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彼と彼女のデザイア。  作者: さんまぐ
シェルガイ-強敵の裏側。

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第45話 これしか残っていない。

国府台帝王は、雲平がかつて自分が保護を求めた少年であることに気がついた。

あの時は雲平を地球人、それも日本人とわかったので保護を求めた。

あの時の顔は覚えている。

弱々しい、日本からシェルガイに来たばかりの顔。

それなのに横に2人の少女を帯同させていた。


自身が目指して頓挫したものがそこにあった。


だが今見えた雲平は剣を軽々と振るい、オークや人喰い鬼を両断し、見たこともない雷の魔法で、軒並み魔物達をケシズミに変えてしまっていた。


そして少女達になつかれ、少女を抱きしめながら自身に向かって迫ってくる。

目指し夢見た姿。


国府台帝王は、生まれ育った群馬ではそこそこやれる方だった。


顔も、地元では格好いいと言われた。

趣味で始めた軽音楽にしても、高校の学祭で披露すれば女子達は群がる。

スポーツは苦手なものもあったが、大概学年上位にいた。

学力は悪くはないが良いわけでもない。


中途半端な成功体験を語れてしまう人生。

それが良くなかった。


何の努力もしてこなかった。

努力しなくてもやってこれた。


そして進学。

群馬を出て東京に行った時、壁にぶつかった。


顔はもっといい奴がコレでもかといた。

軽音楽は本気の奴とは何もかもが違っていた。

運動はそこそこ出来たが、だから何になるのかとなった。

勉強も落第ではないが、何になるのかと言った成績。



国府台帝王は詰んだと思っていた。

颯爽と地元を出たのに、錦も飾れずに凱旋なんか許されない。

国府台帝王の人生プランでは、大学でも何もせずに皆に好かれて、楽器を弾けば黄色い声援に包まれて、トントン拍子で遊ぶように楽しむ4年間。

当然地方の親達も知る企業に入社して、立派になって凱旋をする。


その時には東京で見つけた綺麗な女を連れて帰る。

孫を望む親には悪いが、毎回違う女を連れ帰り、言い寄る女達から結婚相手を探そう。


そんな甘い考えは秒殺された。



半引きこもり、大学と家の往復のみの生活。

次第にスマホを見る時間が増えて、無料マンガにもあった異世界に行って大活躍する話を読んで、「これしか残っていない」と思うようになり、親の反対を押し切って大学を辞めてシェルガイに行った。


夢見た新天地。

だが無理だった。


入国時にレーゼで書かされた同意書はロクに読まなかった。

詐欺なんかの警告は鼻で笑った。


これが翌日にレーゼの街で詐欺に遭うくらい愚かなら、逃げ帰ったかも知れない。

だが国府台帝王はそこそこやれてしまう。


良くない成功体験を重ねてしまい、ジヤーとの国境付近まで冒険できてしまった。


だがシェルガイ適性は低かった。

ウォーターガンの魔法くらいしか使えない水魔法の適性のみで、弱い魔物の排除か立ち寄った村の屋根掃除や畑に水を撒くことしか出来なかった。


何も成せず。


これではどうする事も出来ない。

すぐに観光気分でしたと帰るわけにもいかない。


自分は国府台帝王なのだから。


この言葉で自身の首を絞めていた。

国府台帝王は冒険者としてダメなら、次は女だと狙いを変えた。


シェルガイ美女は弱い国府台帝王を鼻で笑って、「兵士が守ってくれて小物しかいないジヤーやレーゼに帰りなさい」と言ってしまう。


城の周りは危険な魔物から倒されていくので、弱い冒険者が弱い魔物を倒して日銭を稼ぐのにもってこいだった。


帰る。


この言葉が1番嫌いな言葉になっていた。


逃げずにいたら女が1人寄ってきた。

名前はゴリコニだった。

酒を飲んで苦労を同情され考えを肯定された。


こんなに美味い酒はないとゴリコニと飲み明かし、肌を重ねた国府台帝王は翌朝装備も金も全て奪われていた。


詐欺だった。


絶望しても遅かったし現実は目の前にある。

生きる為に働くしかなかったが、屋根掃除はすぐに必要なくなる。

畑も雨季に入り、逆に迷惑がられる。


レーゼに帰るにしても装備はない。

ウォーターガンだけで国境付近の強い魔物とは戦えない。

山賊を殺す事もままならない。


またしても詰んだ。


努力をしてこなかった国府台帝王は人を見る目はない。


「また乾季になったら君の力は金になるんだろ?金持ちでこの辺りを仕切ってる人を紹介するよ」


そう言ってきた男を見た時、学生時代の何もしなくても出来た友達を思い出して、ホイホイ信じたら悪徳な金貸しで、すぐに借金で首が回らなくなり奴隷落ちした。


檻の中、ボロ切れを着て周りから聞こえてくる嗚咽で頭がおかしくなりかけた。


たまに差し込む日の光がご褒美に思えるようになった頃、チュイールに買われた。


チュイールは食だけはキチンとしていた。

それは買ったのに役に立たないと意味がないからと言っていた。それ以外は劣悪だった。


レーゼに住む一部の貴族達の中には、奴隷をペットのように連れ歩いて自慢する連中が居て、チュイールは数で競う男で、毎回違う奴隷を連れ回す事を先輩奴隷から聞いた。


そもそもゴリコニと出会った村は詐欺村だった。

そこそこの値段の宿屋に飯屋、屋根掃除の仕事も畑の水やりも、全部滞在を誘う為のものだった。

滞在をさせたらゴリコニのような刺客が迫る。

女に興味のない奴は、冒険者を目指していれば冒険者チームが、「欠員が出たんだ。助けてくれないかな?」と言って迫り、チームに損害が出たと言って破産させる。


別の先輩奴隷からその事を聞いた国府台帝王は怒りに染まったが、どうする事も出来なかった。

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