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彼と彼女のデザイア。  作者: さんまぐ
シェルガイ-神獣武器を求めて。

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第44話 援軍来たから安心シロ。

国府台帝王を見たアチャンメは、「お前、何処かで?」と言うだけだったが、アグリは「相手が日本人…」と言って青ざめて動けなくなる。


「おい!アグリ!どうした!?」

「日本人はやだ…殺したくないよ」


震えてうずくまるアグリにアチャンメは舌打ちすると、国府台帝王は自身の身に何が起きたかを語り出した。


「お前らのせいでチュイールが殺されて、野垂れ死ぬ前の俺はコジナーに拾われて、魔物とひとつにされたんだ。見ろよこの身体…ひひひ…人間じゃねぇ」


そう言うと、泣きながら「魔物と一つになった俺はゲートを潜れねえ、日本にもう帰れねえんだ!」と言い、人喰い鬼の顔に戻って蹲ったアグリに向けて拳を振り上げた。


アチャンメは「アグリ!」と言ったがアグリは動けずにいる。

アチャンメは舌打ちと同時にアグリを抱きかかえて、「邪魔だ、折角きたのに戻すしかネエ!」と言ったが、国府台帝王はアチャンメとアグリを逃すことをせず「お前達!あの連中は後だ!この2人だけを何が何でも殺すぞ!」と言って襲いかかってきた。


魔物達は国府台帝王に従いアチャンメを狙う。

統率の取れた動きは信じられないものだった。


アチャンメに狙いが集中したこの状況は、ある意味ミスティラ達からすれば立て直せるが、ここで助けに向かうと伏兵も現れる可能性がある。


そこに戻っていた中年男性、隊長が前に出ようとした時、ミスティラの前を駆けて行った二つの影があった。


「ミスティラ、動かないって事はなにかあるよね?ならそっちは任せます。こっちは俺がやります」

「俺たちだっての!アチャンメは1人で前に出しちゃダメだって言って……あ、言ってなかった。わり〜!」


風のように駆け抜ける2人。

ミスティラは「お前、追いついたのか!?」と声をかけると、振り返る事なく「はい!アチャンメは俺が助けてきます!」、「だから〜、私もいるっての!クモヒラ!」と言って2人は走って行ってしまった。



・・・



追いついた雲平とキャメラルは一気に駆けていく。


「ニャロ、ウジャウジャいんぞ?でもアチャンメがいるから魔法は撃つなよな」


キャメラルの冷静な判断に、雲平は更に冷静な顔で「いや、撃てるさ、アチャンメならわかってくれる」と言い、駆けながらアチャンメに向かって歩いているオークに向かってサンダーフォールを放つ。


落雷と共に黒焦げになるオークを見て、振り返る数匹の魔物に向かって「キャメラル!ジャンプだ!雷がアチャンメに届きそうなら止めるから言って!」と指示を出した。


「私を焼くなよな!」


そう言ってキャメラルが飛ぶと、雲平はサンダーウェイブを放つ。


キャメラルは見慣れた赤い革鎧まで届かない雷を見て、「まだ余裕だが次は当たる!」と言うと、雲平は「ありがとう!キャメラル!アチャンメまで止まらずに斬り伏せるよ!」と言って剣を構えた。



