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彼と彼女のデザイア。  作者: さんまぐ
地球-襲われた地球。

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103/155

第103話 失敗したけどこれで終わり?

夕方に戻った金太郎は明らかに怒っていた。

金太郎も雲平もお互いに軽口もなく、雲平に「よくやった」と言った金太郎は、アチャンメとキャメラルに「人の多いところが狙われていたから、守ってもらえて助かった。流石はブラウニー団長の率いる荒熊騎士団員だ」と褒め、ホイップには「聞きました。初の実戦であの戦果は偉大です。天国のビスコッティ様もさぞお喜びでしょう。そして安倍川金太郎としても、街と母と知り合いを守ってくれてありがとうございます」と頭を下げた。


ホイップは身震いと共に「アゴール!僕こそ過分な言葉だ。僕も皆の仲間として力を奮う事ができて嬉しい」と返した。


「ほら、折角のゴハンが不味くなるから先に食べますよ」


かのこはそう言ったが、金太郎は「ダメだ母さん。先に話をさせてくれ」と言って、ことの顛末を話し始めた。



それは雲平をキレさせるのには十分すぎる内容だった。



オシコはシェルガイ人だが、株分けした国府台帝王の力を使い、文字や文法等の日本語をマスターしていた。

国府台帝王の力で日本の座標を理解したオシコは、生贄を使う事でゲートを日本に移動させていた。

更にオシコは攫ったシェルガイ人やゴブリンなんかを殺して、その背中に自分がレーゼでもジヤーでもない第3の国コジナーの人間である事を書き記して、ゲートから猪苗代湖に送り込む。


初めは気付かれなくても数回続き、魔物ではない人間…死んでいるシェルガイ人の背中に日本語が書かれていれば人の目に止まる。

日本政府とグラニューは返事を書いて猪苗代湖に置く事にした。


返事には次の返事が来る。

日本政府は何度紙を用意して紙を使えと頼んでも、紙ではなく魔物や人の背中に書き続けられた。それは返事を送るまで止まらない。


次のメッセージは「雷使いの地球人。レーゼの姫を帯同し、ジヤーのゲートから来た子供の情報を教えろ。教えなければ魔物を更に送り込む」と書かれていた。


それを証明するように猪苗代湖に増やされる魔物達。

政府とグラニューは、独断で雲平の名前と東京に住む事を伝えた。

地球や日本といった回答ではシェルガイ人とはいえバレるかもしれない。

ならば東京ならと土地勘の無さを推察しての東京発言は効果的だと思ったが、国府台帝王の知識が邪魔をした。


「私には国府台帝王の知識がある。東京は大きな街の名前。あの坊やの住む町を詳しく言いなさい」


逃げようの無かったグラニューはこの下町の名前を告げていた。


「やられた。それで?」

「オシコの野郎の要求はあまり無かった。初めの一つさえ成功すればその後は失敗しても不問に処すから、雲平…お前を日本に連れ戻す事を最低条件にした。そして失敗しても構わないのはこの町を犠牲にする事だ。猪苗代湖のゲートはセムラ姫とお前がいれば潰される事は想定内だったそうだ」


雲平が「ここを?」と聞くと、アグリが「なんで?」と続ける。その姿は兄妹にしか見えず金太郎は怒りながらも微笑ましい気持ちで、「ビャルゴゥ達が言った通り、あの半魔半人を殺された復讐なんだろうな」と言った。


「それで、失敗したけどこれで終わり?」

「いや、あと2つある。お前を日本に縛り付ける事と、約4ヶ月はジヤーもレーゼもコジナーに攻め込まない事だとよ」


「それが守られないと?」

「全力でジヤーと日本を狙い撃ちするってよ」


雲平が不服そうに「ふーん」と言った所で、バニエが「すまなかった。まさかグラニューがそんな事をしているとは思わなかったのだ」と謝る。


「グラニューさんは?」

「一度家に帰した。この話があるのに、ここに連れてくる訳にもいかない」


「帰す?レーゼにですか?」

「いや、彼は日本暮らしが長いから、日本人の妻とハーフの子がいる。言い訳に聞こえるだろうが、グラニューはオシコが無差別攻撃を行えば妻子に被害が出ると思い、日本政府と要求に沿ったそうだ」


雲平は何となくだがグラニューのことについて合点がいった。


「バニエさん、日本政府は俺の出国を認めないんですよね?」

「ああ、アゴールが談判をしても、それだけは認めないと言われた」


「アグリ達は?」

「それはオシコの要求になかったから問題はない」


「成程」と言った雲平はニヤリと笑う。

それはアチャンメ達には恐ろしいものだった。


「クモヒラ?」

「何考えたんだ?」

「雲平さん?」

「お兄ちゃん?」


ここでバニエが「言う事を聞かないのか?」と聞くと、怖い顔の雲平は「一度でも要求を飲んだら調子に乗られますよ」と言い、「ビャルゴゥ、シュザーク、今の話は聞こえたよね?スェイリィとグェンドゥ経由で今の話をミスティラ達にして。日本からだから平気だけど、時差とか気にせず叩き起こして」と続けた。

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