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彼と彼女のデザイア。  作者: さんまぐ
地球-再びシェルガイへ。

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34/155

第34話 俺をシェルガイへ。

地球とシェルガイの一年は同じ365日で、雲平とグラニューが戦ってから10日、あのオシコとクラフティとの戦闘から1日が過ぎていた。


バニエは雲平に頭を下げて、「何が起きているのか教えて欲しい」と言った。


「レーゼとの連絡は?」

「君とキャメラルが飛鳥山公園のゲートから現れて、すぐに通信不能になったのだ。初めはゲート使用後の不能期間だと思ったが、いつまでも回復しない」

「そもそも、なんで本庁のあなたが飛鳥山公園に?」

「君たちが出て来る90分前に、急に飛鳥山公園のゲートが鳴動を始めたのだ。私は調査目的で呼ばれていた」


鳴動はクラフティがシュートレンを殺した時だろう。

ある程度合点のいった雲平は、あの日飛ばされた先がジヤーだった事、セムラ捜索の為に来ていたカヌレと合流し、キャメラルとキャメラルの姉のアチャンメと共にセムラの葬儀が終わる前に、セムラと共にレーゼの墓所を目指した話をした。


「そして俺達はチュイールと戦闘に…」


ここで雲平はある事を思い出して、同席していた警察官に話しかける。


「シェルガイで破産して奴隷になった人が助けを求めてました。名前は国府台帝王で群馬の人でした。後は破産した先に、命を諦めて自害を選んだ人の中に、勝田台風香という人もいました。ご家族に教えてあげてください」


そう言ってから、バニエに「破産してチュイールに買われて、奴隷として肉の壁に使われたんですよ」と説明をした。


バニエは顔をしかめて「チュイール…。不遜な男だったが、そこまでしていたとは」と漏らす中、雲平が「そして俺達はレーゼについて墓所を目指しました。そこでクラフティがシュートレンさんをサモナブレイドで殺して、コジナーとのゲートを生み出しました」と続けた。


これにはバニエも嘘だと声を荒げたが、キャメラルが「クモヒラは嘘なんてつかねーヨ。信じねえなら勝手にシロ」と言ってバニエを睨み付ける。


これにはバニエも慌てて謝罪をして続きを聞いて来る。

雲平はブランモン隊と合流して、皆でゲートを目指した所からどうして2人だけ日本にいるかの説明をした。


「俺からも質問です。クラフティに何を言われたんですか?」

「殿下…というか代理の者からは、ジヤーが暗躍していて戦争の回避は不可能だと判断した。セムラ姫は和平の為に奔走したお方だし、ゴブリンに襲われた事もあって心に傷を負うだろうから、その話をしないで時間を伸ばして欲しい。ジヤーを討ってから迎えに行くと言われたので足止めをしました」


雲平も合点の言った顔で言った。


「成る程、とりあえず信じたくないでしょうが、クラフティはコジナーと手を組んでジヤーに攻め込みます。戦争も魔物もクラフティとコジナーの自作自演です」

「閉じられたゲートと、米国経由のジヤーからの通信、そして君の言葉で真実だと認めるしかない事はわかった」


バニエは肩を落としてそう言うと、雲平は「あ!じゃあシェイク王子には連絡付くんですね!?セムラさん達はジヤーに行けたんですか!?」とバニエに詰め寄った。


バニエは「私はまた聞きなのでわからない。王子と面識もないから話もできない。だが君達なら…」と言い、警察官に雲平とキャメラルとジヤーで会話ができないか、手配して欲しいと言うことになった。



・・・



事態は急を要し、逆に米国の大使館から、あんことかのこごと迎え入れられて、国際通話と米国のゲートを使った会話を無理やり挟む形で、雲平とキャメラルはシェイクと会話をすることになる。


