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彼と彼女のデザイア。  作者: さんまぐ
シェルガイ-神獣武器を求めて。

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第42話 ミスティラぁぁっ!暴れんぞ!

ビャルゴゥの神殿は、コジナー領に近い事もあって魔物達の襲撃を受けていた。

ジヤーの駐在兵によってなんとか守られているが、度重なる襲撃でガタガタになっていた。


そこに到達したセムラ達は、隊長に挨拶をしようとした所でコジナーの襲撃に遭った。

魔物達は統率が取れていて波状攻撃を加えてくる。


アチャンメが近くの兵士に声をかける。


「オイ!私は荒熊騎士団アチャンメだ!今から戦列に参加する。こっちはセムラ姫と仲間達だ。覚えとけ。皆に通達をシロ!」


その後でカヌレに「カヌレは姫様といろ、パウンドとミスティラは私と討伐だ」と指示を出した。



魔物達はよりどりみどりで、主にオークやゴブリン、人喰い鬼で組織されていた。


「チッ、私の嫌いな大型種ばっかりダ」

「まあ大物は私が魔法で蹴散らす。パウンドは人喰い鬼を相手しろ、組まれたら千切られるからな?」

「了解です。じゃあ沢山のゴブリンはアチャンメちゃんよろしく」

「ああ…、行くぞ!」


そう言ったアチャンメは高揚していた。

どうしてもセムラを守る役目があった手前、思い通りに動けずにキャメラルや雲平に気を遣っていた。


だが今はセムラも雲平もキャメラルもいない。

3人のコンビネーションも良かったが、キャメラルの姉として我慢していた。


「ミスティラぁぁっ!暴れんぞ!フォロー任せたからナ!」

「了解だ。お前こそ私の魔法の隙間埋めを怠るな」


凶暴な顔になったアチャンメは、「退け駐留兵!私らが遊撃してヤルから、撃ち漏らしを狙えぇぇっ!怪我人は邪魔だからスッコンデロ!!」と言うと、駆け出してゴブリン達をコレでもかと切り刻む。


123456789…

瞬く間に10体のゴブリンを切り刻んだアチャンメ。

ここにキャメラルが居れば息継ぎの間に次の群れを任せるし、オークの足止めをやらせる。

雲平が居れば雷魔法を撃たせた。


だが居ない。


一瞬で取れるだけの行動をしたアチャンメは、息継ぎをしないで焼ける息が喉にまとわりついて苦しいことすら嬉しくなって、「ヒュッ」と言う小さな息継ぎのみで、さらに10体を切り刻んで後ろを向くと、アチャンメに向けて手を伸ばすオークが5体いた。


