第135話 アイツが本気になったらまばたきの間に俺たちは死ぬよ。
時間は少し前に遡る。
瓜子から「もうすぐ雲ちゃん達が来るから、あんこちゃんはアグリに任せてアチャンメちゃんとキャメラルちゃんはゲート前に居て」と言われて、アチャンメとキャメラルはゲート前のベンチに居た。
「なあ、アンコ大丈夫かな?」
「カヌレも心配だな」
「なあ、クモヒラキレてるよな」
「ああ、折角コジナーのゲートを閉じたのにナ」
そう話しているところに雲平はセムラとシェイクとホイップを連れて来た。
「アチャンメ!キャメラル!」
「クモヒラ!」
「お帰り!」
アチャンメとキャメラルは努めて冷静に妹として雲平に接する。
「俺はどうでもいいよ。カヌレさんは?」
「袋叩きで危険ダ。母ちゃんのヒールで持ち直したけど雲平がゲートを閉じたから…」
雲平は頷くと、セムラに「セムラさんはキャメラルとカヌレさんの所に」と言って、デザーブレイドを取り出す。
「セムラさんと…俺が仲間と思う人達とゲートを繋げろ。その人達はどこに居ても魔法が使える。それが願いだ」と言って、「これでヒールが使えます。カヌレさんをよろしくお願いします」
そう言った雲平は、ホイップをレーゼ兵に頼んで病院まで先に連れて行かせる。
ただ運が悪いのは土地勘のない兵士を選んでいて、病院到着まで時間がかかっていた。
シェイクは見舞いの花が欲しいとアチャンメと共にレーゼ兵と花屋に向かい、キャメラルとは病院で合流する手筈にした。
「雲平は?」
「俺は本庁に行きます。シェイクさん達はあんこ達を頼みます。アチャンメ、父さんとバニエさんとパウンドは?」
「父ちゃんとバニエは文句を言いながら言われる係、キレた父ちゃんは怖いのな。パウンドはシェルガイの空気がないし、拘束されてるから大人しくしてるはずだ」
この言葉に雲平は「ふぅん…。父さんはキレたならいいや。俺も本庁に行って少しやってくるから」と言い、セムラに「セムラさん、パウンドを連れ帰ります。カヌレさんをシェルガイまで連れ戻せるようになったら、何を言われてもレーゼまでお願いします」と言って飛んでいってしまった。
・・・
金太郎は本庁で日本政府と戦っていた。
日本人、安倍川金太郎として殺してしまった愛国鬼兵団の構成員についての責任問題について詰問を受けていて、「それじゃああいつら皆死んだり怪我したのは仕方ないと?殺さなきゃ殺されてますよ。甘いこと言うの辞めてくれません?」と言い返している。
バニエは必死になって「あれだけの犯罪者を裁けないのに、日本政府は何故仲間を裁こうとするんですか?」と意見をしている時、真っ青な警官とレーゼ兵がやってきて、雲平が飛んできた。激高していて今すぐパウンドとバニエを返し、犯罪者達を引き渡せと要求してきた。要求を飲まなければ本庁を破壊すると言っていると報告してきた。
金太郎は「俺の息子ってば、バーサーカーだしひでぇなぁ。俺を見捨ててるよ」と言って笑っていた。
警官とレーゼ兵に「ここに連れてきてくれ、アイツはやる。コジナーを破壊する力を手に入れたんだ。アイツが本気になったら、まばたきの間に俺たちは死ぬよ」と言った3分後、現れた雲平は本気でキレていて、「父さん、何やったの?牢獄行き?」と聞く。
「お前、ただいまは?俺は作戦行動で5人ほど殺したから責任問題だと。ミスティラ達はシェルガイ人だから外交問題だとよ」
「くだらない」と言った雲平は、日本政府を睨み付けて「犯人にまず会わせろ。パウンドを解放しろ。断れば命はない。俺は人を超えて半神半人になった。人の法は通用しない」と言った。
確かに感じる底知れない恐ろしさに、政府高官は「罪になるぞ」と言いながら、雲平達を留置所に連れていく。
パウンドは拘束されて牢の中に居た。
これだけでキレた雲平は、パウンドをひと睨みで解放すると「パウンド、シェルガイとパウンドを繋げたから力が出るよ。その檻を破壊して出てきて」と言うと、パウンドは「感謝するよ」と言って鉄柵をへし曲げて外に出てきてしまう。
そのまま群馬から連行した菅野篤志達の前に出ると、菅野篤志は愚かにも雲平を見て「おお、噂の英雄さんだな。へへ、彼女の初めては貰ってやったぜ?痛がってたがまあ悪くなかった。泣いて文句を言う度に殴ったら、歯が折れて間抜けな顔になってたろ?あ?まだ見てないのか?人のお古は嫌か?酷え彼氏だなぁ。悪くなかったから抱いてやれって、慰めてやれよ?」と言った。
雲平は「グェンドゥ…風の刃を放つ」と言って、ひと睨みで牢屋をバラバラにすると、中に入って思い切り菅野篤志の顔を殴りつけた。
顔が陥没した菅野篤志は一撃で気絶していたが、他の構成員達が「暴力反対」だの「日本人としての権利を主張する」、「俺達は犯罪者である前に日本国民だ」と声を上げた。
「父さん?コイツら何言ってんの?」
「あ?僕たち私たちは日本国民様で、日本国は一般市民より犯罪者と外国人を優遇するから、手厚く扱えだとよ」
雲平だけでなく金太郎もキレていて、パウンドはバニエから事態を聞いて激高して菅野篤志を殴ろうとしていた。
雲平はパウンドを止めて「パウンド、手厚く扱ってやろう」と言う。
「何!?」と言って雲平を睨むパウンドに、「日本じゃやれないって言うならレーゼに行こう」と言うと、スェイリィスピアをウィップに変えて全員を縛り上げると「まだ始まってもいないのに、これくらいで死なないでくださいね」と言って、雷を流し続けながら高官や警備員の制止を無視して、バニエも含めた全員で飛鳥山公園まで飛んでいた。




