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『腐』は腐女子の『腐』!  作者: ねこ
腐士は受け君の夢を見るか
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腐属性魔法とは


「ところでママ。どうして腐属性魔法ってそんなに嫌われてるの?」


 魔法が発動してやれやれと胸をなで下ろしたついでに、気になっていたことを聞いてみた。目の前には錆びさせたナイフが物体Xとして鎮座している。あ、ママが片付けた。


 この世界、冷蔵庫みたいなのがある。冷凍庫も高いらしいけど、ある。つまり、食料の腐敗に関して、ものすごく恐ろしいものっていう認識にはなりづらいんじゃないかと思うんだよ。だって対策できるし。あと、私が生まれてから十年間で、飢饉とかが起こったってニュースは聞いたことがない。この王都にも治安の悪い場所はあるけど、いわゆるスラム街ってほどひどいって噂は聞いたこともないし。ってことは、食料もそれなりに足りているのではって思うんだよね。


「それは魔王のせいね。あなたも神殿で習ったでしょ。魔王のせいでこの世界は分断されたって」

「えぇと、邪悪な神が世界を分けた、って言ってた」

「そう。死にゆく魔王が最後の祈りを邪神に捧げて、それに応えた邪神のせいで、この世界は三つに分かれたのよ。実際に分けたのは女神様だけどね」


 あっ、駄目よリタ。死にゆく受け君魔王と、それに血涙を流す攻め君邪神なんて想像しちゃ駄目! 今は集中しなきゃ! どっちが長髪とか考えたらあかん!


「そのせいで今の世界は、元の世界の三分の一になっているのよ。で、魔王は死属性を司っていたの。万物を死に絶えさせるような力を持っていたわけなんだけど、その部下の一人に、腐属性の魔法を使う魔物がいてね」


「ふぅん」


「こちらは万物を腐らせる力を持っていたわけよ。傷を腐らせて死に至らしめたり、糧食を腐らせて飢え死にさせたり……とにかく、汚い殺し方をしてくる魔物で、魔王は恐れられていたけれど、部下の方は憎まれていたのよ」


 一瞬、『ククク……やつは四天王最弱……』とかいう台詞を連想した。でも最弱じゃないかもしれん。


「戦闘能力はたいしたことなかったから、余計にね。憎悪と軽蔑の対象になったみたいね」

 なーんだ、やっぱり最弱四天王か。ククク……その思い込みを私が正してやろうではないか……。


「だからダンジョンには魔物が出るのよ」

「うん? なんか話題、飛んだ?」

 聞き逃したんだろうか?


「あら? まだ教わってないのかしら。そうね。魔法学園でもダンジョン見学が許されるのは三年生からとか、ブレンダンが言ってたわね。知識もそれまでは共有されないようにしてるのかしら? 私が行っていた神殿学校ではそんなことなかったんだけど」


 独り言のように言って、それからママが説明してくれた。


「ダンジョンは邪神の力でできたらしいのよ。そこで出てくる魔物は邪神の僕で、侵入者を排除しようとしているの。でも邪神の力が及んでいるからでしょうね。分けられた残りの世界と時々交わるのよ」


「そうなんだ」

「私たちには作れない武器や薬なんかが、ダンジョンで手に入るのはそのおかげね」


 なるほど……主作用と副作用の逆なわけか……。鼻水を止めるのが主作用で、眠くなるのが副作用。ダンジョン作って人類絶滅作戦が主作用で、世界が混じって強武器ゲットが副作用って感じ。本来人類にとって喜ばしいのが主作用であるはずなので、それが逆転してるっていう。


「ダンジョンに挑戦する人を、ダンジョンアタッカーって呼ぶんだよね?」

「そうよ。昔ママがパパと一緒に挑戦してたって話はしたわよね?」

「うん。高難易度ダンジョンに潜ってたって言ってた」

「あれでけっこう稼げたのよ。危険なのはほんとうだから、リタにはできればやめてもらいたいんだけど……」

「えぇっ?」


 そんなご無体な!


「……そういう反応になるんだろうなって思ってたわ。ちゃんと学園で色々学んでくるのよ? それだけじゃ足りないだろうから、ママの補習も受けること!」

「はーい」


 勉強と思うとちょっといやだけど、ファンタジーやゲームみたいにダンジョンに挑むためと思うと、ありがたやママ上様、という気持ちしかわき起こらない。どんなだろうなぁダンジョン。三年生っていうと、十三歳になってからってことだよね? 待ち遠しいなぁ。


「私の腐属性魔法も、攻撃手段になるように色々考えなきゃね!」


 わくわくしながらそう言うと、ママが、


「……そうね……やっぱり私の娘よね……」


 と、どことなく遠い目で呟いた。たぶんおそらく褒め言葉! のはず!




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