぬのは怖いよ」


「そう。わかった」

「ねえ」


「何?」

「お父さんの匂いがするし、アチャンメお姉さんのお兄さんなら、私もお兄ちゃんって呼んでもいい?」


「いいけど、アチャンメとそんなに仲良くなったの?」

「今会ったばかりだよ。アチャンメお姉さんはすごく強くて頼もしくて、これからもお姉さんって呼びたくなっちゃったんだ」


「そう。君の特技は?」

「身体強化と氷魔法。でもお母さんから集中が甘くて散りやすいって言われてて、アイスナイフしか作れない」


「散りやすい?」

「うん。アイスウェイブも失敗して、ちょっと寒い風だから、大魔法の氷結結界なんて夢のまた夢」


雲平は今の会話でやる事が見えていた。


「クモヒラ!何アグリと話してんだよ!」

「余裕かますな!」

「ごめん。やる事が決まったよ」


そう言った雲平の顔はとても怖いもので、アチャンメとキャメラルは背筋が凍った。


「キレたクモヒラは怖えよ」

「姫様居るんだよな?居なかったらアチャンメだからな」


キャメラルが耳まで真っ赤にして怯えていて、アチャンメは不思議そうにそれを見ていた。


「アグリ、作戦を言うね。アグリが頼みだからね」

「えぇ!?怖いよ!日本人はやだよ!」

「大丈夫。アグリはサポート。でも君がやれないと困るからね」


雲平の作戦に「出来るかなぁ…」ともらすアグリだったが、言われた通りに国府台帝王に向けてアイスウェイブを放つ。

少し寒いが全身を凍らせる波が飛んでこない事に、国府台帝王が高笑いをして「その弱さが気に入った!お前を連れ帰って人喰い鬼にしてやる!俺の女になれ!」と言う。


「パス!お断り!アイスウェイブ!!」

「無駄だ!」


国府台帝王は文字通り涼しい顔で、今も雲平今もを狙っていた。


「いいよアグリ、アチャンメ達も巻き込んで」

「うん。頑張るよお兄ちゃん!」


そのあと、3発のアイスウェイブを放ったアグリが疲れを口にする頃、雲平は「ありがとうアグリ。これで奴を殺せるよ」と言うと、「アチャンメ!キャメラル!斬り込んだら距離を取って体の氷を落とせ!そうしたら一斉攻撃!アグリ、奴のウォーターガンだけは凍らせて!」と言って前に出た。

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