第47話 力が欲しい。
女の言葉に従うように鉄格子の中の3人を見る国府台帝王。
金貸しは「チャラだ!お前の借金はチャラにしてやる!私の部下にしてやるぞ!」と言う。
チャラも何もチュイールに買われて借金などない。
「ムカつくわよね。殺したいわよね。でも今の貴方に力は足りない。私、復讐とか仕返しは本人がやるべきって思ってるの。だからそこは助けないわ」
そして金貸しの横にいる男は眼力で睨みつけてくる。
「アイツは剣士だから剣があったらヤバかったけど、無いなら女と一緒、オークくらいしか倒せないわ」
オークくらいと言われても、国府台帝王は一度辛勝しただけで、二度目以降は勝ち目がなかった。
そのオークなら倒せる男への復讐は想像もつかない。
国府台帝王が愕然の表情でゴリコニに視線を移した時、女は誘惑するように言う。
「あの女はどうする?溜まってるんじゃない?好きにしてスッキリしちゃいなさいよ。別に好きにしていいわよ。彼女…じゃないわね、ペットにする?」
この言葉を聞いたゴリコニは、国府台帝王に向かって「仕事だから我慢したけど、アンタなんかごめんよ粗チン弱虫!」と吐き捨てて睨みつけた。
「…粗チン?」
国府台帝王の思い出では高校時代はプレイボーイの名をほしいままにした。
キスも初体験も中学の時に先輩から誘われて済ませた。
それ以来、田舎のマンモス校で学校中の女子を、よりどりみどりに選んで性欲をぶちまけた。
周りの連中が「1人で一晩に何回した」、「兄貴の部屋にあったDVDを拝借して観たら、セクシー女優がすごく良かった」、「背伸びして国道沿いのアダルトショップで擬似ホールを買ったがたまらなかった」と話すのを聞くたびに、鼻で笑い呆れながらソイツらが想いを寄せる女を呼んで抱いた。
その時に女達は皆「ありがとう」、「嬉しかった」と言ったし、行為中は悦びを見せていた。
その国府台帝王を粗チンと評したゴリコニは、「だから言わなきゃわかんないのかよ!喜んだフリしてやったら、勝手にヒートアップして1人で終わらせてたダケだろうが!」と続けた。
国府台帝王は真っ赤を通り越して真っ青で震えていた。
女は「殺しちゃいなさいよ」と耳打ちをしたが、国府台帝王に実力はない。
国府台帝王は泣き震えながら首を横に振っている。
「なら地球に逃げ帰る?クラフティに言ってあげるわよ?」
地球に逃げ帰る。
一瞬頭をよぎったが、あの抱いてきた女達の顔を思い浮かべたら帰る事が怖くなった。
「………しい」
「なぁに?聞こえないわ」
女はニヤリと笑いながら聞き直すと、国府台帝王は「まだ帰れない。成さずに帰れない。力が欲しい」と言ってしまった。
「力ねぇ、あるわよ」
女の言葉に目を見開いて詰め寄る国府台帝王は、「どうしたらいい!?」と聞いていた。
「私は魔物使いだから私の魔物になりなさい。そうしたら魔物の力で強大になれるわ。ああ、人喰い鬼なんていいわね。食った人間の力を手に入れられるし、力も強くなるし、あの女なんかに負けないわ」
国府台帝王の耳には「力が強くなる」、「ゴリコニに負けない」の部分しか入らない。
そして「あなた、人喰い鬼のイチモツって見たことある?凄いのよぉ、人間なんかで勝てるわけないわね。きっとあの女も満足してくれるわね」と言うと、国府台帝王は「やってくれ、俺を魔物にしてくれ」 と言った。
女はニヤリと笑うと「嬉しいわ。じゃあすぐにやってあげるから、仕返ししちゃいなさい」と言って国府台帝王を部屋に連れ戻した。
すぐに女は人喰い鬼を連れて戻る。
大人しく女の後ろで立ち尽くす人喰い鬼を見て、「言う事を聞くんだな」と言うと、女は「うふふ。私の命令なら聞くけど、部下が欲しいのよ。私も忙しいから部下に任せて没頭したい仕事もあるのよ。この子は見てないところでサボるから頼めないのよね」と言った。
女はオシコと名乗った。
元々コジナーの人間で、最終目標はコジナーを封じた結界を解く事で、その為の部下を探していた。
「あなたはこれから半魔半人になる。私の力で体内に人喰い鬼を取り込んで適宜能力を使えるようになるわ」
特別な何かは必要無かった。
オシコが自分と人喰い鬼の間に立って手を翳すと強烈な眠気に襲われた。目を覚ますとベッドにいて「おはよう。生まれ変わった気分はどう?」と言われた。