だがアチャンメはその先に手を構えるミスティラと駆け出すパウンドが見えて、ニヤリと笑うと息を整える。


「立ち上がるな!伏せていろ!」


ミスティラの声に合わせて屈み、前を向くと背後からは「ウインドブレイド!」と聞こえてくる。

その直後、聞き覚えのあるぐちゃぐちゃと言う音。

振り返らなくてもわかる。

風の刃がオーク共を切り裂いた。

ウインドカッターなら飛距離はあるが、重いウインドブレイドを遠くまで飛ばして更に切れ味を減衰させない辺りは賢者の面目躍如だ。


アチャンメは追加のゴブリンをコレでもかと切り刻むと、人喰い鬼の射程範囲に入ってしまう。


あの、剛腕を喰らえば身体は保たない。

だが問題なかった。


「つゆ払い感謝します!」


そう言って、アチャンメの二の腕くらい太い槍を枝のように振り回すパウンドの攻撃が、人喰い鬼共をハチの巣にしてしまう。


「バーロー、お前がつゆ払いダヨ」

「マジすか?まあ一度戻りますよ」

「んでだよ?このまま攻めようぜ?」

「ミスティラ様はまだ10歳で体力的にキツいですよ。防衛戦にしますよ」

「マジか。クソっ」


アチャンメは渋々引き下がると、今の一幕を見ていたジヤー兵達からは歓声が起きていて、「照れるっての。別に普通ダロ?」と言っていた。



防衛戦に切り替える為に隊長を探したが不在だった。


「逃げたノカ?」

「いえ、奴らの狙いはビャルゴゥ様の神獣武器。隊長と副隊長と護衛でビャルゴゥ様の元に行っています」

「マジかよ。現場指揮はどうする?」


アチャンメの言葉に、兵士は申し訳なさそうに「アチャンメ様にお頼みしたいのですが…」と言う。


「私!?ミスティラ、代わってクレ」

「ふむ。致し方あるまい。戻るまで…ビャルゴゥは頑固だから何を言い出すかわからぬがこの場を死守しよう」

「ミスティラ様、質問です」


パウンドの言葉に心の底から嫌そうな顔をしたミスティラが、「なんだ?」と聞く。


「飛んでくる魔物とか、他の出入り口はないんですか?」


まともな質問にミスティラは、「この山自体がビャルゴゥの領域だ。空を飛べば奴の水弾でイチコロだ、山にしても山道以外を進んだら、水流で洗い流される」と説明をした。


「するとここを死守すればイインダナ!」

「そうなる」

「よーし、ミスティラは魔法使える連中と組んで戦えよ。後はどうする?」

「…仕切ってるじゃないか。とりあえず魔法隊は組む。槍を持つ連中はパウンドと戦え。アチャンメは私とパウンドの隙を埋めるんだ」

「りょうかーい!んじゃあ隊長さんとかが戻ってくるまでに終わらせようぜ!」


アチャンメは腕をブンブンと振り回してニヤリと笑った。



・・・



アチャンメが笑えたのはここまでだった。

魔物達も完璧に統制が取れていて、アチャンメの各個撃破にやってきた。


「ンダ!?おい!自信のネー奴と、ちょっとでも怪我した奴は下がれ!」


徹底的にアチャンメが引きつれる連中を潰しにかかり、援護のパウンドを無視して、わざとミスティラや負傷兵に狙いを定めて、再度手薄になったアチャンメ達を狙う。


この300年、誰も聞いたことがない戦法。

魔物達がそこまでやる事を誰も見たことが無かった。


アチャンメだからこそ無事に生き延びて、カウンターで魔物を殺せているが、並の兵士ならとっくにやられている。


「アチャンメ!離れすぎるな!パウンド!魔法隊に一斉射をさせたら一気に押し返すぞ!」

「了解です!でもミスティラ様、俺とアチャンメちゃんとミスティラ様の3人で奴らの頭を叩きに行きませんか?」

「ダメだ!それも奴らの狙いだ!知識がある以上、伏兵が居るはずだ!私たちが離れれば伏兵が押し入ってきて、セムラとカヌレが被害に遭う!あの頭はおそらく囮だ」

「囮って言っても知能もありそうですよ?」

「そんなことはわかっている。人喰い鬼に知能?ちっ、オシコの奴め…、何をしたんだ?」


ミスティラは、約280年ぶりに会った妹の顔を思い浮かべて忌々しい気持ちになる。

そしてオシコ…キョジュの顔を思い浮かべて嫌な考えに囚われていた。


「今はそれよりも掃討する!魔法隊!火炎魔法の使い手は上空に向けてファイヤーボールだ!風魔法の使い手は私と共にウインドブラストを行う!制御は私がやる!他の魔法の使い手は接近する小物を各自蹴散らせ!パウンド!お前の槍隊はアチャンメに一瞬無理をさせて、大物が前に出たら一撃で突き殺せ!」


ミスティラの指示で放たれたファイヤーボールは、狙い通りに着弾をする範囲攻撃になり、ゴブリンやオークをコレでもかと焼き殺す。


落下したファイヤーボールで燃える地面が壁となるが、それを突き抜けてきた個体をパウンド達が貫いていた。

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