キャメラルは嬉しそうに前に出て、次々にゴブリンを蹴散らして雲平に、「クモヒラ!人喰い鬼とオークは馬鹿力だから掴まんなよ!」と指示を出す。


雲平はそれだけでキャメラルの言いたい事を理解して、オークと人喰い鬼に狙いを向けてサンダーボルトを放って一撃で焼き殺していった。


「雷!?」


突然の落雷に驚くアチャンメは、空に飛び上がってきたオレンジ色の革鎧を見て最愛の妹が戻った事を察知した。


「キャメラル!てことは雷はクモヒラだな!」


アチャンメは回避をしながら、今もアチャンメの胸で震えるアグリに、「援軍来たから安心シロ」と話しかけると、「援軍?お父さん?」と聞く。


「お前の父ちゃんじゃねえよ。私の妹と兄ちゃんだよ」


アチャンメは答えるとアグリを抱いたまま、オークの頭を狙って飛びながら雲平の元を目指した。



アチャンメはかなり無理をしている。

長時間の連戦で疲れた所に、アグリまで抱いてオークの頭を足場にして雲平の元を目指す。

掴まれたら一巻の終わりだったが、今は早く合流してキャメラルにアグリを任せて雲平と共に国府台帝王をうち倒したかった。


「クモヒラ!」

「アチャンメ!?何抱えてんの!?」

「アグリだ!援軍だったんだけど敵見たら動けなくなった!」


アチャンメの説明に意味が分からない雲平。

突然の敵襲で動けないならまだしも、援軍が敵を見て動けなくなった理由がわからなかった。


「はぁ?敵は何!?」

「アチャンメ!人喰い鬼ジャネーノカヨ!?」

「人喰い鬼でも人間混ぜて作ったとか言ってやがって、会話はするし魔物に言う事聞かせ…」


ここでアチャンメはようやく国府台帝王の事を思い出して、「あー!クモヒラにヘブンチタニウムの剣を買ってやった時の奴隷だ!アイツが魔物になったんだ!」と言った。


国府台帝王の名を聞いて、聞き捨てならない雲平。

助けを求め、血まみれでも必死に家族に助けと生存を伝えた存在。

日本で保護まで求めた。

だがアチャンメの言葉通りなら、最奥の人喰い鬼がその国府台帝王だということになる。


アチャンメは「キャメラル!アグリを渡すから陣に戻って来い!私がクモヒラと人喰い鬼を倒す!」と言った。


だが雲平は「……魔物と人を?オシコがやったのか?」と言うと、「キャメラル、身体強化を更にかけるから後始末よろしく。アチャンメ、キャメラルと俺と3人で倒そう」と続けた。


その顔はチュイールを殺した直後の、ブランモンを犠牲に生き残った時の顔だった。


「げ!?」

「クモヒラがキレた!?」

「アチャンメ、今すぐこっちに来れるようにする。最初は真っ直ぐだ。それ以外動いちゃダメだよ」


今もゴブリンの群れごとオークを切り裂いた雲平は、そのまま両手を前に突き出してサンダーデストラクションを唱える。


アチャンメの両サイドの魔物は黒焦げになり、雲平が「横から来て!キャメラル!前の奴らを足止めして!」と言って指示を出した。


キャメラルは雲平の気迫に飲まれながらゴブリンを切り裂いて、すれ違うアチャンメに「アチャンメ、姫様居るよな?」と聞く。


「おう、陣に控えてる」

「良かった…。アンコもいねーから私になるとキチーんだよ」

「は?何言ってんだ?」

「後でアチャンメも頭撫でられて来いって」


一瞬の会話。

アチャンメは不思議そうな顔で駆け抜けると、雲平が手を広げるのでアグリごと抱きつく。

身体強化をしている雲平からすればアチャンメもアグリも軽い。


「ただいまアチャンメ」

「お帰りクモヒラ。攻め込むのどうすんだ?」

「その子は俺が抱く。アチャンメとキャメラルは問題ないよね?セムラさんの代わりがこの子だ」


アチャンメは嬉しそうにニヤリと笑うと、「任せろ!」と言って、「アグリ、私達の兄ちゃんが来てくれたからな。もう怖くないぜ。あの人喰い鬼を倒して戻ろうな」とアグリに声をかけながら雲平に渡す。


雲平は顔を見ずに「出来たらしがみついてね」と声をかけると、アグリは頷いて雲平の首に手をかけてから「お父さんの匂いがする」と言った。


「あはは、地球人だから似てるのかもね…危ないからしっかり捕まるんだよ」


雲平はキャメラルを下げると、サンダーウェイブで魔物の群れを蹴散らして国府台帝王と自分達だけにした。

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