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彼と彼女のデザイア。  作者: さんまぐ
シェルガイ-ジヤーの地から始まる戦い。

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第26話 クラフティ!全てはお前の誤解だった。

墓所は豪華な建物で、雲平は城の一部だと思っていたが違っていた。


「クソ無駄に立派だナ」


そう悪態をつくキャメラルに、ミスティラが「あそこには結界が4重に敷かれているから、どうしても建物が肥大化してしまうのだ」と説明をする。


アチャンメが「詳しいナ!」と反応すると、ミスティラは続けて説明をする。


「まあ建造の指示を出したのは私だからな。元々シェルガイは穏やかな世界だったが、コジナーに魔物達の出入り口ができてしまい、コジナー人が制御しよう等とアホな事を考えた際に、神々がレーゼには魔物を閉じ込めるサモナブレイドを授け、ジヤーには神獣達が神獣武器、そしてコジナー人の私には【不死の呪い】を授けた」


詳しく聞きたくなった雲平だったが、もう墓所は目の前で話している場合ではなかった。

墓所の周りの兵士達は諦めた顔でセムラ達を通す。


最後列の国民達はセムラに気付き「姫様?」と言うものも現れていた。


壇上では神官とシュートレン王が祈る中、真っ黒い鎧に身を包んだ男がサモナブレイドを手に取り演説をしていた。


「我が妹、最愛のセムラはもう居ない!レーゼだけでなくシェルガイそのものを愛し、ジヤーとの和平に向かった帰りに、何者かに襲われて行方不明になった。遺体は見つかっていないが状況では生存は絶望的だ!」


最後列の国民達は近くにそのセムラが居て困惑をするが、前方の国民達は悲しみの声でセムラの名を呼び、ジヤーへの怒りの声で復讐を口にする。


これは良くない。

雲平達が思った時、「私は生きています!」と横のセムラはハッキリと言った。


国民達の声をかき消すようなセムラの凛とした声。

葬儀場に響く嘆きと怒りの声が全て消えた中、セムラは名を名乗り歩き出した。


「レーゼの皆さん。お父様、クラフティお兄様。私は生きています。私の名はセムラ・ロップ・レーゼです。私は生きています」


国民達が見守る中、シュートレンは目を疑うようにセムラを見て、「セムラ…?本当にセムラなのか?」と言って目に涙を浮かべる。


「ジヤーでシェイク王子と和平について話をまとめた書簡がここにあります!」


セムラがペンダントをかざすと、中から書簡が出てきてセムラの手に収まり、そのまま歩きながら言葉をつづける。


「帰り道に私を襲ったのはゴブリンです。ジヤーではありません!崖から滑落した際、偶然産まれたアナザーゲートを潜ってしまった私は、地球でコチラの雲平さんに助けて貰い保護をしてもらいました」


民達の混乱は手に取るようだった。

雲平達はセムラの後に続く形で前に歩いていく。


シュートレンは驚きの表情で「それは誠か?ジヤーではなくゴブリン?」と聞き返すと、深く頷いたセムラが「和平に関してもシェイク王子…ジヤーは前向きに意見をくださいました。これを草案とすれば、決して我々は争わないで済みます!」と言う。


「ならば…、それならばこの葬儀も戦争準備も何だと言うのだ?」

「お父様!お願いします!今すぐ戦争をやめてください!」


セムラの言葉にシュートレンは頷き、セムラに手を伸ばす。

この流れに雲平は気持ちの悪い違和感に襲われている。


周りを見るとアチャンメとキャメラルは緊張を解いていないが、カヌレはセムラとシュートレンを見て安堵の表情を浮かべ、その横でパウンドは「よかったなハニー」なんて言っている。

違和感に神経を尖らせる雲平に、ミスティラが「よし、お前はすぐにセムラを抱えて走れ。パウンドのバカとカヌレはなんとかなる」と声をかける。


「ミスティラさん?」

「この目で確かめたくて来たが、ロクデモナイ事になる。止めようはない。動け」


雲平はミスティラの指示で前に出ようとした瞬間、シュートレンは「クラフティ!全てはお前の誤解だった。セムラは見事にやりきってくれたぞ」と言った。


[クラフティ、全てはお前の誤解だった]

[クラフティ様の調査の結果だ]


ここで雲平は違和感の理由を理解した。

ジヤーから人や魔物が流れてくると言い調査をした結果、ジヤーに問題があると言ったのはクラフティ。

セムラをジヤーに行かせたのは、戦争を止めたいと言うセムラの言葉を受け入れたクラフティ。


日本に来たセムラを足止めしたのはバニエ。

そのバニエは足止めを命じられていた。

チュイールも足止めもしくは抹殺を命じられていた。

誰かが指示をしていた。

雲平達は口にしなかったが、勝手にシュートレンが暴走したと思っていた。


だが全てを仕切っていたのはクラフティだったのかもしれない。


セムラとは違う焦茶色の目と髪色で、痩せ型長身の美男子。

真っ黒な鎧のせいで威圧感と悪者感を感じる男。


真っ赤な刀身のサモナブレイドを手に持つクラフティは、シュートレンの言葉に「ええ、全ては私の策略でした」と言って、シュートレンに向けてサモナブレイドを突き立てた。


国民の驚きとざわめき。

セムラの声にならない悲鳴。


雲平は冷静に前に出て「セムラさん!来て!」と言って抱きかかえると、後ろからミスティラの「ちっ!やはりだ、雲平!姫を抱えて走れ!距離を取る!ジヤーまで行くぞ!」と聞こえて来た後で、「パウンド!来い!」と言っている。


人は何故かこういう場面で、聞こえなくてもいい言葉が耳に届いてくる。


「く…クラフティ?」

「セムラには困りました。私の世界征服の邪魔をするとは思いませんでしたよ。私の目的は、墓所より問題なくサモナブレイドを取り出して、葬儀の場でゲートを開く事でした」


「お…お前…なぜ…」

「なぜ?私はジヤーを征服してレーゼを守るのです。お父様、あなたには鍵になってもらいます」


「まさか…それは認めない!」

「それを決めるのは私です」


クラフティはシュートレンに剣を突き立てたまま、「我が名はクラフティ・ガム・レーゼ!サモナブレイドにシュートレン・シロー・レーゼの命を捧げ、ここに門を開く事を宣言する!」と言うと、サモナブレイドは真っ赤に光ってゲートが生まれた。

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