通訳ではないが窓口の人が「お連れしました」と言うと、スピーカーからは「雲平、キャメラル!」と言うシェイクの声が聞こえてくる。


雲平はようやく話のわかるシェルガイ人と話せた事で、「シェイクさん!」と呼びかけ、キャメラルは「お、王子だ。オツカレ」と言う。


雲平が概要を話すとシェイクは、ジヤーの状況を話した。


「…ジヤー城には誰も転移してきていない。恐らく君の言ったコジナーのオシコの攻撃で座標がズレたのだろう。だがジヤーを目指したのなら、ジヤーのどこかには居るはずだから、すぐにジヤー中に兵を送って探索をしよう」


セムラ達は無事にジヤーに着いていたと思っていた雲平は冷静ではいられず、スピーカーがシェイクかのように話しかけていた。


「シェイクさん!日本のゲートが閉じてるから、俺達はアメリカからじゃないとシェルガイに行けません!」


シェイクは驚いた声で「雲平?君はまたシェルガイに来ると言うのかい?そもそも君は、家族の待つ日本への帰還が第一だったはずだよ?」と返した。


「そんな場合ですか?俺だって多少は戦力になれました!中途半端なんてゴメンです!キャメラルと行きますから、迎え入れるようにアメリカの人と手続きとかしてください!」


必死な雲平の言葉に、シェイクが「ありがとう。すぐに手配するよ」と言った後ろで、あんこの「雲平…」と言う暗い声が聞こえた。


雲平が振り返るとあんこが青い顔をしている。

あんこはまさか雲平がシェルガイに行くと言い出すとは思っていなかった。


「あんこ…」

「また…行くの?戦争だよね?危ないんだよね?」


だから行かないと言えという顔で、雲平を見るあんこ。


「でも…、俺でも役に立てるんだ。皆を見捨てたくない。キャメラルのお姉ちゃんのアチャンメも、きっとイライラしながら俺とキャメラルを待ってる。セムラさんの仲間のカヌレさんも、カヌレさんに恋をしたパウンドさんも、パウンドさんのご主人様のミスティラさんも、セムラさんも放っておけないよ」


だから受け入れろと言う雲平の言葉に、あんこは「でも戦争するなら人だって!」と言った時、雲平はハッキリと「殺してきた。殺さなきゃ殺されるから…魔物だけじゃないよ」と言った。その顔は堂々としていた。


部屋の空気が冷たくなる。

地球での殺人は犯罪だが、シェルガイなら許される。

雲平は罪に問われない。

だが倫理的にそれを口にしてもいいわけではない。


「それにブランモンさん達は、俺とキャメラルを逃す為に犠牲になってくれた。ブランモンさんは俺にセムラさんを託してくれたんだ。だから行かなきゃ」


あんこは目に涙を溜めて首を横に振る。

行かないでと言いたげな顔で雲平を見ている。


その時、横にいたかのこが「行きなさい」と言った。

雲平はてっきりかのこに止められると思って身構えていただけに、「ばあちゃん」と驚いた声を出していた。


かのこはニコニコと笑うと、「中途半端なんて嫌いでしょ?」と聞いてくる。


雲平は頷いて「うん。ありがとうばあちゃん」と言うと、あんこは驚いた顔で「お婆ちゃん…」と真意を問う。


「お婆ちゃんは、お爺さんを戦争に行かす時に一度経験してますからね。行くなと言っても聞かないなら、『行ってきなさい』、『帰ってきなさい』に意味があるのよ。それにキャメラルちゃんみたいな可愛い妹が居て、もう1人待っているのでしょ?行ってあげなきゃダメよ」


かのこは言うだけ言うと笑って、バニエに「でもタダでは行かせません」と言った。


「は?」

「当然お給金は貰います。それと新学期に食い込むでしょうから、出席日数の免除も約束してもらいますからね」


金はわかったが、出席日数のわからないバニエに、仲間の警察官が説明をすると、「雲平殿、それを約束すれば、君は戦地に…シェルガイに赴くのかい?」と聞いてきた。


頷いた雲平は「はい」と言ってから「俺をシェルガイへ」とハッキリと言った。

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