表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼と彼女のデザイア。  作者: さんまぐ
シェルガイ-ジヤーの地から始まる戦い。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/155

第24話 殺したくない。

ジヤーを出て9日目。

レーゼの街に辿り着いた。

閑散とした街。

レーゼの民は今、セムラの国葬の為に街外れにあるレーゼの墓所に集まっていて、人の気配はない。

火事場泥棒ではないが、防犯の名目でセムラの足止めを仰せつかった兵達が、いく手を阻んでいた。


「退いてください!」

「なりません!姫様は保護させていただきます!抵抗なさらないでください!」


こんな問答と共に始まった戦闘。

雲平達は苦戦を強いられていた。


決してレーゼ兵は弱くない。

だが強くない。


問題はただ一つ。

万一魔物がレーゼの結界を破り入り込んできた時に、兵士達が死んでいると民達を守れない事にあった。


それを読んでいたレーゼ兵達は容赦なく雲平達を狙ってくる。

そして峰打ちになると、雲平は弱体化をしてしまった。


「アチャンメ!殺さない方法なんてわからないよ!」

「クモヒラ!お前は最悪殺しても許す!私とキャメラルが殺さないようにやる!」


雲平は力一杯戦う事はこの九日間で身についたが、殺さない戦いは出来ないでいた。


雲平達がチュイールを殺せていた事は聞き及んでいたが、まさかの状況にレーゼ兵達は、「勝負アリですな」、「退けば街の外には魔物の群れ、大人しく捕まってください」と言って勝ち誇った顔をしていた。


「ちっ…たまたま勝ち目のヤロウどもが」

「やっぱりブチ殺そうぜ!クモヒラ!」


アチャンメとキャメラルは間違っていない。雲平は確認するように「セムラさん…」と聞くと、セムラは「…殺したくない…殺せば魔物達が、レーゼの民達が」と呟いて決断しかねている。



そこに兵士が畳みかけるように、「姫様、ご安心ください。この戦争はレーゼをジヤーから守るためのもの、昨今増えた狼藉者を野放しにするジヤーを統一して、コジナーからの魔物に備えるためのものです」と語りかける。

セムラは首を横に振って「そんな事はありません!」と言うと、アチャンメが「クソが!ジヤーはキチンと治安維持に力を入れてんだよ!」と怒鳴る。


呆れるように別の兵士が、「お前達は祖国の威信があるからムキになるのもわかる。だがクラフティ様の調査の結果だ」と説明を始める。

レーゼ兵からすれば葬儀さえ終わればどうとでもなるから、時間稼ぎは願ったり叶ったりだった。


この説明にキャメラルは「バーロー!私達は半分レーゼの人間だコノヤロウ!」と怒鳴ると隊長風の男が、「それならお前達の安全も約束をする。地球人も不問で地球に帰してやる」と言い出した。



雲平はここでようやく末端の兵士達には、クラフティが治安維持の為に戦争を起こそうとしている事を信じていることがわかる。

だが同時に生まれる一瞬の疑問。


クラフティ?セムラの父シュートレンが主導しているのではないのか?


一瞬の疑問を振り払うように首を振る雲平は、目の前の兵士に目を向ける。


正義の執行。

それも国の為の行いなら迷いなく行動をしてくる。


あのチュイールは違う気がしたが、この連中は本気でクラフティの言葉を信じ従っている事がわかり、厄介さを覚えていた。


セムラは一瞬の間に思案をするが、どうしても最良の「向かってくる兵士たちを殺せ」と言う言葉だけは口から出なかった。


国民を守る力だから。

だがそれだけではない。


皆一度は見かけた事がある。

家族と居るところすら見た事がある。

そして皆、過酷な訓練にも根を上げずに、国の為に尽力してくれていた。


セムラが悩んでいる間に、周囲に兵士達が集まり始め包囲されていく。


土地勘のない雲平とバット姉妹ではこの場を切り抜けても葬儀会場を目指すことも叶わない。


アイコンタクトでやってしまおうかとアチャンメとキャメラルが合図を送った時、セムラは「わかりました。貴方達に…」と投降の意思を示そうとした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