第151話 だってつまんねーし。
居間に行き、雲平は4匹のペットを見て「あれ?本当にシュザーク達だ。ただいま」と言うと、オウムのシュザークは「私は止めたぞ」と文句を言う。
「止めたの?ならなんで?ビャルゴゥ?」
鯉のビャルゴゥは日本では話せないかと思ったが、実は話せていて「私達は止めた。それをクラフティと安倍川かのこは、セムラが限界だからとお前の元に送り込んだんだ」と言う。
今度はグェンドゥが「シュザークは雲平のいない所で、セムラ姫に止めるように言ってたんだよ」と説明し、最後にスェイリィが「勝手にセムラに接触した奴がいる。お陰で面倒なことになった」と言うと、シュザークが忌々しそうに「我々の最良を邪魔しおって」と言って庭先を見ると、昨日セムラがどら焼きをあげた子供が、庭先で大量のどら焼きを抱えて、「へへっ、だってつまんねーし」と言って笑う。
「あなた、昨日のどら焼きの」とセムラが言うと、遮るように雲平が「ニョトー?何やってんの?」と言った。
セムラが驚いて「え!?ニョトー様?」と言うと、ニョトーは嬉しそうに「いよっ!雲平!お帰り!」と言ってから顎に手を当てて、しみじみと「さすが俺様って匙加減だよな」と言って笑った。
ニョトーが早く雲平を起こせとセムラに接近した理由は、雲平が完全に神の力を使い果たしてその身を人に戻そうとしていたのを邪魔する為で、シュザーク達は雲平の願いを知っていたので、人に戻れるまで後一年は眠らせるつもりでいた。
安倍川家のちゃぶ台でどら焼きを食べて、「これ気に入ったわ〜、雲平、また買いにくるからよろしくな」と言うニョトー。
「よろしく?何それ?」と聞きながら、セムラの手を握ってどら焼きを食べる忙しい雲平。
「お前から神の力が失われなくて半神半人だからこの地球の神はお前だよ」
「え?なにそれ?だって地球の神様は?」
ニョトーの説明によると、元々神々は世界を作る時に、基本ベースとして地球と繋げることで簡単に基礎の部分を手に入れてしまうと言う。
この説明に雲平が「えっと…じゃあシェルガイを作った神様は…」と聞くと、ニョトーが「地球ベースで作ったんだよ。でも魔法を持たせたいから文明を捨てさせた訳だ」と説明をした。
「で…俺が神様ってのは?」
「お前が神の力を暴走させた時、日本以外の思い入れとか知識のない群島とか諸島とか半島とかの小さい島々が失われただろ?だからその少し前に地球の神様は地球を隔離して模倣した地球、模にしてしまった訳だ。だから元々の地球からはお前に関係する人々は居なくなっていて、シェルガイという異世界もない。代わりにこの世界が生まれた訳だな。で、世界には1人必ず神様が必要だから、お前が神様な訳だ。ちなみに俺様はパス。シェルガイを作ったアイツも今は別の世界を作っているからパスだってさ」
「…それ…俺があと一年寝て神じゃなくなってたら?」
「それはお魚ちゃん達が神様になってた訳よ」
「…ニョトーはそれが嫌だから俺を起こしたの?」
「YES!絶対お前となら楽しめるって!」
「…模って勝手に作って怒られないの?」
「別に平気だよ…8万…何千個目だったかな…皆やらかしてるから平気だよ。この5年で後輩達もできてるから気にすんなって。それにお魚ちゃん達はこの未来が見えてて黙っていたくせにさ」
ニョトーが笑いながら次のどら焼きを食べて、バニエのお茶を誉めている中、雲平が「ビャルゴゥ?」と声をかける。
「元々お前に見えていた未来の中で良いものとしては、さっさとセムラを妻に迎えてレーゼの王になり、サモナブレイドの代理使用権を手にして、半魔半人を倒してキョジュも倒すことだったんだ。それを日本に帰るとゴネ倒して悪い方に進むし、キョジュはニョトーの依代を株分けした半魔半人に与えてゲートと接続してしまうし、…その際に見えた最良の未来はこの筋道で、お前が人の身に戻りセムラを安倍川世良にしてしまう未来だったんだ。それをニョトーの介入で半神半人にされてしまった」
「成程、まあ仕方ないや。今大事なのは俺は人として死ねるかだよ」
雲平の質問にニョトーが「今のところは問題ないぜ?またブチギレて暴れたり、『人じゃ対応できないから、更なる神の力を欲する!』とかしなきゃ、お前は神の力を使える人間だよ」と教えてくれて、シュザーク達もニョトーは嘘をついていないと教えてくれた。
この話で日本政府とかに何を言うか悩んだが、面倒なので「人に戻れました」で済ませてしまうことにした。
ビャルゴゥが「で、いつシェルガイに戻る?」と質問をしてきて、雲平は「あれ?アグリ達には教えてないの?」と聞き返す。
「まだ教えてないヨォ〜。カヌレなんて今度こそ赤ん坊を産みたいって我慢してるよ」
「それで行けばパウンドもだな」
雲平はそれよりも大事な事を気にしていて、「んー…、ミスティラとオシコは?」と聞くと、シュザークが「もう出会った。まあ結婚式はしていないな」と状況を説明した。
雲平は「んー…」と悩んでセムラを見て、「セムラさん、帰ります?当分2人きりであの家に住みます?」と聞くと、セムラは「はい!」と嬉しそうに返事をした後で、「何処でも嬉しいです!」と言った。
顔を紅潮させて喜ぶセムラの向かいで、バニエが「あの…報告義務があるので誤魔化すのは辛いです。そろそろシェルガイに一度帰って家族に会いたいです」と言う。
セムラと顔を見合わせた雲平は笑いながら、「じゃあ連絡だけしましょう」と言った。




