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彼と彼女のデザイア。  作者: さんまぐ
地球/シェルガイ-最悪。

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127/155

第127話 それだけは認めぬ!

アグリは一瞬躊躇をしたが、「大丈夫です!」と言ってアチャンメとキャメラルと手を繋ぎ、「お姉さんが居てくれるもん」と言った。



スェイリィは少し間をおいて、「まずは原因から話そう。コジナーのゲートが閉じないのは、株分けされた半魔半人があるものと混ざり合い、ゲートと繋がっているからだ」と話し始めた。


「あるもの?」

「ああ、ひとつはキョジュの力の源、ニョトーの依代だ。キョジュは約300年前にコジナーに降り立ったニョトーがもたらした魔物達を使い、ニョトーの依代を作り出した。ニョトーはそもそも暴れたいだけの神で、コジナーに魔物を与えたら、この世界から立ち去るつもりでいた。だが依代によってこの世界と繋がりが出来ている」


「それを壊せばいいの?」

「無理だ。300年の時間で神格を得た依代は、最早神に等しい。人の身での破壊など不可能だ」

「やってみなきゃわからなくない?」


雲平のコメントに、ミスティラは「お前が言うと怖いんだ」と言い、アチャンメ達もウンウンと頷く。


「まあ聞け。今だから話せるが、300年前のサモナブレイドを用いた隔離作戦は間違いではなかった。巫女としてニョトーに己を捧げたキョジュと、不死者以外は誰も生き残らなかった。キョジュは心は通じ合えぬが、会話の通じる魔物達を育てる事で気を紛らわしたが、すぐに限界を迎え、心の隙間をニョトーの依代に捧げた。純潔を捧げて埋まることのない寂しさを、肉欲に変え依代にぶつけた結果、キョジュは人を捨て半魔半人へと変わった」


突然の猥談にアグリ達が赤くなる中、雲平は「それ、話す必要ある?」と聞く。


「ある。それで手に入れた力は強大だ。その力で依代と株分けをした半魔半人を融合させて、キョジュは夫として半魔半人を迎えた」

「あの半魔半人はニョトーの力を持ってるから俺の力じゃゲートは閉じない?」

「いや、あの剣撃でゲートは閉じた。だがすぐに開いたんだ」


「どう言うこと?じゃあやり続けたら閉じたの?」

「まあ無理だな」


「何それ?」

「話を少し変える。キョジュはあの半魔半人の子を成している。そしてそれはもう産まれている」


この言葉に雲平が「ミスティラは叔母さんになったんだ」と言うと、ミスティラは「嬉しくない」と返す。

後ろで金太郎が「お祝いあげるか?」と冗談を言うと、スェイリィは「不死者は即時に破産だな」と答えた。


「スェイリィ?」

「あの半魔半人は魔物を取り込む度に、キョジュに言われて人間や魔物と狂ったようにまぐわった。その全てが人喰い鬼やウインドホース、ファイヤーハミング、キラーオクトパスの因子を持った子を成した。魔物の繁殖力はとんでもない。キョジュは産まれたかなりの数の子供を生贄にゲートを維持している。安倍川雲平が殺したのは、その子供の数体で、子供達は半魔半人がニョトーの力によって増えたキラーオクトパスの触手を用いた性器によって四六時中魔物のメスどもとまぐわい。妊娠して子供を産み続けている。その子供を全て殺さないとゲートは閉じないが、生産速度に安倍川雲平の攻撃力は追いつかない」


「ミスティラ叔母さん、妹さんは子沢山ですって」

「私の甥や姪ではない!真面目に話を聞け!」


このやり取りにスェイリィが「まあキョジュの子供とすればまだ1人だな。キョジュが子を産みたい為の期間が4ヶ月だった」と改めて4ヶ月の理由を話した。


「…なら攻め込んでも良かったの?」

「お腹の大きい妊婦を殺せるのならな。流石の安倍川雲平でも、腹を庇う妊婦への攻撃は無理だろう?」


雲平は「じゃあ、コジナーに攻め込むとニョトーの依代を取り込んだ半魔半人が居て、今も延々とメス魔物に子供を産ませているの?…教育上よろしくなくてアグリ達は連れて行きたくないなぁ」と言うと、スェイリィは「だろ?子供達への教育は最悪だな。魔物の子供達を皆殺しにしないとゲートは閉じない」と言う。


「そして、ニョトーとの繋がりを奪い取ってしまわないと、キョジュはこれからも子供の命を使い半魔半人とゲートを繋ぎ続ける。だが安倍川雲平でも今の状態ではニョトーの依代を倒せない」

「じゃあどうするの?」

「そこで私の言った犠牲の話だ」

「話して」


「安倍川雲平、人を辞めないか?」

「は?何それ?」

「人の身では行けない上層界に赴いて、新たに神に届く武器を手に入れてシェルガイに戻り、コジナーへと向かいニョトーの依代を破壊して、ニョトーをシェルガイから外せば、キョジュも半魔半人も力を失う。そうなれば子沢山であろうがゲートは閉じる。ゲートが閉じれば、後はコジナーに放たれて新たな生態系が増えた、今までと変わらない魔物達が闊歩するシェルガイになる」


「人を止めるとどうなるの?」

「我々のように不死に近い存在になる」


この瞬間、ミスティラが「ならぬ!!」と怒鳴った。

雲平は驚いた顔で「ミスティラ…」と呟きながら怒った顔を見ていた。


「それだけは認めぬ!孤高よ!その提案は受け入れん!雲平!お前は不死を軽くみている!地獄だ!世界の為とはいえ、そんな事は受け入れるべきではない!!お前は耐えられるか?ここの者達は遠からず全て死ぬ!それを見送る!セムラを見送れるか?アグリを見送れるか?シェイクは?アチャンメは?キャメラルはどうだ?」


雲平はミスティラの言葉を無視して「…スェイリィ、話を続けて」と言う。

スェイリィが口を開く前に、ミスティラが「雲平!!お前がそんな犠牲になる必要はない!人類を見捨てる!大いに結構!かのこ殿もシェルガイに馴染んでおられる!セムラやシェイクには賢者として進言する!苦など感じさせない!だから割り切れ!シェルガイに来て日本のゲートを閉じろ!」と言って雲平の胸倉を掴む。


雲平は「ミスティラは怖いなぁ。聞くだけ…今日は決めない。ね?」と言って、もう一度スェイリィを見て「俺はそれをしたらどうなる?」と聞いた。


「正確なところは不明だ。その後、どのような力に目覚めるのかはお前次第だ。神格を得て、我ら同様にこの世界の神として力を奮う場合もあれば、我ら以上、かつてサモナブレイドを授けた神やニョトーのように高次の存在として、別世界へと旅立つ場合もある。もしくは鳴かず飛ばずで単純に死ねない人間になる場合もある」


その言葉に皆が困る中、雲平だけはニコニコと「ありがとう」とスェイリィに言って、「さあセムラさん帰りましょう」と言って帰宅してしまった。

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