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彼と彼女のデザイア。  作者: さんまぐ
シェルガイ-ジヤーの地から始まる戦い。

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第25話 ただ前へとお進みください!

セムラが投降の意思を示そうとした時、「なりません!」と聞こえてきて包囲網の一つが破られた。


「んだぁ!?」

「新手カ!?」

「え?」


驚き振り向く雲平達の目の前では、変わらずに蹴散らされる兵士達。


「あなたは…カヌレ!?」


セムラの声に「はい!お待たせいたしました!姫様との約束を果たしに、このカヌレは参りました!」と答えたカヌレ。

青いロングヘアがショートヘアに変化していて、元々薄着だった格好は、見ているコチラが恥ずかしくなるような、ショッキングピンクのビキニアーマーにマントと言う、若干の変態臭がする格好で、変わらずにヘルチタニウム製の剣を振り回して、兵士達を蹴散らして「骨の1本くらいは我慢しろ!」と言っている。


セムラが目に涙を浮かべて、もう一度「カヌレ!」と呼びかけると、「姫様!なりません!ここで立ち止まって何になります!前へ!ただ前へとお進みください!」と言った。


一瞬の沈黙の後で、真剣な目をしたセムラは前を見て、「わかりました!」と言う。


「兵達よ!これより私は墓所へと向かいます!邪魔をすると言うならば、再起不能も覚悟をしなさい!アチャンメは道を切り開きなさい!キャメラル!殿を任せます!雲平さんは私を、カヌレ!道案内をしなさい!」


そう声を上げたその顔に迷いはなかった。


カヌレは「お任せください!ですが今の我々には仲間がおります!殿はその者達にお任せください!キャメラル!お前も前だ!」と言い、「来い!パウンド!ミスティラ!」と声をかけると、暫くして駆けてくる巨漢の男と、見るからに魔法使いの出立をした少女。


「おぉ!?マジモンの姫様だ!合流できたなハニー!」

「…ああ。感謝している」

「うふふふふふふふ。約束だぞ?マントを取るのだぞ」

「…これが終わったらな」


アチャンメとキャメラルは包囲していた兵士を蹴散らしながら、「誰だソイツら?」「仲間カ?」と聞いてきて、カヌレが答える前にセムラが「貴方達は確か賢者ミスティラと従者パウンド。どうしてここに?」と疑問を口にする。


「時間が無いんだろ?ハニーから聞いてるから、話は走りながらだ!その地球人は足速いのか?無理なら俺が姫様担いでもいいよ?ミスティラ様は殺さないように注意してくださいよね!」

「うふふふふふふ。合法殺人の機会なのにか?ってまあ殺人なら昔たくさんしたからやりはしないがな」

「ええい!いいから前進だ!」


カヌレの言葉に雲平が「セムラさん!」と呼びかけると、セムラが当然のように雲平に抱かさる。そして走り始めるとアチャンメが「おい!道案内をシロ!」と言い、カヌレが前を走る。


カヌレはセムラを抱いて走る雲平に、「雲平殿、身体強化に目覚められたのだな?」と声をかけると、雲平は「はい。後は…」と言うと、前からくる兵士に向かってサンダーウェイブを放って「これもです」と答えた。


「雷魔法!?凄いな」

「それよりもチュイールって人がカヌレさんを殺したって…」

「ああ。馬車を狙われて、戦闘中に背後からボウガンの矢を受けて崖から滑落をしたんだ」


ここまで話すと後ろを走るパウンドが、「俺!俺がハニーを受け止めたんだぜ!」と槍を持ったまま手を振ってアピールをする。


「ですが、矢には毒が塗られていたと…動いて平気なのですか?」

「はい。完治しております」


これにはミスティラが「我が魔法の前に大毒蜘蛛の毒など無意味よ」と返すので、雲平が「滑落の怪我は?」と聞く。


バツが悪そうに「それは…」と返すカヌレに、ミスティラは「ふふふふふ。私と契約をしたからな!治してやったわ!」と言った。


何があったのかを聞いた雲平達は、少しだけカヌレに同情しつつも奇跡に感謝をする事になる。


あの日、毒を受けて滑落してきたカヌレは、偶然崖の下で狩りをしていたパウンドの上に落ちてきた。


カヌレは見た目も整っていて、パウンドは一目惚れをしたという。


「驚いたぜ!ミスティラ様の言う通り、俺の運命の人は天から降ってきたんだ!」と話すパウンド。


パウンドは生まれながらミスティラの従者になる事が決まっていて、セムラ並みに世俗に疎い。


だが、年頃の男子ともなれば色恋に興味も持つし、どうやったら結婚できるかをミスティラに聞いたところ、ミスティラは「運命の相手なら天から降ってくるから待っていろ」と教えたらしく、パウンドはそれを素直に信じていた。

そして天から降ってきたカヌレを運命の人と信じてしまっていた。


雲平は聞いていて不思議そうにパウンドとミスティラを見る。

ミスティラはどう見ても10歳くらいにしか見えない。

そんな少女の言葉を信じるパウンドを異質と捉えるか、天から降ってくると予言をしたミスティラをすごいと思うべきか悩んだ。


「私は重症でした。朦朧とする意識の中、パウンドに姫様を頼みたいと願い出たのです」


カヌレの言葉にパウンドが「つれないなぁハニー。ダーリンと呼んでくれと言っただろう?」とツッコむ。

アチャンメが「ダーリン?」と言いキャメラルが「ハニー?」と続ける。


ここにミスティラが「私が昔書いた物語を読んで、恋人同士はダーリン&ハニーで呼ぶものと思い込んでいる」と言う。


雲平が「昔?」と聞き返すと、セムラが「賢者ミスティラは、人の身で何度も生を繰り返すのです」と教える。


ミスティラが「通算…200と少しだな」と言い、パウンドが「ミスティラ様、360歳は200と少しではありません」とツッコむ。


思わず二度見をする雲平に、「ふふふ。驚いたか?今はこの見た目だが、子供すら産んだ事があるんだぞ」と言い胸を張るミスティラ。


この間も次々に現れる増援を雲平達は蹴散らしていて、雲平は段々と殺さない戦い方がわかってきていた。



・・・



話は逸れたがと言ってカヌレが続けると、毒はすぐに賢者と名乗ったミスティラが治療してくれたが、怪我は待てば治るからと自然治癒を提案してきたと言う。

カヌレは時間が無いからと賢者ならば何とかして欲しいと願い出る。


ここでパウンドはカヌレが運命のハニーならば結婚をしてほしいと言い、カヌレは騎士としてレーゼにその身を捧げたからこそ、レーゼの為に成功報酬としてパウンドの申し出を受ける事にした。

だが手付金代わりにパウンドの要求は本で読んだハニー同様にショートヘアにして欲しいと言うものでカヌレは躊躇なく断髪をした。


そしてミスティラはカヌレを見てインスピレーションが湧きそうだと言って、「お前がビキニアーマーに身を包むのであれば、血を噴き出すようなオリジナルのヒールを浴びせてやろう」と持ちかけた。

カヌレは真っ赤になりながら、コチラも条件付きで受け入れて、セムラ達に合流出来るまではマントを羽織る事を認めさせていた。


話を聞いてドン引きで「うわぁ…悲惨」、「痴女に見えるヨナ」と言うアチャンメとキャメラルに、カヌレが真っ赤になって「言うな!」と言うと、ミスティラは「うふふふふ。その恥じらう顔が素敵だぞ」と喜ぶ。


そんなカヌレにセムラは「ありがとうございます。貴方ほどの忠臣は見た事がありません」と感謝を伝えた。

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