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彼と彼女のデザイア。  作者: さんまぐ
シェルガイ-最良へ。

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140/155

第140話 俺の願いをデザーブレイドは形にするよ。

その次のアグリはワンワン泣いていて、「どうしたの?怖い?」と雲平が聞くと、「お兄ちゃん、お兄ちゃんと居たいよ」と言って雲平の胸でアグリは泣く。

雲平は穏やかな気持ちになると、「ありがとうアグリ。アグリが居てくれるから俺は頑張れるよ。俺はアグリの為に頑張るね。アグリはさ、俺の妹だよね?」と聞く。


「そうだよ。もう今川よもぎはいないよ。いても安倍川よもぎだよ」

「うん。そうするね」

「絶対にまた会える?」

「会えるよ。アグリの事は忘れない。父さんは忘れても良いけど、アグリは忘れないよ」


アグリは「わかった」と言うと、「まだ皆との時間も作らなきゃだし、セムラ姫との時間も必要だからもう行くね」と言って部屋を後にする。


「あ、そうだ。アグリ、ビャルゴゥリングで結界張ってくれてありがとう」


アグリは「いいよ〜」と言うと、笑顔で手を振りながら部屋を後にした。



アグリの後はアチャンメとキャメラルで、「クモヒラ!私達も妻にしろ!」、「バッコンバッコンするぞ!」といきなり言いながら抱きつく。


「あはは、アチャンメとキャメラルはそればっかりだ。んー…皆の願いを俺は形にするけどそれは後回しかな?」

「酷え!?」

「何でだよ!?」


怒る2人に雲平は、「2人は大切な俺の妹だからだよ。俺の力で2人を幸せにするよ。だから父さんはどうでも良いけど、皆の事をお願いね」と言って微笑む。


「しゃーねーな」

「でも余計な真似はすんなよな。ニョトーに聞いたけど私達から戦闘力を奪うなよな」


アチャンメとキャメラルは雲平に抱きついて、挟み込むように両頬にキスをすると、「これで寂しさを紛らわすから早く帰ってこいよな!」、「本当は足らんからな!」と言って涙を隠すように部屋を飛び出して行った。



次はパウンドとカヌレだった。

2人は感謝と謝罪を何度も繰り返していて、パウンドは冷静になった時、子供の事は悲しかったけど、カヌレが生きてくれた事に、まず喜ばなければいけなかった。男として足りないからやり直すと言い、カヌレも今度は己を過信する事なく、妻と母の自覚を持つと言った。


2人とも雲平の不在は何とかするから安心してくれと言って握手をした。


「俺こそ結界の件とかありがとうございます」と雲平が返すと、「仲間で家族だから当然の事だ」と言って立ち去った。



次はホイップとシェイクで、2人してどちらがあんこに相応しいか雲平に決めてもらおうと言ってバチバチにやり合っていた。


「それ、2人とも自分が選ばれなかったら諦めない奴ですよね?仲良く競い合ってくださいね」

「う…」

「あ…」


「でも2人が居てくれたらあんこは安泰です。良かった。あんこはとても寂しがり屋なのでよろしくお願いします」

「言われるまでもない」

「かのこお婆様達のことも任せて」


雲平は握手をしながら、「頑張ります。最良を目指します」と言うと、シェイクは「君こそ王だ」と言って頭を下げて、ホイップは「帰還したら雲平がシェルガイを纏めて」と言って帰って行った。



次はミスティラで、部屋に入ってくるなり不機嫌一色で、ベッドに飛び乗ると雲平の頭を小突く。


頭をさすって「痛い」と言う雲平に、ミスティラが「殴打したのだから当然だ!」と言って腕を組む。正直子供の力なのでいうほど痛くないので「殴打?」と聞き返すと、「殴られ足りないか?」と言われてしまう。

そのまま「まったく」と怒るミスティラは「やり切れるか?」と聞く。

それは子供の顔ではない。


「うん。皆の為なら俺は願える。俺の願いをデザーブレイドは形にするよ」


雲平はデザーブレイドを見せるとミスティラはため息のあとで、「私のことは切り捨てろ。いいな?私は亡霊のようなものだ。私とキョジュを捨てればお前の負担は減るだろう?」と言うと、食い気味に「やだ」と言う雲平。


「馬鹿者!何故だ!?」

「ばあちゃんの友達が減るのは困るから」


こんな時でも自身より他人の為を考える雲平に、ミスティラは「…お前は…」と言うと、雲平は「ミスティラはこの世界の人で、俺たちの仲間で家族だから居なくなられると困るよ」と言う。


その言葉に難しい顔をしたミスティラは、「ならやりきれ」と言うと、「元からそのつもりだよ」と雲平は笑う。


「セムラの事も支えてやるが、お前の存在が大きすぎる。待たせるなよ?」

「あはは、頑張るよ」


セムラの事で雲平の困り笑顔に、「なんだかんだ言っても、お前はすぐに何とかするから実は心配しておらん。だが不老不死だけは認めないからな」と言ってミスティラは帰って行った。



後はあんことセムラ。

バニエは一言「全てお任せください」と言って終わっていた。



あんこはもじもじと雲平の元に来ると「ありがとう」と言った。


「何が?」

「私の身体、完璧に治してくれた事。ほら見てよ、低学年の時にブランコから落ちた時のかぎ裂きの傷とか痕も残ってない」


あんこは左腕の傷の跡を見せてきたが、ツルツルの肌しかなかったので雲平は「おお、俺って凄いね」と言って笑う。


「自覚なかったの?」

「無我夢中だよ。傷だらけのあんこを見たら何とかしなきゃって、それしか考えてなかったよ」


笑いながら話す雲平に、あんこは「後さ……、グェンドゥ様がカヌレさんに話してくれたけど…雲平が治してくれた時、初めてに戻してくれたって、私さえ無かったことにできれば、キチンと好きな人に初めてをあげられるって」とモジモジしながら話す。


「へぇ、そうなんだ。良かった」

「…ありがとう」

「いいよ。俺の力を使った後は、本当にあんこの気持ち一つだから、心機一転で頑張ってね」


「うん。でさぁ…シェイクさんとホイップ君のことを知った?」

「知ったよ。2人して『あんこに相応しいのは自分だよね』と聞いてきて、返事に困ったよ」


「えぇ?困るの?」

「困るよ。でも大丈夫。選ぶ時間は沢山あるからね。嫌なら良い人を見つけなよ。パウンドの弟とか好みかもよ?」

「悩むから増やすな!!」


「あはは。全部あんこの自由だよ。こんな事しか出来ないけどごめんね」

「十分だけど…。区切りたいからお願い聞いてよ」


「お願い?」

「ほっぺにキスして」


「…はぁ?」

「良いでしょ!」


雲平はなんとなく仕方ないと思って、あんこの頬にキスをする。


あんこは「反対も」と言って甘えるので、雲平は「えぇ?」と言いながらも従うと、あんこはニコニコと「よし!頑張れる!」と言って立ち上がり、「バイバイ!」と言って立ち去っていく。

その後姿は遊び終わった夜を思い出させて雲平は10歳の頃の寂しさが蘇ってきた。

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