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彼と彼女のデザイア。  作者: さんまぐ
シェルガイ-レーゼ城での決戦。

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111/155

第111話 私を1人にしないでくださいね。

雲平が起きると夕方になっていた。

「昼夜逆転だ」とボヤきながら状況を確認すると、パウンドとミスティラが一時期暮らしていた部屋だった。

隣のベッドではセムラが眠っていた。


「あら、起きた?」と言って来たのはパウンドの母で、「姫様はさっき寝たところだから、寝かせてあげなさい。君が起きるのを待っていたけど、疲れが見えたから寝かしたんだよ。聞いたけど神獣武器の担い手なんだってね。シュザーク様のご加護があるんだろ?あの飛んでる剣が怖いからしまっておくれよ」と言われて、初めてシュザークウイングが自動警戒を続けていた事に気づいて雲平はシュザークにお礼を言う。


「話は姫様から聞いたよ。大変だね。後はミスティラ様とパウンドをありがとね。パウンドって運命のハニーが見つかったとか聞いたけど何それ?」


雲平はリビングに顔を出すと先程のカステラともう1人のカステラが兄と呼んでいた男と父親が槍を構えて雲平達を守ってくれていた。


パウンドより面長なのが次男のシフォン。

シフォンを見ていると丸顔に見えるのが、三男になるカステラだった。


セムラから聞いたとは言え、やはりパウンドとミスティラの事が気になる4人は出会ってからの数日間を説明すると、皆の為に役立っていることや、スェイリィに選ばれた事を喜び、それ以上にハニーと呼ばれる存在に出会えた事に喜んでいた。


ここでスェイリィが「下世話な話だが、雲平は猥談は平気か?」と聞いて来た。


「スェイリィ?まあ多少なら」

「先日アイツらは結ばれた。担い手の家族に孫はもうすぐだろうと伝えてやるといい」


雲平はそのままを伝えると家族達は喜んで、次男のシフォンが「じゃあパウンドはもういいな」と言う。


不思議そうに聞き返す雲平に、「もういいって言うのはミスティラ様のお世話はパウンドに任せて、俺も自由に生きようと思ってさ」と笑う。


そして一族がかつて救ってくれたミスティラに尽くしている話を教えてくれた。


「まあ何があるかわからないから、近くには住みなさいよね?あんた達はパウンドの代わりにミスティラ様をお守りする日が来るかもしれないんだからね」


パウンドの母はそう言いながら手際よく料理を作ると、「さ、食べてよ。姫様から聞いたよ。レーゼを救いに行くんだろ?弁当も用意するからさ」と言ってくれて、雲平が食事を貰っているとセムラが起きて来た。


その顔はまだ疲れていてうなされたのだろうか涙の跡が見えた。


「セムラさん、食べたら行きますか?それとも朝までお邪魔をしてから行きますか?」

「食べたら行きたいです」


そう言ったのだが、セムラはパウンドの母が作った食事を数口食べたところで眠ってしまった。


「セムラさん?」

「寝かしてやりな。きっとキチンと眠れてないんだよ。薬を盛っておいたから朝まで眠ってる。今晩くらいならどんな敵からも守ってやれるよ。ウチの旦那はミスティラ様が認めた槍の使い手。若さはないけどパウンドより強いよ」と言って笑った。


感謝を口にした雲平は「シュザーク、ビャルゴゥ、スェイリィ、グェンドゥ?俺が1人でクラフティを倒してくるのはどう?サモナブレイドを持って帰って来たらなんとかなる?」と聞くと、四獣からはサモナブレイドはクラフティを倒したその場で発動させるからセムラの帯同は必須だと言われた事と、分断されて何かあった時に時戻しの風も使えなくなる事から却下されて、雲平はセムラを連れてミスティラのベッドに連れていくと睡眠薬で眠っているにも関わらず雲平の名を呼んで抱きついて来たので久しぶりに2人で眠る事にした。


明け方、目を覚ましたセムラは雲平と眠っている事が理解できずに寝ぼけて夢を疑う。


そして夢ならと呟いてから「雲平さん。私を1人にしないでくださいね。お慕いしています」と言って、頬に唇を当ててから「神様、お父様、お母様、お兄様、夢ですから、はしたなくてもお許しください」と言って雲平を抱きしめると再び眠りについた。



・・・



数時間後、パウンドの母に起こされたセムラは青くなる。

自分がこの土壇場で眠りについていた事で、どれだけの人が傷付いたかと思い狼狽えるが、ビャルゴゥから「あの疲弊具合でサモナブレイドは使えなかったから、この休息は間違いではない」と言われてようやく落ち着いた。


パウンドの母が朝食と弁当を用意していて、それを食べた雲平はセムラを抱きかかえると「本気で飛んでクラフティの元を目指します」と言い、セムラは「お願いします」と言った。


「勝ったら帰ってくるかい?」

「なるべく顔は出します。その後はジヤーに行ってミスティラ達と合流します」

「了解。街の連中は守るから安心してくれ」


雲平達は礼を言うと一気に飛び上がる。


国境からレーゼの城までは猪苗代湖の時とは比較にならない距離で、雲平の力でも到着したのは夕暮れ時になっていて「パウンド家でご飯とお弁当を貰えて良かったです」と言うとセムラも「本当でしたね」と言った。


「雲平さん、お疲れは?」

「多少ありますが大丈夫ですよ」


雲平は一気に城を目指したかったが、シュザークから「弓兵の相手をしてはクラフティと対峙した時は疲労困憊になるぞ?」と言われて諦めて歩く事にする。


レーゼの周囲は魔物達に囲まれていて酷いものだった。

そして街の中も独特な悪臭がしていた。


街の人間は皆暗い顔で俯いて生活をしていた。


皆雲平達に目もくれずに生きていて、生き生きとしているのはビャルゴゥに聞くと結界を抜けた半魔半人の兵士達ばかりだった。


「セムラ姫に言う必要はない。キョジュのやつが復讐でやっている。攫った人間は一部を兵士に、残りをゲート設置の生贄に使った」


「どう言う事?」

「お前の世界に移動したゲートはあの半魔半人の知識とシェルガイ人の生贄で行われていた事だ。生贄の効果が消えたら元の雪と氷の土地に戻る」


「それが復讐?」

「半魔半人は人に戻れない。お前が勝ってもこの地に居場所はない。苦しむ国民をセムラ姫に見せるのがキョジュの復讐だ」


雲平は苛立ちながら「クラフティは何やってんの?」と聞いたがビャルゴゥは答えをはぐらかしつつ、「勝てばわかる」とだけ言った。


「それよりも平気か?」

「何が?」


「かなり消耗している。本音は休みたいだろう?」

「今は俺よりセムラさんやレーゼだよ」


「…そうか。まあお前ならクラフティに勝てるだろうな」

「そんなに鍛えた覚えはないよ。アイツは強いからギリギリだ。ビャルゴゥでも励ますんだね。ありがとう」


雲平はセムラを抱き抱えて城へと向かった。

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