第110話 世間話くらいいいだろ?
村人達は仲間の意識があった老婆と息子夫婦が身に起きた事に驚いているが、惨劇を知っているからすぐに行動してくれて、周りから巻き込まれる人たちを逃す。
「居た…本物だ」
「オシコ様はお前達のやる事なんてお見通しなんだよ」
「答えなさい!どの隊でなぜこんな事をするのです!」
セムラの怒号に兵士達はゲラゲラと笑い、バカにするように、どの兵でもない事、クラフティより偉くなったオシコが罪人だけで兵団を作り、その全てを半魔半人化させてレーゼの国境付近の村々を襲わせる事にしたという話だった。
「では!?今も他の村が!?」
「ゲラゲラ!ウケるぜ!姫さんが青くなってやがる!」
青くなるセムラを見て笑った半魔半人はそこまでだった。一気に踏み込んだ雲平は斬り殺すと、そのまま全ての半魔半人にサンダーデストラクションを放って一撃の元に葬り去るとセムラに手を差し伸べる。
「セムラさん!全ての国境付近の村に行きましょう!来てください!」
「はい!」
セムラは雲平に抱き付くと、老婆に「ごめんなさい。また兵が来るかも知れません。皆は一度ジヤーに避難してください。シェイク王子は立派な方です。私の名を告げて保護を頼んでください」と言うと、返事を聞かずに雲平はシュザークウイングの力で飛ぶ。
「セムラさん!俺には土地勘が無いから指示を出してください!」
「まずは南端の村に、後は北上するだけです!」
雲平はシュザークの力を借りて超加速をすると半魔半人を探す。
雲平は未来視の出来るビャルゴゥに、「ビャルゴゥ!見えていたら言えよ!」と言うと「言えばその先は最悪になるぞ?」と返ってくる。
苛立ちながら「世間話くらいいいだろ?」と言うと、「なるほど」と納得をしたビャルゴゥは「キョジュの送り込んだ半魔半人は後80体だ」と言った。
「村々に居るんだな?」
「まだレーゼから距離のあるコジナー沿いの村までは到達していない」
「わかった。敵を察知する魔法は?」
「生み出せばいい。安倍川雲平、お前なら創作魔法…魔法が創れるだろう?」
魔法を作れと言われても想像もつかない雲平は、「作れないよ」と言うと、ビャルゴゥが「あのアイスウォールはどう説明する?」と聞いてくる。
「あれはオシコがレーゼでクラフティの剣を抑えていたから真似たんだよ」
「…あれはコジナーの魔物が使う魔法だ。魔法のベースが違いすぎる。出来た事が異常なのだ」
「成程、まあいいや。どうすればいい?」
「グェンドゥとスェイリィを頼れ」
雲平は声をかけるとグェンドゥは「おかえり〜」と言い、スェイリィが「昨日は言っていなかったな、よく戻った」と言った後で、「雲平なら可能だよ」、「お前ならやれる」と続けて、グェンドゥはウインド系の魔法を使って敵の位置を把握する方法と、スェイリィはアース系の魔法で敵位置を把握する方法を提案する。
「一応言うと火災現場ならシュザークで、水辺はビャルゴゥだからね」
「さあ、考え出した魔法を教えてくれ」
「ウインドサーチとアースソナーにする。ありがとう!シュザーク!加速だよ加速!」
シュザークは自分の速度をモノにしている雲平の異常さに引きながら、「…グェンドゥの力も借りろ」と言うと、雲平は「成程」と言ってから「グェンドゥ…よろしくね」と声をかける。
グェンドゥは「無理するとセムラ姫が溺れるからね?」と心配をするが、セムラは「わ…私…は…大丈……夫です」と言う。
そもそもシュザークの保護は雲平にしかないのでセムラの限界は近い。
猪苗代湖の時は中継地点のようにゲートを通過する際に一瞬の間が生まれ、アグリがナビをする為に所々で減速をしていたが、真っ直ぐ飛べば良いだけのシェルガイではそれがない。
苦しそうなセムラを見て「んー…」と言った雲平は、「シュザーク、グェンドゥ、さらに加速、代わりにウインドウォール」と言ってセムラと自身の周りに風の壁を生み出してしまう。
「セムラさん平気ですか?」
「はい。ありがとうございます。村が見えましたよ雲平さん!」
雲平は早速アースソナーとウインドサーチを使って敵位置の把握を済ませると上空にいながらアースランスで敵兵を皆殺しにする。
そして「降りる時間が勿体無いから次」と言って反転して加速をする。
時間にして1時間半くらいだが、あっという間に65人の半魔半人を倒した雲平は最後の街に降りると、街では半魔半人の兵士達を蹴散らす連中が居た。
「あれ?善戦してる」
「ここは大きな街ですから、屈強な兵士や傭兵が居るのでしょう」
とは言え3人で散り散りに行動をする半魔半人から街を守る事は難しいので、雲平はサンダーデストラクションで半魔半人だけを狙い撃つと上空の雲平に気付いた男が大きく手を振る。
「ビャルゴゥ、これで終わりだよね?」
「ああ、終わったな」
「ごめんセムラさん、疲れました。降ります」
雲平は降りるとシュザークに、「ありがとう。シュザークウイングは飛ばして警戒して、敵意が迫ったら迎撃して」と指示を出す。
そこに先ほどの男が「助かったよ〜」とやってくる。
「兄さんと父さんと3人だけだと散られると辛くてさ」
そう言って笑いかけた顔を見て「パウンド?」と声をかけてしまう雲平。
「あれ?兄さんの知り合い?俺はカステラ」
パウンドの弟と名乗るカステラはパウンドによく似た笑顔で雲平とセムラと握手をする。
シュザークウイングが反応しない事で、敵ではないことがわかって雲平は「助かった…少し無理しすぎたから休ませてください」と言うと倒れ込んだ。




