第124話 お兄ちゃん?それは違くない?
地球とシェルガイの仲は悪化した。
致し方ない事だが悪事を働き殺される。
中には自分の子供が悪事に手を染めるなんてと、現実を見ずに冤罪で殺されたと言い出す人もいる。
これにより仲は悪化する。
根も葉もない噂で、シェルガイ人は地球を支配したがっているなんてものも出てきた。
地球はそれだけではない。
日本の中で、群馬の勇士を名乗る「群馬団」が結成され、すぐに「愛国鬼兵団」に名前を変えて、虐げられる日本人を強くする。外国人ばかり優遇されるのはおかしい。政府の弱腰外交を改めさせると言って、暴力革命も仕方ない事と言い武力に訴え始めた。
リーダーは小岩茂という男で、自身はそこそこ強い火魔法の使い手で、志や日本を憂う心は本物だったが、血の気の多いシェルガイ適性の高い連中達は、最低限の指示に従うのみで、後は「日本の為」と言って無法な活動をしていた。
雲平達はそちらの対処もしなければならなくなったが、問題はシェルガイ人を使うと先の事件によって心象が悪く、非協力的な扱いを受けて、伊勢崎市にシェルガイの空気が漂う原因の究明にならない。
仕方なく同時並行で在任期間が長く信頼されていて、上官から推薦を受けた自衛官を10人程シェルガイで鍛えて特殊部隊を作る事になる。
ここで雲平は頭を抱えた。
あんこが立候補をしてきた。
確かに、貴重な雷魔法に火魔法とヒールをもって居るあんこは、日本政府からもスカウトしたいと言われてしまうが、雲平は首を縦に振りたくない。
人を殺す事をあんこにはさせたくなかった。
だがあんこは、「皆がやってるのに、私にもやれることがあるよ!」と言って聞かない。
アチャンメとキャメラルが「アンコの奴、この前王子にまとわりついてる虫どもにいびられたんだよ」、「地球人ってだけで悪く言われるし、王子の為に何もしないの?って言われてたんだ」と教えてくれる。
忙しくてそんな所まで気が回らなかった雲平は詳しく聞くと、見かけたアチャンメとキャメラルは「てんめぇ、アァン!?このアチャンメ様とキャメラル様の心のネーチャンに何かましてくれてんだ?」、「ブスが、二度と見れねえ顔になるまで殴るぞゴルァ!!」と追い払ってからは、気にかけていると嫌がらせは減ったらしいが、あんこはその日から訓練に力を入れていて、明らかに貴族の娘達の言葉を気にしていた。
雲平は日本に帰ってきてアグリに聞くと、「多少はあるけど、私はジヤー人だし、ビャルゴゥリングを着けてるから言われないよ」と言われて、恐ろしい顔になった雲平は「ビャルゴゥ、次からは最優先で俺に教えて」と言った後で、「最悪って俺のアグリが虐められることか?」と言っていて、アグリからは「お兄ちゃん?それは違くない?」と笑われていた。
特殊部隊はシェルガイ適性で選べなかったので玉石混交で弱い。
頭を抱える雲平に、「しゃーねーよクモヒラ。私とキャメラルも参加してやる」、「だな、ただ地球だと相手が殺しにきても、殺せねーのが問題だ」とアチャンメとキャメラルが言ってくれる。
そう言ったが手が足りない事、アチャンメとキャメラルに頼りきれない日本政府は、やはりと言ってあんこをスカウトしてしまった。
あんこの身を案じるシェイクとホイップに、「頑張ります!少しでもシェイクさんが楽できるようにしてきますね!火魔法はシェイクさんが教えてくれたから大丈夫です」、「ホイップくん、心配してくれるの?嬉しいなぁ。お姉さん頑張るね!」と言っていた。
そんな特殊部隊の初戦は完勝だった。
「ゴルァ!魔法が使えても無駄だっつーの!」
「カス!スッこんでろ!」
アチャンメとキャメラルが指示出しをしつつ攻め込んで、末端の組織をひとつ壊滅させる。
相手は魔法戦に不慣れで同士討ちをしたり、折角放った火魔法を仲間の水魔法が消してしまったりしていた。
これがきっかけで日本政府と愛国鬼兵団の衝突が始まってしまった。




