第137話 レーゼの女王として認めます。
広場に駆け付けると、地獄絵図の中、雲平はコレでもかと拷問を行い、レーゼの民達は歓声を雲平に送り、セムラは止めもせず雲平の邪魔にならない所で、うっとりと雲平を見ている。
菅野篤志は必死に逃げようとするが、雲平はデザーブレイドで左手以外を細切れに変える。
叫び声をあげながら左手一本でなんとか逃げようとする菅野篤志に向かって、「逃げられるものか」と言ってデザーブレイドを背中に突き立てると、軽々と持ち上げて空に向かって投げ飛ばす。
落ちてきたところを狙い、股間に深々と剣を突き立てて、「あんこを汚した。許すものか」と言ってサンダーデストラクションで消し炭に変えるが、おろす時には手足も元に戻った状態で蘇生していて、また新たな拷問が始まる。
それだけではない。
1人の構成員は背中にスェイリィスピアを突き立てられ、地面に縫い付けられていて絶え間ない落雷が苦しめるが何度黒焦げになってもすぐに蘇生している。
もう1人の構成員は土魔法で作った土台の上に仰向けにさせられて、グェンドゥハンマーを乗せられて「限界まで重くなれグェンドゥハンマー。俺の土台は壊せない」と言った言葉に合わせて限界まで重くなって押し潰していた。
「雲平?」
「ブチギレてるゾ?」
「王子!グェンドゥとスェイリィに止めるように頼んでくれよ!」
アチャンメの言葉にシェイクが慌ててシュザークに声をかけるが、「やらせている!安倍川雲平を失いたくはないが、人道に反しているから強制解除をさせている。だが安倍川雲平側から繋がりを作られていて解除不能なのだ!」とシュザークは返す。
かのこの叫びで金太郎やバニエ達は止まったが雲平は止まらなかった。
これにビャルゴゥが「くっ、言葉に魔法を乗せる安倍川かのこの力でも無理なのか?このままではシェルガイが…」と言い、アグリが聞くと、かのこがシェルガイに触れて手に入れたのは魔法力を単純に言葉に乗せて相手に届かせるもので、それがあったから金太郎やバニエ達は止まることが出来ていた。
ビャルゴゥから聞いたかのこは、フードを被って人目から隠れるようにしているあんこに「あんこちゃん。助けて」と言った。
「お婆ちゃん?」
「お婆ちゃんの声じゃ雲ちゃんが止まらないの。雲ちゃんが怒っているのは、大事なあんこちゃんの事だから、あんこちゃんじゃないとダメみたい」
「お婆ちゃん?私が?大事?」
「そうですよ。金太郎と瓜子さんが私達を捨ててシェルガイに行った時、雲ちゃんが寂しくなかったのは、あんこちゃんのおかげ。高校選びで不安な中、話を聞いて一緒に勉強をしてくれたのはあんこちゃんよ?雲ちゃんはあんこちゃんをとても大事にしていたの。だからあんなに怒っているのよ。やり方とかよくわからない。間違っているかも知れないけど、お婆ちゃんと手を繋いで、あんこちゃんが呼びかけたら雲ちゃんに届くと思うわ。助けてくれる?」
あんこは涙を流して「あんなに怒ってるのは私の為?」と聞き返した後で、「うん。やる」と言ってかのこと手を繋ぐと、「やめてよ雲平!!」と言った。
雲平は手足を切り落とした菅野篤志を巨大なウォーターボールに放り込んで、「おまけで感電もしようか?」と言っていた所だった。
「あんこ?」
雲平はウォーターボールを止めて、打ち上げられて咳き込む菅野篤志を無視して辺りを見回すと、あんこがかのこと手を繋いでいた。
「あんこ!!」
雲平は周りを見ずにあんこの元に駆け寄ると、「あんこ!あぁ…そんなに傷つけられて」と言って涙を流しながら抱きしめると、アザどころか折れた歯まで元に戻っていて、傷ひとつない身体になる。
「雲平?私の怪我…」
「大丈夫だよ。俺の剣、デザーブレイドに願ったからね。あんこの怪我はないよ。待っててね。あんこの怪我を何万倍にもして叩きつけてやるからね」
「もういいよ!雲平が治してくれたよ!何遍も苦しんでたよ!?」
「まだだ、許せないよ」
雲平はまた手足を再生させた菅野篤志に、これでもかとサンダーデストラクションを放つ。
本来なら広範囲を埋め尽くすように降り注ぐデストラクションを、単体相手にボルトのように放つ雲平。
あんこは「あんこは何時間も苦しんだんだよ?1年くらいああしようよ」と言った雲平の言葉が気持ち悪かった。
「ダメだよ!何時間も辛かった!だから辛さがわかるからダメだよ!」
泣いて止めるあんこに、「あんこは昔から泣き虫だなぁ。いつも俺が泣き止むようにしてきたから、今回もやらないとね」と言って微笑みかけると、「セムラさん…危ないからこっちに来て」と言って、フラフラと歩いてきたセムラの腰を抱いて「セムラさん、やっていいよね?」と聞くと、セムラは「はい。レーゼの女王として認めます」と言ったが正気には見えなかった。
寒気のする笑顔に、あんこが「ホイップくんあの人を助けて!」と言うと、ホイップは「でもあんこの…」と言って躊躇する。
「それはそれ!こんなの私は頼んでない!」
この言葉で「アグリ!君も助けて!」と言って、アイスウォールと氷結結界で菅野篤志を守ると、キレた雲平がコレでもかと落雷を発生させたが、ホイップとアグリは根性でそれを防ぐ。
ここでシュザークが「まずい!限界だ!」と言った時…大地震が起きて雲平は倒れた。
「ったく、300年ぶりの我が家で、のんびりしたと思ったらコレかよ。マジありえん」
そう言って倒れた雲平をかかえたのはニョトーだった。




