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彼と彼女のデザイア。  作者: さんまぐ
シェルガイ-レーゼ城での決戦。

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112/155

第112話 姫様!お帰り!

城は一見すると普段通りに見える。

半魔半人の兵士達は城の外周には居たが、中は普通の人間達だった。


皆セムラを見て無事でよかったと言い、クラフティの豹変に驚きを隠せずに居た。

シュートレンの遺体はあのまま墓所に安置をされることとなり、クラフティは半月前くらいから、オシコの手によって部屋に軟禁されていて、部屋の外から会話は可能だが、備蓄があるからとロクな食事も摂らずに、部屋から出る事も扉を開ける事もなかった。


「扉にはゲートの光がまとわりついていて、そもそも我々には開けられません」

その言葉にセムラは「では私はお兄様の元に向かいます」と言ったが、2つの伝言を頼まれていた使用人たちは、それをそのままセムラに伝えた。


「もし仮に、セムラが地球人や仲間達と共に城に戻って来た時は、十分な休息を取ってから私の部屋を訪ねるように伝えてくれ」


これはクラフティの言葉だった。


そしてもう一つはオシコの言葉で、「お姫様が戻ったら中庭のゲートに行くといいわ。行かないと後悔するから」と言うものだった。


セムラは兵士や使用人達に裏庭のゲートについて聞いたが、全員が口を揃えてオシコの半魔半人兵が守っていて、その先に何があるかわからないと言う。

窓に関しても観れないように半魔半人が邪魔をしていた。


「セムラさん?」

「お兄様の所に行く前にゲートに寄りましょう」


セムラは使用人達に普段通りを心がけさせつつも、何が起きてもおかしくないから、いざとなったら城やレーゼを捨てて逃げるように言い、兵士達には半魔半人と戦闘になっても、街の人間を可能な限り保護するように言った。



雲平はこの時になって、兵士たちの中にあの日ブランモン隊から離脱した面々がいない事に気付いた。

だがセムラに言うことは憚れてしまい黙ることを選ぶ。


裏庭の半魔半人達はセムラと雲平に気付いたが、ニヤニヤ笑うだけで襲いかかってこない。


「雲平さん…」

「大丈夫です。俺ならあの程度は一撃です」


雲平は目に見えた半魔半人以外の敵もアースソナーを使って射程に入れていて、仮におかしな真似を行なわれてもすぐに虐殺が可能だった。


・・・



そんな雲平でさえ、冷静ではいられないものがゲート周辺にはあった。


「おお!姫様と雲平殿ではありませんか!お戻りになられたのですね!さあ!我々と共に殿下をお助けください!」


ブランモンの声に続いてブランモン隊の面々、中にはあの日離脱をした兵士まで居て、「ゲートは死守してましたよ!」、「姫様!お帰り!」、「隊長と待ってたよ」と言っているが、手はセムラ達に向けて剣を構え、顔や身体なんかは所々が腐敗していた。


困惑する雲平の耳に、シュザークの「キョジュめ、そこまでやるか?」という声が聞こえてくる。


「シュザーク!?」

「ニョトーの…、コジナーが使う魔物達の魔法。死者を使役する魔法だ。使う魔法量と得られる効果や結果のバランスが最悪で、そもそも使う気にすらならないはずなのに…。キョジュめ、余程腹に据えかねている。それに本人達は偽の記憶を与えられているし、今も夢を見させられているのだろう」


シュザークウイングから聞こえた声に、セムラは顔面蒼白で「シュザーク様!ブランモン達は…」と聞くと、「死んでいる。死して弔われる事なく、動く死体として居るだけだ」と答えた。


セムラは耐えきれずに顔を覆って泣く。

それは雲平も同じで、自身の軽はずみな行動がブランモン隊を死なせてしまい、今も遺体を弄ばれている。


「シュザーク、どうするべき?助けられるの?」

「これはキョジュを倒してなんとかなる魔法ではない。キョジュを倒しても魔法は残り、この屍を動かし続ける。朽ち果てた事も気付かずに夢を見たままだ。助けるか…。お前たち流なら死者として扱い弔う事だけだ」


「セムラさん」

「お願いします雲平さん。これではブランモン達があんまりです」


顔を覆って泣くセムラに、「泣いてくださるなんて、姫様に再会を喜ばれて、このブランモンは三国一の幸せ者ですな」とブランモンは笑い、部下達が「隊長、もう死んでもいいなんて言わないでくださいよ」、「そうですよ。俺達も戻ったブランモン隊で姫様を護衛して、クラフティ殿下をお救いするんですからね」と言って盛り上がるが、剣や槍を構えるブランモン隊が腐臭を漂わせながらジリジリと寄って来ている。


雲平が剣を抜くと、ブランモン達は口では「乱心されたか!?雲平殿!」、「何やってんだよ!」、「俺達は仲間だろ!」と言うが襲いかかってくる。


「くっ、あのオシコの魔法か!?皆の者!雲平殿は姫様の大切なお方、傷を付けずに目を覚まさせるぞ!」

「了解です!」

「やりにくいけど俺達なら」

「姫様!安心してください!」


ブランモン達はこれでもかと、雲平とセムラを気遣う言葉を言いながら襲いかかってくる。


1人切り飛ばされた兵士は腐敗に負けて起き上がれないが、本人は夢を見ていて「俺はまだ大丈夫です!足止めします!隊長!何がなんでも目を覚まさせますよ!姫様を悲しませちゃダメです!」と話していた。

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