第36話 コレジャネェヨ。
キャメラルはかのこの家ではなく雲平の家を好んだ。
この部分はセムラと違っていたが、後は概ねセムラと変わらずにいた。
広い庭のあるかのこの家の方が、バニエの訓練に適しているので、日中はかのこと過ごして夜ご飯を食べると雲平の家に帰る。
「なあクモヒラ、なんで婆ちゃんと住まないんだ?」
「婆ちゃんはこの家の電器とかが嫌いなんだ。俺も婆ちゃんの家だと、機械類が使えなくて不便だから仕方なくね」
「へぇ、面白いのになー」
キャメラルはシーリングライトのリモコンで明るさを調整して遊んでいて、風呂の支度をしたあんこから、「キャメラルちゃん、遊ぶと壊れちゃうよ〜」と言われて、「え!?これ壊れるノカ!?クモヒラごめん!」と慌ててリモコンを手放す。
雲平はそれを見ながら、初日にキャメラルを連れ帰ってからの出来事を思い出していた。
・・・
かのこの家に着くと、モジモジとするキャメラルに、かのこがどうしたのかと聞くと、照れたキャメラルは「姫様が持ってた魔獣服が羨ましーんだ。私も…欲しい」とモジモジと頼むと、かのこは嬉しそうに「お洋服ね!行くわよあんこちゃん!雲ちゃん!」と言って外に出る。
最初はあんこと量販店に行って、下着からカジュアルな服装を一通り揃えると、キャメラルは「コレジャネェヨ」と半ベソになったが、雲平が「似合ってるよ。それにあの服はそんなに無いはずだから、普通の服も買わないとね」と説明をして、キャメラルを受け入れさせる。
かのこの凄いところは、雲平には出来なかったが、セムラとキャメラルの滞在費はしっかりとバニエに請求しているので、懐が痛むことなく楽しんでいて、あんこと一緒に「キャメラルちゃんは細身だから、ゆったりしたお洋服が可愛いわ」とコーディネートをして楽しむ。
そして最低限の食器を買うと、待ってましたとばかりに商店街に連れて行く。
かのこからすれば自慢の孫をお披露目するように連れまわし、キャメラルからすれば新発見の連続で、「婆ちゃん!アレ何!?」、「クモヒラ!甘い匂いだ!」、「アンコ!こっち行こう!」とやっている。
そんなキャメラルは魔獣服。オバちゃんトレーナー、オバちゃんセーターの店に行くと「ふぉぉぉっ!?」と叫んで卒倒した。
「クモ…ククク…クモヒラ!?す…すすす…スッゲェ!!」
そう言って感動したキャメラルは、カヌレが借りた豹柄トレーナーを手に取って「うわぁぁぁぁ、欲しいぃぃぃっ!」と叫ぶ。
かのこはドヤ顔笑顔で「はいはい。買ってあげますよ」と言う。
あんこは常識枠なので、「雲平、あれ…セムラちゃんだけじゃないの?」と聞き、雲平が「俺が話したシェルガイの人達は皆ああだよ」と返した。
「いいの?」
「…俺に言わないでよ。あんこがここでダサいとか言えるなら好きにしなよ」
あんこは嬉しそうな店のおばちゃんと、ドヤ顔笑顔のかのこと、興奮気味に「着ていいか!?私じゃダメか?」と言っているキャメラルを見て、「言えないよぉ」と返した。
豹柄でコレだったキャメラルは、案の定孔雀を見て「シュザーク!!」と喜ぶと、かのこが「買ってあげますよ」と優しく言う。
キャメラルは泣いて喜び袖を通すと、店のおばちゃんは「こんなのもあるわよ」と言って象柄も出した。
「グェンドゥ!?神獣グェンドゥじゃん!!」
飛び跳ねたキャメラルは、慌てて金貨を出すと「こここ…これで足りるカナ?くくく…ください!」と震えた声で言う。
かのこがそれを制して、「お婆ちゃんが買ってあげますよ」と微笑みかける。
「本当!?ありがとう婆ちゃん!すげえよ!シュザークにグェンドゥなんて探したらビャルゴゥとスェイリィまで居そうだよな!」
雲平はなんとなく気になって神獣について聞く。
スマホを取り出して「キャメラル、これがこっちの四神なんだよ」と言って朱雀、青龍、玄武、白虎を見せる。
「へぇ、似てるけど違ウナ」
そう言ったキャメラルの言葉を聞くと、シュザークは朱雀と言うより赤い孔雀で、グェンドゥは白い象。ビャルゴゥは黒い魚で、スェイリィは青い蛇だった。
話を聞いていたアンコが「キャメラルちゃん、これ?」と言いながら、通販サイトのページを開くと、画面は刺青Tシャツだった。
「うわっうわっうわぁぁっ!すげぇよアンコ!ビャルゴゥとスェイリィだ!」
「あんこ?何それ?」
「刺青Tシャツ」
「スッゲェ!姫様も絶対着たがったぜ!」
このリアクションにあんこは、ふふふと喜ぶと「買ってあげるね」と言ってポチっていた。
興奮して熱を出しかねないキャメラルはモジモジと「なぁ…クモヒラ」と言う。
何を言いたいかわかっている雲平は、「アチャンメの分も選んであげていいよ」と言うと、顔を真っ赤にして喜んだキャメラルは「お兄ちゃん大好きダゼ!」と言って抱きついていた。




